72 モリさんの攻撃魔法
この辺の防壁は岩を集め土魔法で固めたもので、高さは概ね
そんな防壁の一部が広くなっていて、
これが監視所だ。
雨の中梯子を上り、監視所内へ。
「モリさん、どうだ」
「こっちへ向かってまっすぐ来ている。まだ目視は出来ない。思った以上に遅い感じ。この分だと
やはりゴブリンでも雨中でぬかるんだ坂道は歩きにくいのだろう。
道路ならまだしも森の中、土が柔らかい分酷い事になっている。
ついさっき自分で体験してきたばかりだからよくわかるのだ。
俺も走査して確認した。
「後続は無さそうだな」
「水位がかなり上がらない限り来ないかな。この3匹で終わりだろ、今夜は」
モリさんも完全にゴブリンの動向がわかっているようだ。
「それでどうする? 出来ればハンスの魔力は温存しておいた方がいいだろ。何があるかわからないしさ」
おっと、モリさんが予想外の提案をしてきた。
「頼めるか。この雨じゃ弓は厳しいと思うが」
「弓だと出来て2匹までかな。大丈夫、雨だからこそ出来る魔法があるからさ。魔石を回収しなくていいならほぼ確実に倒せるし死骸も処理できると思う」
モリさん、攻撃魔法を使うつもりのようだ。
今までは魔獣の勢いを殺す為の
でも考えてみればモリさん、
しかもライバーやアンジェと違い各能力ともバランスよく上げているし。
確かに攻撃的な魔法を使えてもおかしくはない。
「この雨だし手間を考えたらゴブリン3匹程度の魔石は無視していいだろう。ただ死骸の始末は頼む」
「わかった。それじゃ何とかする。ならここは私に任せてハンスは門まで戻ったほうがいい。アンジェは状況がわからないから不安だろうしさ」
「それもそうだな」
モリさんの言う通りだ。
アンジェは索敵能力がほとんど無い。
「それじゃ門のところまで戻っている。終わったら戻ってきてくれ」
「ああ」
俺は梯子を下りて再び門のところへ。
モリさんはどんな魔法を使う気なのだろう。
そんな事を考えながら。
門の処まで戻る。
「あれ、もういいの」
アンジェに俺は頷く。
「あっちはモリさんが片づけるそうだ。自信があるようだから任せて来た」
「それで他のゴブリンは」
「3匹がモリさんの方へ向かっている。まもなく接触だ。それ以外は動いていない。だからあっちが片づけば取り敢えず今回は終わりだ」
そこまで言ったところでモリさんの魔力反応が変わる。
モリさんの魔力がふっと高まった。
魔力的には水属性の魔法だな。
ゴブリンの反応が一気に動く。
村と反対の方向へと流れて、そして消えた。
魔石だけの僅かな反応も少し動いた後に消える。
「今の、モリさん?」
アンジェも今の魔力の動きに気づいたようだ。
「ああ。ゴブリン3匹の反応は消えた」
「終わりね。戻ろうか」
「だな」
でも帰る前に一応立番2名に説明しておこう。
「こちらに向かっていたゴブリン6匹はこれで全部倒しました。3匹は熱分解した後魔石を取り、もう3匹は水で押し流した後埋めたようで魔石の反応も見えません。他にこちらに向かっているゴブリン等の魔物・魔獣はいないので、一度待機室に戻ります」
「わかりました。お疲れさまでした」
待機室へ。
「どうでした。ゴブリンの方は」
「すべて退治しました。あと1人も間もなく戻ってきます」
雨で重くなったマントと泥だらけの靴に清拭魔法をかけ、マントはかける場所へと吊るす。
少し雨がしみ込みやすくなっているようだ。
完全に乾かしたら脂を塗っておこう。
アンジェも自分のマントを魔法で乾かしている。
「魔法が使えると便利でいいですね」
サリナさんがそんな事を言って来た。
「この辺の魔法は慣れですね。練習したら使えるようになります」
「私は獣人との混血で魔法が使えないのよ。外見では普人とほぼ同じだけれどね。だから使えるのは身体強化だけ」
「でもそれなら体力は普人の数倍でしょうし、夜目も効きますよね」
「まあそうなんだけれどね。時に魔法が使える人が羨ましくなるわ」
鍛えまくれば
なんて言いたいところだけれども言えない。
一応その辺は今では禁忌扱いの知識だし。
「ただいまー」
モリさんも戻って来た。
「お疲れ様」
「モリさん、今回はどんな魔法を使ったの?」
アンジェが尋ねる。
「水属性初級魔法、
「そっか。雨の日は水属性の攻撃魔法が使いにくいけれど、そういう手もあるのね」
雨の日は水属性の攻撃魔法が使いにくい。
確かに俺もそう思っていた。
ウォーターガンは雨で勢いを削がれるし、水球もコントロールが難しくなる。
だが確かに水は出易いので
村と反対側が坂の下方向というのも、付近が森で地面が柔らかいというのも攻撃効果を上げている。
「やるな、モリさん」
「私の魔法は攻撃用としては威力無いからなあ。使えるのはこういう状況だけかな」
「でも平原で狩りをするときも、盾代わりには凄く有効じゃない。
「突進を止めさえすればアンジェが倒してくれるだろ。それが無いと意味ないし」
なるほど、女子パーティの際はこういうコンビネーションで倒していた訳か。
俺からはそういう部分は見えなかったなと思う。
ひょっとしたらミリアもその辺を考えてこういうパーティ編成にしたのだろうか。
そんな事を思った。
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