131 迷宮核の破壊
「なるほど、理解した。遠距離攻撃でこの威力なら普通の弓とか投槍、攻撃魔法は必要ない」
「でもアルストム、あんな攻撃魔法を持っていたのを隠していたのね」
「今のパーティでこの魔法が必要になる程追い込まれた事もなかったからさ」
「それはそれ、これはこれとして教えてくれてもいいんじゃないの」
「今のは闇属性ではなく第13属性。私も知らない魔法」
何やら先輩達のパーティで不協和音が起きている。
大丈夫だろうかと思ったが取り敢えず気にしない事にした。
『うちのパーティはいつもこんな感じだから気にしないで下さいね。人はともかく戦力的には悪くないですから』
ネサスさんが前にそんな事を言っていたし。
「今回、あの岩は今回の敵であるアークデモンの特性にあわせてありました。ですから普通の岩よりは少しだけ脆いかもしれません。ですが威力は概ね皆さん理解して頂けたと思います。
それでは移動しましょう。特殊弓は一度しまって下さい」
フィンが特殊弓3種を自在袋に収納した後、再び階層移動する。
第28階層、あの壁が白い鉱石置き場のような場所だ。
前は第29階層への洞穴。
「何この階層。これ絶対自然じゃないよね。アルストムは知っていたの?」
「僕も此処へ来るのははじめてさ。普通は人が通れる穴は開かないからね、この層に。
それより今回の課題は向こうの敵さんの方じゃないかな」
そう。
俺達が此処を去った時と同じ強大な気配がここからでも感じられる。
これがアークデモンか。
「この階層を調べるのは後回しです。まずはアークデモンを叩きます。
私が向こうへ攻撃が届くようにすると同時に一斉攻撃をかけてください。それではアルストム、フィン、ミリア、ハンス、モ―リ、準備をお願いします」
それでは準備だ。
「ハンスとモリさんの分は新たな特殊矢を入れるから。まずはハンス、これを構えて」
この辺の作業は以前実習で翼竜を倒す準備をした際と一緒だ。
俺やモリさんが特殊弓を構え、フィンが後ろから特殊矢をセットする。
「フィンのは大丈夫か」
「僕のこれはワンタッチで矢を補充できるんだ。100本単位でこれを入れて9回分までだけれども」
フィンは右手を握る部分の下側に長く四角い箱をはめ込む。
前に構えて準備完了だ。
「大丈夫だと思うけれど特殊弓の前や真後ろには立たないでね。万が一の事があるから」
「わかったわ。やや後ろの横側、この辺ならいいかしら」
「大丈夫だと思うよ」
「なら僕もそれにならうとしようか」
全員の位置が決まったところで、シャミー教官が長弓を取り出した。
矢の尻からは細く長い金属線が伸びている。
なるほど、この線が伸びている場所は相互に魔法も物質も行き来が可能という訳か。
まあフィンがこれを見たから今後は用意するとは思うけれど。
「それでは皆さん準備はいいですか」
全員が頷いたのを確認してシャミー教官は矢をつがえる。
「空間が繋がったら各自攻撃してください」
俺も特殊弓を敵にあわせる。
シュッと矢が飛ぶ音がし、直後に軽い衝撃を感じた。
敵の存在が今までと違ってはっきりした。
圧倒的な魔力を感じる。
これが攻撃可能になったという事だろう。
そう判断すると同時に俺は魔力を特殊弓に流しこんだ。
風魔法でも殺せない衝撃と振動。
敵周囲で弾ける雷精の輝き。
圧倒的な魔力と存在感はそんな一瞬の後、粉々に消し飛ぶ。
「はい、状況終了です。お疲れさまでした」
教官が歩いて行って矢を拾い、自在袋に仕舞う。
「何かあっけなかったな」
「何かあっけなかったわね」
うちの
「ええ。ただこれだけの威力の遠距離攻撃を揃える事は普通は難しいです。雷精魔法だけではぎりぎり倒せないでしょう。
その場合はアルストムの空即斬を使うのが一番です。相手のいる場所さえ認識していれば確実かつ防御無視で倒せる魔法ですから。今回は使いませんでしたし、使わなくても問題なかったのですけれど」
俺も空即斬については後で練習をしようと思う。
先程の威力確認の時、ある程度はやり方を掴めた。
あとは練習だ。
「それでは攻略再開でしょうか?」
ネサス先輩の台詞に教官は首を横に振る。
「いえ、これで終わりのようです。奥へ進んでみるとわかります」
特殊弓を仕舞い、教官について先程敵がいた場所へ。
アークデモンの死骸は放たれた攻撃の威力で粉々に近い状態で四散している。
だが魔物や魔獣なら残る体液や血液の痕が無い。
散らばった身体も石のようだ。
いや、石というより金属だな。
軽銀と鉄と、あと何か種類はわからないけれど明らかに何かの金属。
更には魔石と思われる拳大の石が2つ落ちていた。
ひとつは灰色をした、通常の魔石と同じような雰囲気のもの。
もうひとつは金色に光り、完全に球形をしてかなり強力な
なお俺はこの金色の球を知っている。
かつて見た事があるから。
シャミー教官が灰色の石を拾い上げる。
「こっちはアークデモンの魔石ですね。これ自体は通常の魔物の魔石と同じです。扱いも同じで問題ありません。
ただこの金色の球の方は魔石ではありません」
教官はここで一呼吸置き、全員が聞いているのを確認して続ける。
「この金色の球は
「ならこれを壊せばいいのでしょうか」
ネサス先輩の台詞に教官は頷く。
「ええ。この状態の
シャミー教官は魔法を起動。
火属性の初級魔法のひとつ、高熱魔法だ。
金色の球は高熱に包まれた後、みるみるうちに小さくなっていく。
金色の球が消えると同時に周囲の空気が明らかに変わった。
うまく表現できないが、
「これで任務完了です。この
皆さんお疲れさまでした。それでは質問を受け付けます。ここを攻略して疑問に思った事をどうぞ質問してください」
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