130 威力の確認
さて、それでは次、フィンに聞こう。
「フィン、特殊弓の大型を借りていいか? 今回も使いたい」
「勿論だよ。あれは強力過ぎて今の僕でも手に余るからね」
確かにあの時の俺でもぎりぎりくらいの反動だった気がする。
確かに進化種となった今のフィンでも少し厳しいだろう。
「フィン自身はどれを使うつもりだ?」
「小型高速連射型かな。僕自身が使える範囲ではあれが一番強力だと思うから」
なら残りは1つか。
ライバーに近接以外の武器を持たせるのは考えにくいし、アンジェも遠距離武器を使った事はない。
そしてミリアは雷精魔法を使う予定。
という訳で残るのは普段弓と魔法を使ってる、特殊弓をある程度練習した経験もある奴だ
「なら中型はモリさんに頼むか」
「無難なところだね。今のモリさんなら充分扱えると思うよ」
「私かあ。まあ仕方ないかな」
あっさりモリさんが了解してくれた。
「ちょっと待って。その特殊弓ってどういう弓? 普通の強弓より強力なの?」
ハミィ先輩が尋ねる。
確かにあの特殊弓、実際に見ないと威力はわからないだろう。
既に野外実習で見て知っているシャミー教官は頷いた。
「そうですね。その辺は実際に確認するのが一番でしょう。
それでは皆さん、出る準備をしてください。準備次第、
戦闘準備開始だ。
俺達も靴を履き替え、革鎧等を装備する。
◇◇◇
第16階層のあの大穴の下へと到着した。
「なるほど。ここなら私もわかるわ。アルストムが言った、大地を支える大地ではない層ってあれね」
この台詞はネサスさん。
どうやら引継ぎの際、俺とアルストム先輩が話している台詞が聞こえていたらしい。
「どれどれ、あ、確かにこれは自然じゃないよね。どう見ても金属、それも多分鉄に近い何かだし、作りも三角形を組み合わせた感じだし」
「本当だ」
先輩方もここから走査してわかるようだ。
つまり今のモリさんやアンジェと同程度のレベルはあるという事だろう。
「そうですね。走査可能な人はここで確認してみてください。真上へ広がる大穴の中、地層の間に特殊な層が確認できる筈です。ラトレの
ちょっと待ってくれシャミー教官。
「つまりあの層はラトレの
「ある程度深い
此処だけではないという訳か。
それがどういう意味なのかは後程考えよう。
そうでなくとも此処へ来て考える材料は大量に増えた。
じっくり考える必要がある。
「それではアークデモンに対する武器の威力の確認をしましょう。その前にフィン、特殊弓用の矢は試射しても大丈夫なくらいありますか」
「どれも10回分用意してあります」
流石フィン、その辺抜かりはない。
「なら1回試して貰いましょう。ミリアは使用予定の魔法、今の状態で何回起動可能ですか」
「3回です」
「ならやはり1回だけここで試して貰いましょう。アルストムはどうですか?」
「5回ですね」
「なら同じく1回だけ。あと他の方にも此処で自分の攻撃が通用するか試して貰います。それでは」
シャミー教官が魔法を発動する。
「距離と固さ、防御特性は今回の敵であるアークデモンにあわせてあります。それではまず特殊弓の方、準備をお願いします」
つまり教官はアークデモンについて特性を含めてよく知っているという訳だな。
俺はちらっとそう思った。
「それじゃハンス、モリさん、それぞれ出すよ」
フィンの台詞と共に翼竜退治に使った長さ
肩に担ぐとずしりと重い。
「ハンスは前に使ったからわかっているよね。モリさん、この距離なら真っすぐ飛ぶから少し上とか考えなくてもいいよ。ただ思った以上に後ろに反動がかかるからそれは注意してね」
モリさんのは長さは俺の3分の2程度。
筒の太さは半分程度。
ただし筒が2本ついている。
フィンのはそれに比べるとかなり小さい。
長さこそモリさんのと同じくらいあるが、筒は遥かに細く普通の特殊弓と大して変わりない。
ただ持ち手部分が下にかなり長い気がする。
「それじゃ僕から行こうかな。教官、いいですか?」
「どうぞ」
「それじゃやるね」
音はどうやら風魔法で防いでいるようだ。
しかし小さい衝撃というか振動が連続で感じられる。
矢は岩に連続で当たり、岩を削り最後には大穴を開けた。
振動が終わるとともに岩が崩れる。
「怖いなそれ。何射したんだい、今のは。矢はどれくらいの大きさかな」
「100射です。矢はこれです」
アルストム先輩の質問にフィンが特殊矢を出してみせる。
先輩達のパーティが全員囲んで矢を確認。
「こんな小さな矢なんだ」
「でも重さはそこそこあるよね」
「これをあの速度で100射か……」
皆さんそれぞれの感想があるようだ。
「モリさん、どうする?」
「これは初めてだから先にハンス、いいかな」
「わかった」
俺は肩に担いだ特殊弓を構える。
この距離なら真っすぐ狙ってもいい。
ゆっくり狙って魔力を通す。
風魔法で音を上方向へ逃がし、強く後ろへ引っ張られる衝撃をこらえる。
岩は爆裂という感じで壊れた。
ここまで響く衝撃と音。
「怖……なんなのあれ」
「想定外よね」
そしてモリさんも特殊弓を起動。
今度は低い衝撃が2回。
岩が割れ、横倒しに倒れる。
「どれも特殊弓というけれど、弓の威力じゃないよね。
「どっちかというと
なんて感想の後。
「今度はミリア、お願いします」
「わかりました。雷精召喚! 球雷!」
雷精が岩の周囲を取り囲む。
次の瞬間一斉に光と轟音を放った。
少し置いた後、岩はボロボロと崩れて落ちてゆく。
「それではアルストム」
この魔法は俺が知らない、かつ使える可能性がある魔法だ。
だから注視させて貰う。
方法論は移動と似ている。
だが起動後の揺れがかなり小さくかつ速い。
すっと目には見えない断裂面が発生、岩を二分して消える。
次の瞬間岩が斜めに両断され、上半分がゆっくりと滑り落ちて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます