101 新たな階層

 危険人物先輩の話はそれとして、午後は討伐タイムだ。

 本日は晴れているけれど迷宮ダンジョンに12人編成で行く予定。

 例によって中ではミリア&ショーン達、ミリア以外の昔からの連中の2パーティに分かれて行動する。


「今日は罠部屋なしで、何処まで行けるかやってみたいな」

 フィンがらしくない事を言った。


「おういいぜ。ガンガン行こう」

「そうよね。何かいい物が出るかもしれないし」

 前衛2人はいつも通りの反応。


「確かにまだ余裕はあると思う。でもフィンがそういう事を言うとは思わなかったなあ」

 モリさんは俺とほぼ同じように感じたようだ。


迷宮ダンジョンの奥がどうなっているのだろう。それがちょっと気になってね。勿論第50階層の先は立入禁止になっているけれど、見る事が出来る部分だけでも見てみたいと思ったんだ」


「第10階層までは何度も行ったしさ。第11階層から順番に攻めてみる分には問題ないだろう」


 転移陣があるからその気になれば一気に第50階層まで行くことも出来る。

 しかしそれでは危険すぎる。

 だから無難かつ常識的な案を出させてもらった。


「勿論それでいいよ。各階層それぞれを見てみたいしね」

「なら第10階層まで行ってそのまま第11階層だな」


 転移陣の部屋を経由して第10階層終わりの場所へ。

 第11階層への階段を降りる。


「妙に長いなこの階段。今までの倍よりあるよな」

「確かにそうよね」

 前衛2人の言う通り、妙に長い階段を降りる。

 勿論この長さには理由がある。


「第11階層から第15階層は屋外のような環境だって書いてあったなあ。空があって木が茂っていて、出るのも魔物ではなく魔獣や獣らしい」


「そうそう。階層ごとに気温とか湿度が違って、植物や獣の種類も違っているけれど。あと確か階層移動も階段ではなくて横移動なんだよね」


 モリさんとフィンは情報本で予習済みのようだ。

 勿論俺も予習済みで知っている。

 長い階段は階層の天地の分。

 大木も茂っているらしいから。


 階段は30段程度で踊り場があり、そこでおり返す形になっている。

「それにしても長いな。もう何回踊り場を過ぎたんだ?」

「確か踊り場が35カ所、合計1,050段と書いてあったよ」

「これを戻るのは絶対嫌だからね。何としても第15階層終わりまで行かないと」


 そんな事を話しながら延々と降りる。

 長い長い階段の先にやっと終わりが見えた。

 踊り場の先に続きの階段が無い。

 代わりに先へと続く通路が見える。


「まさかこの先も階段って事はないよな」

「もう無い筈だよ」

 通路の先が明るい。


 出た場所は外だった。

 外としか思えない場所だ。

 今出てきた場所はここから見ると崖に出来た洞穴。

 そして目の前は森だ。


「どう見ても外だよな」

「空も見えるしね」


 確かに空もあるし、目で見る限りは不自然に見えない。


「魔法で走査すると100腕200mくらいの場所に天井があるよ。光魔法か何かでそう見せているんだと思う」

 フィンの言うとおりなのだけれども。


「いずれにせよガンガン進もうよ。今の階段をもう戻りたくないしね」

「だな。それでどっちに進めばいい?」


 ルート担当は基本的にモリさんだ。


「まずは左斜め方向かな。それで川を見つけたら川を下る方向へ。湖に出たら左方向へ。それで次の階層への入口があるって情報本に書いてあった。

 ここからだと左へ30腕60mくらい行くとちょうどいい獣道があるなあ。それを進もうと思う」


「わかった」

 いつもの隊列で崖沿いを歩き始める。


「敵はどんなのが出るんだ?」

「第11階層だと魔狼、魔猫、魔蛇ってところだね。たまに魔熊も出るようだけれど。この先だと獣道に入った後、いくつか魔蛇の反応があるよ」

「蛇は苦手だから近づいたら教えて」

「勿論」


 ◇◇◇


 崖に開いた大きめの洞穴に俺達は入る。

 激しく体温を奪う風が無くなった。

 気温も普通に戻った気がする。


「やっと終わりかよ。思った以上に疲れたぜ」

「暑かったり寒かったり。もう最悪よね。もうこの階層は遠慮したいな」


 確かに前衛2人の言う通りだ。


「普通だったのは第11階層だけだったよなあ」

「第11階層が普通の環境、第12階層が蒸し暑い環境、第13階層が砂漠、第14階層がやや寒い環境、この第15階層が寒くて凍えそうな環境だったよね。獣や魔獣もそれに適した感じで。

 これって実際にあった場所を模したのかな」


「そんな感じだな」

 確かにフィンの言う通りだ。

 しかし何故迷宮ダンジョンがそんな作りになっているのだろう。


 迷宮ダンジョンとは街等で増えた魔素マナを処理する施設とかつて聞いた。

 増えすぎた魔素マナを魔物や魔獣、その他の物質に変化させて減らす為の施設だと。

 なら何故こんな自然環境を模すような場所があるのだろう。


 ただ迷宮ダンジョンについてはわかっていない事も多い。

 俺の知らない必然的な理由があるのかもしれない。

 そんな理由なんてないかもしれない。

 今の段階では答えを出す事は出来ない。


 昔はこんな事を考えなかったなと思う。

 ウラートだのの話から様々な事が気になりだした。

 この世界がどうあるのかとか、ただ生きているだけでは必要ないような事が。

 

 考える事に意味があるのかはわからない。

 答えがわかってもそれが役に立つとは限らない。

 それでも知りたいと思ってしまう。

 この気持ちは果たして何なのだろうか。

 俺はまだ掴めないでいる。


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