47 拳銃、短機関銃、小銃とフィンの特異性?
クーパーは新型弓を構え、そして一瞬後ろに少し仰け反る。
「おっと何だ、今の衝撃は」
「それだけの勢いで矢が発射されたって事だよ。あの力の分が敵に当たる訳。だから小さく見えても威力はそれなりに強力な筈だよ」
「それで何故同じものなのに弓の大きさがそれぞれ違うんだ?」
「この弓は大きい方が撃ちやすいし矢も一杯入る。しかも狙いやすい。でもあまり大きいと行動の際に邪魔だよね。だからそれぞれ大きさを変えたんだ。
クーパー用は持って走り回れて、いざという時は片手でも使えるというタイプ。だから小型にした。
逆にケイト用は長くて大きい。これは基本的にパーティの後衛にいることが多いケイト用。長い方が遠くのものも狙いやすいしね。
エマ用は一人で薬草採取に出かける事を考えて中くらいにしたわけ。矢も入るしそこそこ扱いやすい。でも1人で動いた際それほど大きすぎない。持って走る事はしないけれど歩くには支障ない。そんな感じでね。ただ牙ウサギや牙ネズミにはあまり使わない方がいいかな。当たると肉が吹っ飛んじゃうから」
「つまり狩りより討伐や自衛用って事か」
「うん、そういう武器。そのかわり当たればゴブリン程度なら確実に倒せるよ。昨日ハンスが試してくれたからね」
これは昨日夜、俺がゴブリン相手に威力を試した際にわかった事だ。
つまり牙ウサギ程度の大きさならほとんど肉が残らない。
そういう意味でクーパーの言う通り自衛用という訳だ。
「つまりこれさえあれば私も薬草採取に一人で行ける訳ですね。勿論次の冒険者試験でD級に上がる必要はありますが」
「俺っちもこれがあればD級になれそうだぜ。でもこれって昇級試験の時に使っていいんだよな」
「昇級試験は自分の武器は使って良かった筈よ」
「ならこれ、次の昇級試験の時も貸してくれないか。勿論借り賃は何とかして出すからさ」
クーパー、まだフィンという人物をわかっていないな。
「今日渡した武器は全部、実習が終わってこのパーティが解散した後もそのまま使って貰うつもりだよ。ただあくまで試作品だからここをこうした方がいいという改良点はきっとあると思うんだ。もしそういう点を見つけたらすぐ教えて欲しいな。改良するから。それが条件だよ」
6人がえっ、という顔をする。
「いいのかそれで。これってかなり高価な筈だろ。本当なら」
「そうよ。この剣なんか私用に特別に作ったんだから、本来なら
「俺の槍もそうだろう。見かけは普通だが明らかにその辺の安物と違う」
「私のこの自衛用特殊弓もそうでしょう。このようなものは他で見た事すらありませんから」
皆さんから疑問の声が出る。まあそりゃそうだよな。俺達はもうフィンのその辺の考えに慣れてしまっているけれど。
「その辺心配しなくていいわ。フィンはそういう人だから。このパーティでも最初から装備を揃えていたハンスとミリア以外は全員フィンの世話になっているし。私なんか鎧から槍からもうフル装備そうよ。それに私のこの槍なんて」
料理をしていた筈のアンジェがいつの間にか来ていた。
あの熱魔法の槍をちょうど生えていた木に向けて振るう。
どう見ても直径
「……それだけその槍が丈夫だという訳か。アンジェの腕はともかくとして」
どうもケビンは誤解しているようだ。
「丈夫な訳じゃないわよ。あと私の腕云々も関係ない。この槍は使い方さえ覚えれば誰でも今くらいの事が出来る槍なの。軽く魔法を通すだけで槍の穂が鉄も溶かす位の高温になって何でも斬れるようになるって仕組み。フィンはこんなのまで作ってほいほい渡すような奴なんだからね。まあこのことはある程度秘密にしないと問題になるかもしれないけれど」
新人の皆さんが絶句している。
絶句した理由がアンジェの槍のせいなのかフィンのその辺の態度のせいなのかは不明だけれども。
さて、ついでだから気になった事を聞いておこう。
「ところでアンジェ、料理の方はどうしたんだ?」
「ショーンとモリさんから戦力外通告されたのでこっちに来たの」
……深く聞かないでおこう。
「まあそんな訳で、今日渡した武器は自由に使ってね。その代わり改良点を思いついたら必ず僕に教える事。そこまで行かなくても何か不便な点を見つけたらでもいいからね。新しい武器はそうやって改良しないと皆が買ってくれるような売り物にならないからね」
「もう充分売り物のレベルは超えていると思うけれどね」
ミリアの台詞にフィン本人以外がうんうんと頷いた。
「でも、それならさっそくだけれどお願いいいか。俺っちの特殊弓の握る部分、出来ればこのあたりは簡単に外したり交換したりできるようにして欲しいんだ。そうすれば自分で削ったりして手に合わせられるだろ。射った時の衝撃が結構あるからさ。その辺は厳密に手にあったものにしたいんだ」
早速クーパーが注文を付ける。
「確かに自分で合わせたものを作れると便利だよね。わかった。ちょっと待ってて」
早速フィンが改良を始める。
まずは自分の自在袋から鉄のインゴットを取り出した。
今まで槍の穂を固定するのと同じように中に鉄を通していた握る部分のうち、木で出来ていた部分を外し、棒状だった鉄部分を枠みたいな形に作り替える。
更に下に鉄で何か金具のようなものを作ってつけた後、俺の方を見る。
「ハンスごめん。この持ち手を半分に割って、左右からここにはめ込めるように加工してくれないかな。はめ込んだ後、この金具を上に上げれば固定できるようここに当たる部分を平らにして」
「わかった」
それくらいは簡単だ。
すぐに加工してフィンに渡す。
フィンが俺の加工した木片を先程の鉄枠部分にはめて、金具を持ち上げて止めた。
「こんな感じかな。この金具を下げれば外せるよ。この金具に当たる部分以外の外側は自由に削って大丈夫だから」
「早いな。こんなに簡単に出来る物なのか」
クーパーが驚いている。
「金属部分だけならね。木の加工はハンスに頼まないと出来ないけれど」
「もうその金属加工の魔法だけで食べていけるんじゃない?」
メラニーがもっともな意見を言う。
「どうせなら自分で考えた新しいものを作りたいじゃない。だからこうやって協力して貰っている訳なんだ。このパーティにいれば素材も手に入るしね」
「どう考えても素材代よりも製作した武器代金の方が高そうな気がします」
「大丈夫よ。本人以外は皆そう思っているから」
アンジェがそう言ったところで。
「おーい、昼食が出来たぞ」
モリさんのそんな台詞が聞こえた。
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