57 討伐の結末
その後昼食までの討伐はまあ、いつも通りという感じだ。
出てくる魔物も
ライバーが大盾で止めて他の皆さんで倒すというパターンで終わる。
ケイトが確実な索敵をやってくれるから効率もいい。
ただ昼食は強烈に豪華だった。
ローストビーフ風、ステーキ風、煮込み風、カルパッチョ風と、これでもかと作ってある。
「肉が多すぎて持って帰れない恐れがあるからさ。どうせなら作ってしまえと」
「いい肉を料理するのは楽しいんだな」
料理専門家と器用な奴2名が全力で作った昼食は、全員をただただ圧倒した。
「翼竜の肉を思う存分食べられるのって贅沢だよね」
「この料理ひとつひとつだけだって充分贅沢だわ」
「私も長年冒険者や教官をしていましたが、野外でここまで贅沢で美味しい食事をとるのははじめてかもしれません」
皆さんそんな事を言いながら凄い勢いで食べまくる。
そして食べた後は休憩がてら予想されうる問題についての討議開始だ。
食べ過ぎて動きたくないというのもある。
「討伐するにももう荷物が限界よね。
そう。
いつもの巨大自在袋が無く、フィンの自在袋束も無い今、運搬が最大の問題だ。
なにせ翼竜だけでかなりの大荷物となる。
更に
「やっぱり高価な翼竜関係が優先だよな」
「でも他のお肉も勿体ないよなあ。結構高く売れるしさあ」
「革や爪等腐らないものはある程度加工して外付けするしかないな」
「ライバーとケビン、ハンスとショーンは結構背負えそうだよね。フィン、背負うタイプの荷物運び何か作れる?」
「勿論ある程度は知っているけれど、僕では木属性魔法を使えないんだ。その辺はハンスかな」
「ミリアだって腕力は俺以上だろ」
「今のライバーには負けるわよ」
ここまでは獣道や川跡のような場所を歩いてきた。
だから荷車は使えない。
必然的に背負って運ぶ事になる。
「取り敢えずフィンとハンスで、モリさんとフィン、クーパーを除く男子分の背負う荷物運び道具の作成をお願い。帰りの警戒は女子でやるわ」
「でもミリアだって背負う戦力になるだろう。戦闘は俺とミリアで魔法を使えば問題ない」
ここは逃すわけにはいかない。
「私も少し持つ」
メラニーも協力してくれるようだ。
あとありがたいのが今のメラニーの台詞のおかげでミリアが持たないと言えなくなった事。
実際ミリアは
ただ身体の大きさ上、あまり大きいものを持たせるのは不適当だ。
だからかさばるのものはショーンあたりに持たせて、重いもの優先で持たせよう。
別に日ごろの恨みとかそういうものではない。
適材適所という奴だ。
「それにしても、そういった道具も現地調達で作れるものなんだな」
「翼竜討伐以上に参考にしない方がいいわよ。ハンスとフィンがおかしいだけ」
「教官としても同意です。普通はそういった道具類も持って来るものです」
確かにそうだと思うからあえて否定はしない。
だがそれもフィンの頭の中にそういった装備類の設計図が全て入っているからこそだったりする。
つまり俺よりフィンの方が遥かに特異なのだ。
その辺は後で主張しておこう。
「それじゃ午後はフィンとハンスが背負い道具作り。クーパーとショーンが解体続行。他は全員で討伐の続きね。今度はモリさん、リーダーお願い。
あと解体組と道具作り組はどっちも作業が終わったら荷造りをはじめて。それでいいわね」
結局仕切っているのがミリアなのはいつもと同じ。
「でもその前に1時間くらい休憩しない? 今の昼食美味しかったんだけれど、ちょっとお腹の中で主張していて……」
アンジェの意見にほぼ全員がうんうんと頷く。
「仕方ないわね。それじゃ少し休憩ね」
結局ミリアも同じ思いだったようだ。
そんな訳でしばし休憩した後、それぞれの作業を開始する。
