第28話 視線の変化
100 自称トリックスターの謎かけ
ドワーフの里で買った本は2冊とも一応通して読んでいる。
だが念の為、もう一度ささっと飛ばし読みをして確かめた。
結果、やはり
フィンが話した伝説とこのウラートにまつわる伝説とは違うものなのだろうか。
それにしてはモチーフが似ている気もするのだけれど。
◇◇◇
翌日。
2の曜日の2時限目は自由研究だ。
この授業は出席もとらないし課題提出の必要もない。
要は『選択授業でこれ以上とるものが無い生徒用の自由時間』みたいなものだ。
だから別に街の外へ狩りに行ったりしても一向にかまわない。
しかし俺は調べたい事がある。
遠隔監視魔法などの属性のわからない魔法の属性と類似魔法についてだ。
図書室に籠って関係ありそうな本を調べては読んでいく。
まずは魔法総論関係から。
総論関係で魔法属性について記載のある本5冊を選んで閲覧机へ持っていく。
俺の知らない魔法属性が載っていないかを見る為だ。
俺が現在、知っている魔法属性は、
〇 基本属性の火、土、水、風
〇 基本属性の複合属性である金、木、雷、光、闇
〇 基本属性の進化属性である氷、生命
の11属性。
賢者になって光属性と闇属性の初級魔法が使えるようになった。
それ以外の魔法は上級まで使える。
だがそれ以外に最低1つは未知の属性がある筈だ。
1冊だけなら偏りがある可能性がある。
だから著者が違う本で属性分類の部分だけ3冊調べた。
しかしこれらの本には俺の知っている11属性しか記載されていなかった。
だが諦めるのはまだ早い。
読んだうちの1冊に、
『11属性という数は論理的調和の上で疑問を感じる。本来は構造論的調和数である12属性である可能性が高い。故に未知の属性が1属性存在すると思料される』
とも記載されていたから。
やはり何か未知の属性があるようだ。
だがそれはこれらの本ではわからない。
なら次はどの本を調べようかと思った時だ。
「苦戦しているようだね」
出たな危険人物。
実力不明な闇属性魔法使い、アルストム先輩だ。
ただ彼なら知っているかもしれない。
少し考えて、念のために聞いてみる事にする。
「11属性にはない属性について調べているのですけれど、何か適切な本は無いでしょうか」
「第12属性か。それについての適切な本はこの学校には無い。国立図書館の魔法学総論の棚、3段目を見てみるといい。第12属性関連の本が3冊ある筈だ」
あっさり答えられてしまった。
確かに知っている可能性はあると思ってはいたけれど。
「ありがとうございます。助かります」
一応礼をきちんと言っておく。
「大したことじゃない。誰でも通る道だからね」
先輩はにやりと笑うと小声で付け加えた。
「賢者になったらさ」
何だって!
そう驚くと同時になるほどとも思った。
やはりアルストム先輩、俺以上という訳か。
賢者なら最低レベル100は超えている筈だ。
大規模な戦争でもない限り、そこまでレベルを上げる方法はそれほど無い。
俺がやった
この方法でレベル100に達する為には戦争か大量殺人でもなければ無理だから。
しかし俺と同じ方法を使ったとすれば、それを教えた存在がいる筈だ。
メディアさんのような存在か、俺のようにそういった存在から知識をえた誰かか。
「他に質問はないかい?」
アルストム先輩はいつもと変わらぬ口調で俺に尋ねる。
本当は聞きたい。
『貴方は何者ですか?』と。
だが今の俺はそれを聞く事が怖かった。
何か思いもつかない事態を招き寄せてしまうような気がした。
だから今はあえてこう答える。
「今はそれだけですね」
「用心深いね。でもそこまで用心しなくてもいいのだよ。今の僕は超越者の手から離れて、トリックスターを気取りつつふらふらしているだけだから」
超越者か。
また新しいキーワードらしき単語が出てきた。
ここは聞いておこう。
「超越者とは第一世代の事ですか?」
「今残っている第一世代は1人を除いては超越者だね。でも単に超越者と言った場合は第一世代の管理者と、第一世代に選ばれた管理補助者を示すんだ。
ハンス君にわかりやすい言葉に言い換えると、超神と亜神だね」
その単語は知っている。
しかしそんな意味では無かった筈だ。
「超神や亜神は賢者と同じように
「
もっとも世界そのものはかなり自動化されているらしい。このままの状態でいいならわざわざ手を出す必要はない程度までには。
ただ亜神以上はほとんど人里には出てこないようだね。何故かは僕も知らないけれど」
そこまで言って、そして先輩は苦笑いする。
「少し余分な事まで話し過ぎたかな」
俺は先程しなかった質問をあえて聞いてみる事にする。
「先輩は何者ですか」
「僕はこの大陸の人間だよ。それ以上の何者でもない。かなり前にそれを選んだ。そのせいで僕の師匠には見放されてしまったけれどさ。後悔はしていないかな」
鐘が鳴る音が聞こえる。
第2時限目終わりだ。
「それではハンス君がどこまで辿り着けるか、興味深く見守らせて貰うよ。また何かあったら質問してくれ。答える事と答えられない事があるけれどね。
それでは、また」
アルストム先輩はそう言って去っていく。
俺は閲覧席に取り残されたまま、今の会話にはどういう意味があったのだろうと考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます