114 久しぶりのカペック平原

 本3冊を読んだおかげでほぼ徹夜状態だ。

 とは言え、完璧に読み込めたという訳ではない。

 それでも取り敢えず俺が知りたかった事はある程度わかった。


 第12属性は空属性で空とは空間を意味する。大雑把に言うと位置や場所を操る属性だ。


 現在のところ俺がこの属性で使えるのは透視魔法、監視魔法、偵察魔法の3つ。

 透視魔法が障害物の有無に関係なく見える範囲の物事を把握する魔法。

 監視魔法が自分を中心にした半径50腕100mの物事を障害物の有無に関係なく把握する魔法。


 透視魔法と監視魔法の違いは範囲だけだ。

 監視魔法は自分を中心とした球状の範囲が対象で、透視魔法は今見ている視界内の範囲が対象。

 監視魔法の方が範囲が広いが、透視魔法は見ている視野に直接他の情報ものせられるので使いやすい。


 偵察魔法は自分から半径1離2km以内の任意の地点を中心に、自分が使用可能な目視、聴音、魔力走査や探知、監視魔法等を使える魔法だ。


 例えば俺が1離2km先の魔力を探知可能なら、方向によっては1離2km1離2kmの合計2離4km先の魔力反応まで探知可能。


 なお空属性は他に物質転送魔法や移動魔法各種、収納魔法や封印魔法、切断魔法なんてものもあると記されていた。


 遠隔移動魔法なんて使えたら相当に便利な事になりそうだ。

 そう簡単に使えるようになるとは思わないけれど。

 遠隔移動魔法を使用出来るようになればパス・ダ・ラ・カザだってすぐに行けるだろうし。


 それに遠隔移動魔法は無理でも移動魔法全般が無理な訳ではない。

 遠隔移動魔法は行きたい場所に直接移動する魔法。

 もちろん距離は術者の能力に左右されるけれど。

 他の人から見ると術者が目的地に突然出現したように見える。


 一方、高速移動魔法は普段走る速さの更に数十倍の速度で移動できる魔法だ。


 どうやら俺達が普段認識している空間は、更に高次の目から見ると歪んでいるらしい。

 その歪みの中、最短の経路を走力と魔力併用で移動する魔法が高速移動魔法だ。

 他の人から見ると物凄く速い速度で走っているように見えるらしい。


 取り敢えず今は使用可能な偵察魔法などを使いまくって、空属性の適性を上げる事を考えよう。

 その上で次に覚えられそうな高速移動魔法を訓練するとして。


 さて、あと1時間くらいは寝る事が出来るだろう。

 軽く睡眠魔法をかけて、おやすみなさい……


 ◇◇◇


 久しぶりのカペック平原だ。

 ここ最近毎日冒険者が入って討伐をしている筈。

 それなのに通常以上に魔物や魔獣の反応が多い気がする。


「これは狩り甲斐がありそうよね。新しい自在袋束を買った甲斐がありそうだわ。魔物牽引トレインなんて使わずにガンガン狩っていくわよ」

 

 平原入口でミリアがそう宣言する。

 なお本日は効率化の為3パーティに分かれる予定だ。

 俺、ライバー、フィンの3人パーティ。

 ミリア、アンジェ、モリさんのパーティ。

 クーパー、ショーン、ケビン、ケイト、メラニー、エマのパーティ。


 クーパー達は普段の編成通り。

 ミリア達はモリさんが水魔法で盾役の代行をして、アンジェ、ミリアという隊列。

 俺達はライバーが盾役兼前衛攻撃役、フィンが索敵兼遠距離攻撃役、俺が最後で2人の補助という形だ。


「それじゃ行くか」

「お昼に一度合流よ」


 クーパー達は入口で左側の足場のいい草原方向へ、

 ミリア達は右の少し足をとられやすいけれど魔獣の多い方へ。

 俺達は取り敢えず街道を直進だ。

 もう少し奥を左に入るつもりだから。


「さっさと場所行って狩りをはじめようぜ」

「途中、道を歩くだけでも結構出てくるよ」


 走りそうなライバーをフィンが止める。

 フィンの言う通りだ。

 街道沿いも牙ネズミの反応がわんさか。

 朝一番でまだ馬車も通っていないからだろう。


「なら速足で行ってバシバシ狩るか。前に出た奴は全部倒すから横から出てきたのは頼むぜ」

「わかった。それじゃ武器を変えるよ」


 フィンはいつも使っている弓を仕舞って、代わりにクーパーが使っているのと同じような特殊弓を2つ取り出した。


「おっと新型か」

「クーパーが使っているのの改良版だよ。クーパーやエマ、ケイトにもお昼に試して貰って、良ければ交換する予定」


「どう違うんだ?」

「矢を少し細長くして、あと回転するようにしたんだ。これでより遠くまで真っすぐ飛ぶと思うよ。矢も50本まで入るようにしたしね」


「両手で使うのか」

「僕は慣れているから右手と左手で1つずつ持つけれどね。クーパー達には2つずつ渡すけれど、最初は1つだけかな」


 確かに両手で別の弓を使うのなんて、普通は不可能だよな。

 フィンの特殊弓は確かに片手で使えない事もないけれど。

 ただ1人の人間が左右別のものを狙って別のタイミングで射るなんてのは普通は出来ないような気がする。

 魔法使いが魔法を同時展開する場合も発動そのものは個別だし。


 俺達はライバー、フィン、俺という隊列で道を歩いていく。

 フィンが早くも特殊弓を射はじめた。


「ハンス、回収お願いしていい?」

「ああ」


 左右の道に頭を射抜かれた牙ネズミが転がっている。

 歩くスピードを緩めないようにしつつ、風魔法で手元に集めて自在袋に回収。 

 

 そうだ、こういう時に物質転送魔法や収納魔法を使えれば便利だよな。

 意識して出来るかどうか、試してみよう。

 それでだめなら慣れた風魔法で回収すればいい。

 それくらいはこの速度で歩きながらでも出来るから。

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