◇◇◇
野営場所に到着したのは俺達が一番遅かった。
一番遠い場所が受け持ちだった為だけではない。
全員荷物を背負っていたからだ。
午後も遠くから魔獣や魔物を見つける事が出来るケイトが頑張ってしまった結果、獲物は増え続けた。
ゴブリンのような例外を除き、通常の魔獣や魔物は肉や毛皮等それなりの討伐価値がある。
獲物の中にはぐれオーク1頭なんて大物すら混じっていた。
モリさんが水属性魔法で足止めして、ライバーとアンジェ、ケビンとメラニーで倒してしまったそうだ。
「私が出る幕なんて無かったわ」
ミリアがそう言っていた。
D級冒険者が何人いてもはぐれオークなんて討伐対象ではない気もするのだが……
倒してしまった以上問題はなかったのだろう。
結果小柄なモリさんでさえ
勿論身体増強魔法はかけまくったし、ケイトも回復魔法を必要に応じてすぐに起動させている。
それでも野営地についた時には皆、ボロボロ状態。
俺なんて間違いなく
流石にもう勘弁してくれ状態だ。
「野営地中心の、臨時冒険者ギルドの馬車まで我慢よ」
ミリアも
「討伐って、現場より帰りが大変なんですね」
フィンは限界突破するまでは基本的に笑顔だ。
それは雨の日の魔力増強訓練の時からよく知っている。
他の面々は既に声さえ出ない。
それでも何とか買取場所までたどり着く。
「どうしたの、皆そんな大荷物抱えて」
昨日の訓練で一緒だったナタリエさんが声をかけてくる。
今日は臨時冒険者ギルドの窓口を担当しているようだ。
「獲物が多すぎて自在袋に入らなかったのよ。それじゃ皆、荷物下ろして。まずは高価そうな翼竜関係から行くわよ」
「よ、翼竜ですか? 聞き違いではないですよね」
ナタリエさんの反応は至極当然だと思う。
普通の冒険者学校の生徒は翼竜なんてA級の化物を討伐なんてしない。
これはひとえにシャミー教官の無茶ぶりだ。
「おいよ。これが魔石。こっちが……よいしょっと、はぎ取って畳んで乾かした革部分。肉は結構食べたのと今夜分を抜いたのでこれだけ」
ライバーが自在袋や背負子から各部位を出して並べる。
「ちょっと待ってください。ホアキン、ハイトール、マドレア手伝って! あとシャミーさん何やらせているんですか」
「実力的に問題なさそうだから任せただけです。私は手出しをしていません」
シャミー教官は平然とそう回答。
「次はショーン。続き」
「これ重かったんだな」
ショーンがはぐれオークの魔石と肉、
まわりに見物人が集まり始めた。
「まだ
「俺が背負った分だな」
やっと俺の番だ。
無茶苦茶重い背負子を持っていく。
「まず魔石、5頭分。あと毛皮と角5頭分。肉は誰の自在袋だっけか」
「俺っちとモーリ、あと」
「私ね」
メラニーが自在袋を2人分持ってきた。
「モーリはそこで伸びているわ。もう限界だったみたいね」
更に延々と魔石や肉、毛皮が出てくる。
なおモリさんが完全にダウンしたので、俺とケイトで天幕まで運んで行った。
回復担当としてケイトを残しておくのでそのうち何とかなるだろう。
なおショーンも天幕付近で夕食を作り始めた。
こいつ何気にタフだなと思う。
何気に冒険者に向いていそうだ。
馬車のところへ戻ってみるとまだ俺達のパーティの買取作業が続いていた。
やっと
でもあの手の小物、今日は何頭狩っただろうか。
確か昼前に解体したものだけで50は優に超えていたような気がするのだが。
買取作業は延々と続いている。
更にその後にはエマが採取した大量の薬草も待ち構えていたりするのだ。
これってあとどれくらい時間がかかるのだろう。
俺は他人事のようにただそれを見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます