137 昇級試験(1)

 今日は昇級試験だ。

 B級の試験も会場は学校だが、受験者は学生より現役の冒険者の方が多く感じる。

 少なくともB級用に割り振られた区画を見た限りでは。

 

 B級試験もC級と同じく筆記試験からだ。

 受験番号表を見て1年1組、つまりいつもの教室へ。

 この部屋の受験生はほぼ学生だけだ。

 1年はミリア、ルドルフ、シーラ、オルソンというお馴染みの面子。

 あとは2年生。

 向こうで知っている顔が手を振っている。

 ネサス先輩、ティーラ先輩、ルイス先輩だ。


『2人ともB級試験なんだね。まあ考えてみればそうかな』


 伝達魔法を使って会話してきた。

 なぜ普通の声ではないのかは周りをみれば一目瞭然。

 必死に試験対策をしている人もいるから。

 彼らの神経を逆なでする事はない。

 

『ハミィ先輩とアルストム先輩はもう合格済みですか』


 ミリアも伝達魔法で尋ねる。


『そういう事。ハミィはああ見えて頭も悪くはないから。ただただそれ以上に戦闘大好きなだけで。アルストムはまあ化物だしね』


 アルストム先輩は化物扱いか。

 言いたいことは非常によくわかる。


『今年は1年生、何人?』

『5人です』

『去年と同じね。去年も5人で5人とも合格。まあ1年でB級試験受けるのは強者揃いだからね。ハミィとアルストムもその口よ。

 でも2年は例年半分も合格しないんだよね。落ちるのは主に実技だけれど筆記でダメなのも2割はいるかな』


『やっぱり実技は難しいんですか』

『らしいよね。B級は人によっても試験内容が違うらしいから。場合によっては1対1だけでなく1対5の試合もあるってハミィが言っていたしね。実際に1対5をやったって』


 実技の方はC級試験とはかなり違うようだ。


『あとはやっぱり一般の冒険者が多いですね』

『B級試験は年1回だし、ウァーレチアではエデタニアとルセントゥム、ラプラナの3カ所しか試験がないしね。試験で昇級できる最上級だし』


 そんな会話を主にネサス先輩とミリアがしていると、予鈴が鳴った。


『それではまたね』

 

 3人と別れて番号で指定された席に着く。

 すぐに試験官らしき人3名が部屋に入って来た。

 3人とも俺の知らない顔だ。

 きっとギルドから派遣されてきた職員なのだろう。


「それでは皆さん席についてください。受験者の確認を行います」

 ここからはまあ、C級の試験とほぼ同様だ。

 問題数が多い分、試験時間が少しだけ長いけれども。


 ◇◇◇


 確かに問題数は5割くらい多かった。

 筆記試験の内容そのものはC級とそう変わらなかった。

 国内法と冒険者ギルド協約についてが少し詳しくなった程度だ。

 これなら心配はいらないだろうと俺は判断する。

 問題の9割くらいは迷わず書けたし。


 筆記試験終了後、俺達は教室で12名ずつの組を作らされる。


「実技試験はこの組ごとに移動となります。それでは1組、移動します。移動後は私語禁止としますのでよろしくお願いします」


 1組は俺達1年生5人と知らない2年生7人だ。


 校庭は試験用に様変わりしている。

 B級試験に使われる一角は土壁で囲まれ中が見えない状態だ。

 ご丁寧にも範囲秘匿、視認妨害といった魔法もかけられている。

 他人がどう試験を受けたかを見る事が出来ないようしているのだろう。


 どうやらC級の実技試験とはかなり違う模様だ

 人によって試験の内容すら違うとネサス先輩は言っていたな。

 どういう感じだろう。


 

「実技試験の要領を説明します。

 まず装備を着装の上受験票を取り出しやすい位置に入れておいてください。その後、私が試験番号を呼びます。受験者は呼ばれたら返事をして名前を名乗り、指定された通路を進んで下さい。

 通路を進むと試験官が待っています。試験官に受験票を渡して、後は試験官の指示に従って下さい。

 それでは試験準備をお願いします。装備を着装し、受験票を取り出しやすい場所に仕舞ってください」


 それでは着替えるか。

 着替えるといっても今の服の上に鎧等を着装するだけだけれども。


 俺の装備は冒険者学校に来た頃とほとんど変わらない。

 ブーツをはいた後、前垂れ、背あて、胸甲をつけ、革帽子と肘あてをつけて手袋を装着。

 素材は全部革、この中ではかなり軽装な方だ。

 これに今回は元から持っている方の刀を装備。


 ミリアは黒塗りのミスリル製スケイルアーマー装備、ただし兜はなし。

 重装に見えるけれどミスリルは軽いので重さは一般的な革鎧とそう変わらないらしいけれど。

 今回の武器はフィン作製の炎の槍だ。 


 そんな感じで全員が装備を着装したのを確認して、試験官が口を開く。

「皆さん宜しいでしょうか。それでは試験を開始します。それでは1組1番」


「はい、オルソンです」

「1番の通路を進んで下さい」

 オルソンが土壁に1と書かれた通路へと入っていく。


 今回の受験番号はオルソン、シーラ、ミリア、ルドルフ、俺という順だ。


「次、1組2番」

「はい、シーラです」

「2番の通路を進んで下さい」


「次、1組3番」

「はい、ミリアです」

「3番の通路を進んで下さい」


 ミリアが3番の通路を進む。


「それでは残りの受験者はしばらくお待ちください。なお私語は禁止です」


 どうにも緊張感が高まってしまう。

 実力的に問題ないとは思うのだけれども。


 体感的に5半時間12分くらいした後。

「それでは1組4番」

「はい、ルドルフです」

「2番の通路を進んで下さい」


 これは2番が先に空いたという事なのだろうか。

 そう思ったたすぐ。

「1組5番」

 俺が呼ばれた。


「はい、ハンスです」

 立ち上がって返答する。

「3番の通路を進んで下さい」


 1番ではなく3番か。

 そう思いつつ示された通路に入る。

 幅は概ね半腕1m程度。


 5腕程度先で右側へゆるく曲がる。

 曲がった先で通路幅は急に広がり1腕2mとなった。

 3腕6m位先に中年の男性が1人立っている。

 簡単な革鎧をつけ、小型の革盾と片手剣を装備している。


「それでは受験票を確認します」

 俺は前垂れベルトについているポケットから受験票を出して彼に渡した。

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