107 当然のこと
歩きながらフィンと話しあう。
「次に気になるのは第40階層以降だよな」
「ハンスもそう思う? 僕もだよ。情報本にある程度は書いてあるけれど、やっぱり実際に自分で見てみないと」
まったく同感だ。
あと、以前考えた事も言ってみる。
「海の向こう側とか境界山脈の先とかは今は行けないけれどさ。
勿論ラトレの
「僕もそう感じるかな。第15階層まで行ってみて更に感じるようになったんだ」
フィンはそこで一息ついて、そして続ける。
「実際には違うかもしれないけれどね。時々こう感じるんだ。この大陸もまた手紙や書物のようなものじゃないのかなって。
何かしら意味を持って、読み解かれるのを待っている。そんな感じを受ける事、ハンスは無いかな」
なるほど、手紙や書物か。
自分でそう発想した事は無かった。
それでも言われてみると確かにそんな感じもする。
「読み解かれるのを待っている、か。いいなそれ」
「勿論本当に意味があるかはわからないんだけれどね。でも少なくとも
きっと海の果ても境界山脈の向こう側も、近づいていけば何かそういったメッセージがあるんじゃないかな」
海の方は知らない。
だが境界山脈の方はそれらしきものがある事を知っている。
「境界山脈のパス・ダ・ラ・カザに遺跡がある話は知っているか」
「何かあるとは聞いたけれど遺跡なの?」
知らなかったようだ。
「千年以上前の記録にも残っている遺跡だ。伝承ではウラートから来た船が到着したとされる場所だ。周囲の
また遺跡の一部は未知の素材で出来ていて今なお新品同様に見えるそうだ。また未知の魔道具と思われるものも発見されたらしい」
「面白そうだよね。是非行ってみたいな。今はまだ無理だけれども」
「だろ」
やはりフィンはのってくると思った。
しかし、だ。
「
違う奴まで釣れてしまったようだ。
「確かにデモン系とかオーガ系、地竜あたりもいるらしい」
まさか遺跡だの伝承だのでなく、強い敵に魅かれる奴がいるなんて想定外だった。
しかしよく考えればライバーはそういう奴だった。
そして。
「デモン系とか地竜って、ラトレ
フィンに言われて俺は気付いた。
確かに同じ魔物だ。
少し考えてみる。
同じくらい強いとされる魔物や魔獣は他に何がいただろうか。
A級とされる魔物・魔獣は竜類(飛竜、地竜等)、メガトロル、オーガ類。
それより上の超級とされるのは龍類、デモン類。
他に魔類だの霊類だのが話に出る事もあるけれど、実在が確認されているのはこんなものだ。
だから
ただ可能性が高いだけで、それが本当かどうかはわからない。
「自分の目で見ても理由がわかるとは限らない。わからない可能性の方が高いだろう。それでも実際に行ってみたい。そう思うのは何故だろうな」
「知らない事を知りたい。そう思うのは当たり前じゃないのか」
また意外な方からそんな台詞が出てきた。
クーパーだ。
「そりゃ食うのに精いっぱいとかだったら話は別だがよ。ある程度の余裕が出来たらまず身の回りの事を知りたい。次はもう少し先を知りたい。そう思うのは当たり前だと思うぜ。
たとえば今までは少し先の路地までしか知らなかったとする。ならその路地の先はどうなっているんだ。今度行ってみるか。そう思うのは普通じゃないのか。
そうやって知る事を広げて何になるかはわからねえ。ひょっとしたら危険があるかもしれない。それでも用心しながら次は少し進んで知っている範囲を広げていく。
そんなおぼえはないのか。それって当然の事じゃないのか」
なるほどな。
「確かにそうだな。俺は難しく考えすぎていたようだ」
「ただそんなとんでもない処まで俺っちは行けないとは思うけれどさ。そっちのパーティならかなりいい処まで行けるんじゃないか」
「まだ足りないわね。せめてラトレ
「うわっ」
ちなみにうわっと言ったのはモリさんだ。
ミリアの台詞に特訓の日々を思い出してしまった模様。
「なら明日からは
モリさんとアンジェ、更にはフィンの表情まで一瞬ひきつったように見えたのは気のせいだろうか。
「ならこっちのパーティはしばらくは大人しく外で狩りですね」
「甘いわよ。冬にはそっちも半分はC級冒険者になるんだから、今のうちに
取り敢えず次は第10階層までは行くわよ。今日ハンスにかなり鍛えたられたみたいだから余裕よね、きっと」
「ひいっ」
クーパーがわざとらしい悲鳴をあげる。
なお目は笑っていない。
「大丈夫だぜ。取り敢えず目の前の敵を倒していけば余裕だろ」
脳筋の励ましは励ましにはならない。
だが本人はその事に全く気付いていない。
「まあ、やらなきゃならないならやるしかないんだな」
ショーンの台詞が微妙に暗い影を帯びている気がする。
これは俺の気のせいだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます