第31話 私達は知りたい

125 第2回目攻略

 翌朝。

 起きて着替えて朝食を食べるところまでは前回と同じだ。


「現在向こうのパーティは第25階層の終わり近くです。おそらく第26階層に入ったところで交代するつもりでしょう。

 なお第25階層は第16階層と同じような広さですがかなり寒い場所で、出てくる魔物や魔獣もトロルや魔狼など、寒さに強いものが中心だそうです」


 俺達と交代したのが第18階層の中央付近。

 あれから7階層も進んだ訳か。


「随分進んでいるようですね。あんな広い階層なのに」

「かなり強引な進み方をしたようです。そのあたりについては交代の時に聞けばわかるかと思います」


 やはり最短ルートの植物を焼き払う位の事をしたのだろうか。

 実際に焼くと空気が悪くなるから熱分解だろうけれども。

 更に土魔法で段差を埋めてなんてやれば確かに時間短縮は出来そうだ。

 相当な魔力が必要になるだろうけれど、アルストム先輩なら何とかなるのかもしれない。

 少なくとも俺よりはレベルが上の筈だから。


「第19階層からはどんな場所だったんですか」

「第19階層と第20階層は第18階層とほぼ同じ環境で、第21階層から第25階層までは少しずつ寒くなっていったそうです。広さは何処もほぼ同じで、植物や魔獣は寒さにあわせたものに変わっていったそうです」


 ラトレの迷宮ダンジョンと似たような感じか。

 魔物が強い事を除けばだけれども。


 起きてからの1時間は寝る前の1時間よりも時間が経つのが早い気がする。

 着替えて食事して装備を確認、装着すればもう出発時間だ。


「それでは行きましょうか」


 教官について迷宮ダンジョン入口へと歩いていく。

 入口を警備している冒険者2人に頭を下げて中へ。


「ところでハンス、階層転移の魔法は理解できたでしょうか」

 シャミー教官にそんな事を聞かれた。


「ほぼわかりました。今回起動するところを体験すれば大丈夫だと思います」

「でしたら次に休憩で戻る際、実際に起動させて確認してみましょう。階層移動を使えるようになれば移動魔法全般もそれほど難しくありませんから」


 移動魔法か。

 遠隔移動魔法を使えればパス・ダ・ラ・カザへ行くことも可能だ。

 まだ当分先、学校を卒業してからと思った事。

 それが近いうちに実現可能になる。

 ならば是非とも覚えなくてはな。


 階層移動魔法については何回か経験した結果、ほぼわかっている。

 空属性についての本を読んだ時に理論も概ね理解はしたつもりだ。

 今回もう一度見れば大丈夫だろう。


「それでは移動しましょう」

 シャミー教官が階層移動魔法を起動させる。

 うん大丈夫。

 俺の理解した通りの魔力の動かし方だ。

 これならもう大丈夫だろう。


 景色が変わる。

 暗くて白い世界だ。

 そして寒い。


「お疲れさまでした。交代です」

「やあやあお疲れ様。後はよろしく。引き継がなければならないような事項は特に無いよ。見た通り広くて寒い場所さ。敵もまあ、この寒さに対応している連中ばかりだ。トロル系って戦った事はあるかい?」


「このパーティではまだですね」

 俺自身は一応経験がある。

 メディアさんの山小屋にいた時代だけれども。


「そうか。でも心配はいらない。オーク系より2割大きくて4割程度力が強い程度だから、問題ないとは思っているけれどさ。

 ただトロル系はオーク系と違って肉が売れないのが難点かな。毛皮は質が高いけれど、エデタニアは温暖だからあまり需要は無いしね。魔狼も同じく毛皮は悪くないけれど肉はいまいちだし」


 つまり収納してもオーク系のように高く売れないという事か。

 了解だ。

 あと、聞いておきたい事がある。


「参考までにここまでの階層はどうやって攻略しましたか」

「ハンス君の想像通りさ。出口に向けて熱線魔法を数本飛ばして見通しを良くして、あとは土魔法で埋めたり削ったり固めたりして進んだよ。どうせこの迷宮ダンジョンは潰すからね」


「この性悪男、魔法と魔力は腐る程あるからね。その代わり全く戦わなかったけれど」


「僕は道を切り開く人、君達は戦う人。公平だろ」


 どうやら想像通りの方法で攻略してきたようだ。

 なら俺達もそうするか。

 アルストム先輩程の魔力は俺にもないが、その分ミリアがいるから何とかなるだろう。


「わかりました。参考にします」

「それじゃ引継ぎ終わりという事で」


 念のため向こうのパーティが帰る際、階層移動魔法を起動する様子を確認する。

 うん、問題ない。

 これならもう俺も使える筈だ。


「それじゃ行きましょ。この階層は向こうのパーティがとったのと同じ方法で進む事にしていいわよね」


「どんな方法なんだ?」

 ライバーは今の俺とアルストム先輩の会話を聞いていなかったようだ。

 あるいは聞いていても理解できなかったのか。


「やればわかるわよ。この階層は私がやるから次はハンス、お願いね」

「わかった」

 ミリアの魔力なら問題ないだろう。


「それじゃ行くわよ。雷精召喚! 行け!」

 雷精が6体出現。

 次の階層の入口方向へ向け飛んでいく。

 その方向で木々が倒れていくのが見えた。


「あとは土属性、掘削! 移動! 踏み固め!」

 目の前に幅1腕半3mくらいの通路が出来ていく。


「これ、どれくらい使うんだ、魔力」

「私の総魔力の3割弱ってところね」

 モリさんの台詞にそう答えて、そしてミリアは更に続ける。


「それじゃ行くわよ。隊列はライバー先頭、あとは前と同じで」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る