144 遠隔移動で宝探し?
これで試験は終わった。
あとは結果発表を待って、そして旅行の準備をするだけだ。
「ライバーはどうだった?」
「試験勉強地獄に比べれば楽勝だぜ」
本当だろうか。
まあ疑っても何にもならない。
だから信じる事にしておこう。
少なくとも今は。
「ところでフィン、装備の方は大丈夫か?」
「この前入手した軽銀で天幕やベッド、椅子やテーブルまで全部作り直したんだ。軽くなったし快適性もかなり上がっている筈だよ。
ただこれで軽銀の在庫がほぼなくなっちゃったかな」
そうか。
ならちょうどいい。
「なら取りにいってくるか、もう一度」
「えっ!」
フィンは一瞬そんな声をあげた後、何かに気づいたように頷いた。
「そうか、遠距離移動魔法が使えるようになったんだね。でもあの
フィンはそう言ってはいるが気付いている筈だ。
この台詞はわかっていない他の人に説明させる為、あえて言っているのだろう。
「あの
「なら強い魔物も狩り放題なのか」
甘いなライバー。
「
実は討伐向きの場所は別に探してある。
パス・ラ・カザよりやや南東、遠距離移動魔法で行けるぎりぎりの場所にオークレベルの魔物が多い場所を見つけたのだ。
実は一昨日及び昨日夜、ミリアと行って腕試しをしてきた。
ミリアは昼間ライバーに勉強を教えていた事もあって稼げていない。
それにこの辺の魔物では上がりにくいレベルになっている。
だからその為のフォローだ。
しかしこの狩り場についてはまだ言わなくてもいいだろう。
昼間ならラトレの
「それじゃまずは鉱石をとってきて、それからラトレの
ミリアが本日の予定を決めるのはいつも通り。
◇◇◇
3日ほど午後と夜を使って練習した結果、遠隔移動魔法をほぼ確実に使えるようになった。
一昨日の昼にはヤトゥバやパス・ラ・カザに近い地域等へ実際に移動してみたし、その夜からはミリアを連れて偶然見つけたオークの狩り場へ行ったりもした。
一度北門から街の外に出て、森の中へ入ってから遠距離移動魔法を起動する。
あっさり見覚えのある白い壁の空間へ到着だ。
「すげえ。本当にあの場所だぜ」
「本当だ。何か懐かしいよね。あれから結構経った気がする。そんなに前じゃないのに」
なんて前衛2人が言っている中、フィンはお目当ての
「今回はどんな金属を持って帰るんだ?」
「あの軽い金属がメインだよ。軽くて加工しやすくて便利なんだけれど、その分弱いから使う量が多くなるんだよね」
「使う量が多くなれば重くなるんじゃないかなあ」
「量が多くなれば形を工夫することができるからね。結果として鉄を使うより軽く頑丈にも出来る。モリさんが今使っている特殊弓もそうやって作ったんだよ」
なるほど、形で強くする訳か。
その為には軽くて量が多い方が有利だと。
俺ではわからない知識だ。
「自在袋は大丈夫なの? この後ラトレの
「この前の一斉討伐で儲かったからね。新しい大容量自在袋帳を買ったんだ。
相変わらずフィンの経済感覚は豪快というかぶっ飛んでいる。
彼の場合はいざ困っても換金できるものが大量にあるから問題ないだろうけれども。
「此処から持って行ったらお金になるものって無いの?」
おっと、アンジェからそんな欲丸出しな質問が出た。
「金や白金の
ラトレの
「
「
「なるほど、では記念に貴重なものを少しぐらい探しておくか」
「そうよね。あくまで記念という事で」
前衛2人が欲につられて探し始めた。
しかしこの倉庫は広い。
賢者である俺でもあてなく探すのは無理だ。
特定の場所にある金属が何かは概ねわかるが、この広い中から特定の金属を探すなんて魔法は持っていない。
「ところでどの辺に金とか白金なんてあるの?」
「俺にわかるわけないだろう」
案の定前衛2人では探せない模様。
そして……
「僕は自分の分を探すので手いっぱいだよ」
フィンは先にきっぱりと断る。
自然、2人の視線は俺達に向くけれども。
「俺じゃ無理だな。場所と物を特定すれば種類はわかるが」
「私も無理ね。探索系の技能が無いと」
残った一人、面倒見のいい奴が大きくため息をついた。
「仕方ないなあ。記念程度だけな」
モリさんは
つまりこの広い中でも探そうと思えば特定の物を探し出せる。
動物だろうと魔物だろうと鉱物だろうと。
「やった、流石モリさん、話せる」
「それじゃガンガン行こうぜ」
おいおいライバー。
「あくまで記念程度だけだからな」
モリさんはもう一度ため息をついて、そして歩き出す。
既に場所の見当はついているようだ。
モリさんお疲れ様。
そう思いつつ俺達は3人を見送る。
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