56 シャミー教官からの御指導
魔力を確認する。間違いない。翼竜は死んでいる。
「他に来そう?」
「俺は確認出来ない」
少なくとも俺の走査出来る範囲にはそれらしい魔力は無い。
「翼竜はこれ以上は来ないようです。終わりですね」
と、いうことは……。
「翼竜討伐、成功ですね」
ほっと一息。
「なら解体ね。珍しいから間違いなく高値で買い取ってくれるわよ」
「流石に翼竜の解体はやった事が無いんだな」
そりゃ普通はそうだろう、そう思ったらだ。
「2回ほどギルドで手伝ったことがあるかな。ケビンもあるだろ」
何とモリさんとケビンは経験済みだったようだ。
「俺っちはちょいと自信は無いぜ」
「なくてもやるしかないよな。大丈夫、基本は他の大型の魔物と同じだった」
「指示してくれれば手伝うんだな」
3人で解体作業を始めた。
「ただ魔石がある頭を吹き飛ばしたから、魔石を探して欲しい。ハンス、頼める?」
「わかった」
確かに特殊矢が頭を直撃したからな。
魔力反応を探せばそれほど難しい事はない。
ミリアが雷精召喚で一気に倒したスライムの魔石探しよりよっぽど楽だ。
「あったぞ」
「あとハンスかミリア、翼竜の体全体を魔法で冷やして。冷ための水程度の温度に」
「わかったわ。それは私がやるから」
着実に解体作業が進んでいく。
「それにしても大きくて美味そうだな」
「確か竜系統のお肉って凄く美味しいんだよね。ちょっと試してみたいかも」
ライバーとアンジェはそんな話をしている。
なお他の皆さんはというと……。
「何か現実感が無いよね」
メラニーの台詞にケビン、エマ、ケイトが頷く。
「まさか現実に同じパーティが翼竜を倒すとは思わなかった」
「ですよね。出現すると街中大騒ぎになって外出禁止令が出て、B級以上の冒険者が集められたり騎士団が出たりするのが普通だと思います」
「私もそうです。こうやって目の前で見てもまだ実感がありません」
「そんなに恐れることもないし、方法さえわかっていれば何とかなるものなんです。今回は皆さんにそれを知って欲しいというのもあって、挑戦していただきました」
シャミー教官がそんな事を言う。
「勿論誰もが今すぐにというのは無理でしょう。でも今見たように、翼竜も決して手が届かない怪物という訳ではありません。
確かに今回はフィンの特殊な武器がありましたし、ハンスやミリアのような腕力も魔力もある生徒もいました。でももしそういった事が無くともおそらくは別の方法で討伐は出来たと思います。
例えばミリアなら、今回ハンスが使った特殊弓が無い状況で翼竜を倒さなければならないとしたらどうしますか。他の状況は今回と同じとします」
「ハンスなら自分を襲わせて返り討ちにしても勝てそうだけれど、私がやるとしたら毒餌作戦です。先程狩った
シャミー教官は頷いた。
「正解の一つですね。おそらくフィンも別の答を持っているでしょう。このように方法は考えればいくらでもあります。ですのでいざ危機的な状況に陥っても、そこで慌てず諦めず、考えて考え抜いて下さい。ほとんどの場合は何とかなる方法がある筈です。勿論そういった状況にならないよう、事前に下調べをじっくりする事、危ないと思ったら引き返す事も重要なのですけれどね」
「でも流石に俺では翼竜はちょっと無理だと感じます」
ケビンの台詞にメラニー、エマ、ケイトが頷く。
「今はまだそうかもしれません。でもだからといって今後も無理という訳ではありません。ハンスやミリアは少し特殊ですが、それ以外はほぼ皆さん同じ状態からスタートした筈です。この学校で訓練出来る期間はまだ1年半以上残っています。勿論人によって得意不得意はありますし目指す方向も違うでしょう。ですが自分の可能性を諦めないで下さい。という事で、ここからは指揮を元のリーダーさんにお返ししましょうか」
「そうですね。それじゃフィン、モリさんはまだ解体に時間がかかるだろうからお願いするわ」
「わかった」
フィンが頷く。
「それじゃ3人が今解体しているものが終わるまで、また少し討伐をしておこうか。ケビンが解体しているからこの辺を巡回して討伐をするという事で。メンバーはケイト、アンジェ、ケビン、メラニー、ライバー、僕、ハンスで。ケイトに索敵をして貰って、魔物や魔獣のいる方向へ進むようにするよ。隊列はライバー、アンジェ、ケビン、メラニー、ケイト、僕、ハンスで。
あとミリアとエマは別行動でこの辺の薬草や使えそうな草の探索。ただ解体班の防衛も兼ねて欲しいからあまり遠くへ行かないでね。その辺ミリアがいれば問題ないと思うけれど。
解体班は解体が終わったらそのまま昼食準備。昼食が出来る
「薬草採取をしていいんですね」
エマが張り切っている。
「エマの知識を無駄にするのは勿体ないしね」
「索敵範囲はどれ位にしましょうか」
「ここから
「わかりました。それでは最初はこちら、北北東方向
「わかった。それじゃ行こうか」
ライバーを先頭に歩き始める。
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