48 毎週夜の行事
最近は午後は街の外で討伐訓練をする事が多い。
天候がこのところずっと良く、ショーン調理の昼食の評判がいい事もその理由だ。
そうするとどうしてもある程度ゴブリンと闘う事になる。
街の回りで最も多い魔物はゴブリンだから仕方ない。
そのゴブリンを倒すと当然ゴブリン装備を回収する。
結果フィンが素材を手に入れる事にもなる訳だ。
そしていつもの情熱は装備が中途半端な新しいメンバーに向かう。
結果、1週間も経たないうちに新メンバー6人の装備は一新してしまった。
「何か非常に申し訳ない気がするんだが……」
特製の槍3本とセミプレートメイルが増えたケビンがそんな事を口にして、
「このパーティにいる以上、そういう常識は気にしない方がいいわよ。これはフィンの病気みたいなものだから、言われた通り受け取って使い勝手と感想だけ報告すればそれでいいの」
なんてミリアに言われるような状態だ。
「そうそう。僕が自分の為にやっているだけだから気にしないで。ただ何か不便な点やこうして欲しい点があったらすぐに言ってね」
「というけれど今まで以上に使いやすくて文句ないわよ」
「僕のこのナイフもなんだな。切れないで湾曲している解体用ナイフってなかなか無いんだな」
「解体用ナイフについては僕も勉強になったな。切れ味が良くない方がいいとか、湾曲している方が使いやすいとか、その辺の知識は無かったからね」
まあそんな感じで日々装備類が更新されている。
討伐にも大分慣れてきた。
今では俺やミリア、フィンやモリさんが特に指示をしなくても自然に戦闘態勢がとれるようになっている。
クーパー達用の特殊弓も食用魔獣討伐用の矢とその製造道具なんてのが追加され、牙ネズミや牙ウサギ相手でも特殊弓が使えるようになった。
その結果。
「もう野外遠征実習も問題ないわね。どっちのパーティもこのまま単独で野外実習やっても余裕だと思うわよ」
夜、毎週おなじみ
「俺もそう思う。以前の俺達のパーティと同等かそれ以上まで仕上がった気がする」
「アンジェ達前からの面々もかなり実力が上がったわよね」
「それも確かだな」
実際何回かやった
あとは経験を積むだけなのだが、今までと違うパーティメンバーが加わったことによりその辺の引き出しが一気に増えた感じだ。
「それじゃ私もレベル100を目指すわよ」
「今はいくつだ」
「まだ89よ。今回を含めてあと3回必要ね。ハンスは?」
「今は128だ。やはり100を超えると伸びにくいな」
ただ今の状態で不満を感じる事は特に無い。
だからあまり無理して上げようとしていないというのはある。
「ハンスはそれより各属性の魔法を訓練して上級にした方がいいんじゃないの。そうすれば賢者にはなれるんでしょ」
確かにその方が目指す分にはわかりやすいかもしれない。
「あとは生命属性だけだな。基本4属性はなんとか上級魔法を使えるようになった」
「ならもうすぐじゃない」
「だが生命魔法はどうも得意じゃない。苦労しそうだ」
元が獣人なので体力が自然回復しやすいし怪我もしにくく治りやすい。
そのせいかどうも生命魔法が上達しないのだ。
話をしながらいつもの湿地帯のほとりへとたどり着く。
「それじゃハンスはまず避難場所を作っておいて」
「わかった」
森の入口付近の少し広くなったところに設置型魔法陣を描いたシートを敷く。
「土属性魔法、土壁!」
出入り口の1カ所を除いて土魔法でシートを囲むように壁を作成。
フィンに作って貰った小型ドームテントを中に設置する。
テントの中に羊毛と麻布で作ったクッションシートを敷き詰め、寝袋を2つ置けば避難場所の完成だ。
湿地帯近くでは既にミリアが穴を掘り始めている。
ここには俺用、ミリア用、モリさん用、ライバー用、アンジェ用、フィン用の
場所そのものは以前から使っている場所と同じだ。
少しだけ穴を掘りやすいよう、木を伐採したりして整備をしたけれど。
俺とミリアはほぼ毎週、モリさん達は2週間に1回程度の割合で
そして今夜は俺とミリア用の新しい穴を掘り、そして以前からある方で
今ではミリアも完全に自分で
だが俺とミリアの持つ自在袋の性能がかなり違う。
俺の自在袋は容量不明な程に入るが、ミリアの自在袋はせいぜいゴブリンにして10匹分程度が限界だ。
ちなみにフィンが使っている市販品だとゴブリン2匹がやっと。
ただ奴はそんな自在袋を10袋以上束にして使用しているけれども。
以前ミリアが完全に1人で自分用の
そんな訳で今は一緒にレベリングをするようになっている。
ミリアに負けじと俺も自分用の穴を掘る。
土魔法で周囲の土を圧縮して穴をあけ、開けたら中に入って更に奥に穴をあけて……
概ね
「こっちも出来たわ。それじゃ魔物の方をお願い」
「わかった」
自在袋に収納したうちミリア用の魔物の死骸を穴へと入れる。
今回は魔石を取らない状態のゴブリン各種40匹分。
少ないとレベルがあまり上がらないし、多すぎるとレベルアップ時に身体が耐えられなくなる。
この辺のさじ加減が微妙に難しい。
基本は前回より1割増しまでだ。
そして残りの魔物の死骸は俺の方の穴へ。
こっちは同じく魔石そのままのゴブリン各種50匹分。
入れたらガンガンに魔法で内部を熱して、穴をふさぐのは以前と同じ。
だが今は上を岩で塞がず固めた土で塞いで、上に木属性魔法の緑化をかけて草を生やす。
この方が穴の在処がわかりにくくていい。
この状態でも俺やミリアなら魔力の動きで下に穴がわかるから問題無いし。
ライバーやアンジェらには
ミリア用の場所も含め偽装完了。
あとは
土属性魔法で攻撃用の穴と空気穴をあけ、水属性魔法の
この辺で充分だろう。
俺より一足先にミリアがダッシュした。
ミリアの装置の方が一回り小さい分、穴への攻撃が短時間で済んだようだ。
俺も負けじと避難場所へダッシュする。
「それじゃお先に」
ミリアが寝袋に入って目を瞑った。
俺も横の寝袋へと身体を滑らす。
それにしても何故こんな風に一緒のテントで並んで横になるなんて羽目になったのだろう。
理由はわかっている。
2人バラバラにやるより同じ日にやった方が効率がいい。
毎週夜にモリさんやアンジェにミリアを運んでもらうのが申し訳ない。
どっちもミリア側の理由だ。
俺としては微妙に納得いかない。
俺では無くライバーだったら襲いかねないぞ。
モリさんでさえ気になったと以前言っていたしな。
あと毎回俺より復活が早いからといって耳や尻尾をモフるのもやめてほしい。
獣人的に落ち着かない気分になる。
俺の方の
そろそろヤバいな。
『生命魔法、睡眠!』
不安も文句もあるけれど、とりあえず今はおやすみなさい……
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