123 手掛かりのひとつ
移動先は
そのまま外へ出て天幕に向かう。
「お疲れさまでした。夕食を取って休憩してください。今から1時間後、鐘が鳴ったら睡眠魔法をかけます。それまでは自由時間です。
何か質問はあるでしょうか」
シャミー教官の様子はいつもと変わらない。
どうしようか。
ほんの少しだけ考え、やはり質問してみる事にする。
「第15階層から第16階層に降りる途中、地層の間にどう見ても岩や土ではない、金属製で、しかも人工的な構造の層があったように見えました。あれは何ですか?」
シャミー教官は頷く。
ふっと魔法が起動した気配を感じた。
「ハンスが五感と魔法で確認したならば、それは実際にそこに存在する物でしょう。ただそれが何かという事については今は宿題としておきます。他に疑問を感じる物事とつなぎ合わせた上で何が導き出されるか、自分で考えてみてください」
「他にもこの
「手掛かりはこの
おっと、教官がフィンに振った。
フィンは何も答えない。
「相談や情報交換は自由です。ただアルストムも私も、あるいはメディアもヒントはともかく答は教えてくれないでしょう。自分達で探してその場所にたどり着いてください」
なんだって。
そう思うとともに、やはりという気もする。
取り敢えず確認させて貰おう。
「メディアさんと知り合いなんですか」
シャミー教官は頷いた。
「古い友人です。向こうがまだ友人だと思ってくれていればですけれど」
なら更に質問をしてみよう。
「ウーニャの村の村長は、シャミー教官ですか」
「それについては答えを保留しておきます。回答してもしなくても別の話が関わってくる事になりますから」
否定はしないという事か。
予期していたのだが、世界が急に狭くなったように感じた。
「それでは他に質問はありますか」
俺は今の時点ではもういっぱいいっぱいだ。
でもフィンが何か質問をするかな。
俺よりも知っている事が多そうなフィンが。
そう思ったが彼は何も言わない。
「それでは自由時間です。夕食はテーブル上の自在袋に入っています。各自1セットずつです」
日常の時間に戻ってしまった。
まあ新しい
とりあえず服を着替え食事タイムだ。
昨日と同様、1人分が1つの器に入っている。
今日のメニューは鹿肉のローストがメインだな。
見かけは味気ないが味と量はそう悪くない。
学校の食堂より美味しいくらいだ。
ショーン特製には負けるけれども。
「さっきの話、何なんだ。訳がわからなかったけれどよ」
「前に聞いたなあ。ハンスに魔法を教えてくれた人が、ウーニャの村の村長と同じ世代だって」
モリさんは憶えていたようだ。
「なら実はシャミー教官、相当な年齢だって事か?」
「魔法使いは外見と年齢は必ずしも一致しないけれどさ。でもそういう話題じゃないだろ、今の話は」
モリさんが
「ならあえて、フィンに聞くわよ。フィンは教官が言っていた手掛かりを知っているのよね。違うかしら」
「手掛かりというべきかは分からないけれどね。そうだね、例えばこんなのはどうかな。日が沈むとか日がのぼるなんて表現があるけれどね。実際に日がのぼったり沈んだりしたところを見た事があるかな。高い山に隠れたりするところ以外で」
高い山は無し、か。
確かに無いけれど、でもそれには理由がある。
「空気中には
「その通りだね」
フィンはミリアの台詞に一度頷いた後、続ける。
「でもそこで、もし
もしこの大陸が地図のように平らなら、いくら遠くへ行っても小さく見えるようになるだけだよね。もし世界が球状で球の外側に僕らがいるのなら、ある程度遠くなると地面で隠れて見えなくなるよね」
「世界の姿を知ろうとする事は神の意志に背く。そんな教えがあったと思うけれど」
これはアンジェだ。
「確かにそう言われているね。なら何故世界の姿を知ろうとする事は神の意志に背くのかな。
まあその辺はまた別の話になるから今はしないけれどね。それでも普通の今いる場所を観察するくらいは神も禁止していないと思うよ。
さて、さっきの話の続き。ライバー以外はきっと、走査という形である程度
なら実際に見てみるとどうかな。出来るだけ遠方、同じくらいの距離で同じくらいの高さの場所を見るとどう見えるか」
「私は変わらないように見えるけれど」
「アンジェはきっとそこまで遠く走査出来ないだけだと思うよ。でも
確かにそういう事を試した事は無かったな。
早速俺はやってみる。
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