第2話 初めての依頼実施

5 合格発表

「……ライバー、モーリ。合格者は以上です」


 シャミー教官が読み上げた合格者は12人。

 思ったより少ない。

 勿論俺やミリアは入っているけれど。


 冒険者養成だから実技優先かと思ったらそうでもないようだ。

 たとえばモーリは実技はどれも悲惨だった筈。

 だが合格している。


 ガリウス教官が口を開く。

「冒険者の仕事は多岐にわたる。戦闘、護衛、運搬、調査、その他依頼各種。だから強ければいいという訳では無い。腕に自信が無くとも出来る仕事はいくらでもある。

 だから実技が今の段階で今ひとつでも実はかまわない。逆に筆記試験が今ひとつでもかまわない。それを鍛えるのがこの学校だからな。


 いらないのは腕っ節だけはそこらの平均程度はあるが、それ以外が駄目な者だ。冒険者家業は契約で成り立つ仕事だからな。最低限の学力が無ければ話にならん。

 それにその程度の腕で冒険者が出来る訳はない。学力が無ければどうしても体力勝負な仕事になるが、そこらの平均程度の腕ではゴブリンにすら勝てない。極端な話単独で街を出ることすら出来ない。


 だから今回合格者としたのは学力試験が最低限以上に出来た者、実技試験がそれなり以上に出来た者、もしくはどれもが出来た者だ。逆に言えば学力試験が駄目で実技試験でもそこいらにいる程度の者は落とした。


 だが試験は3日後まである。まだ定員も余裕がある。もし本気でこの学校に入りたい者がいればこれからでも遅くない。学力試験が出来る程度には努力をしろ。今年が駄目でも来年がある。1年もやれば学力的には何とかなる筈だ。自己流で戦闘技術を鍛えるよりよっぽど効果があるだろう。


 最後に、今回で初めて受験して不合格になった者には参考になる教本を配る。これをよく読んで次の試験に備えて欲しい。以上だ」


 言われてみればなるほど、もっともだ。

 それに普人の癖になかなか親切な学校だと感じる。

 今回駄目でも入手した教本を1年頑張って学習すれば見込み有りとして合格にしてくれる訳か。

 それすら出来ない者は学ぶ資格は無いと。

 考えてみればなかなか正しい判断だ。

 こういった事が出来るところが普人の恐ろしさなのだろうか。


「それでは合格者は入校資料と書類を配りますわ。私に続いて来て下さい」

 シャミー教官の後をついていって教室らしき場所へ入り指示通り前から順に座る。

 俺は最後尾を歩いていたから一番最後、2列目の2番目だ。


 席についたとほぼ同時にシャミー教官が話し始める。

「まず質問です。合格者の皆さんは本日から冒険者学校の寮に入寮する事が出来ます。寮費及び朝食、夕食はこれから卒業まで無料です。

 そこでですが本日入寮されない方、後日荷物等を搬入の上入寮される方がいましたら挙手をお願いします」


 約半数から手があがる。

 でもミリアは手をあげない。

 あとモーリもだ。

 俺も宿をとっていないし荷物も持ち歩いている物が全て。

 だから当然手をあげない。


「わかりました。入寮は6日後までとなります。それまでに入寮しない場合、合格が取り消されますのでご了承下さい。

 それではまず本日入寮されない方に書類をお配りします。入寮されない方は書類を受け取った時点で退出して結構です。本日はお疲れ様でした」

 残った人数は5人、男子3人に女子2人だ。


「さて、それでは寮について説明します。寮は男子寮と女子寮に別れています。トイレと洗面所付きの個室です。狭いですけれど。


 食事は朝と夕は別棟の食堂で出ます。時間は朝食が朝7時から8時まで。夜が夕6時から7時までです。無料ですがこの時間以外は食堂は閉鎖するので食べられません。ですので食べたい場合は最低でも終わる6半時間前10分前までに来ることをお勧めします。


 服装は自由です。ただし半裸や全裸等の格好で自室を出た場合、状況によっては退寮処分となります。退寮処分は同時に退校処分でもありますので注意して下さい。


 また男子の女子寮侵入、女子の男子寮侵入は禁止されています。発覚した場合は退寮処分となる可能性がありますので留意して下さい。異性の寮員を呼び出す正当な理由がある場合は自分の寮の受付を通して相手の寮へ連絡して下さい。


 寮には門限等はありません。依頼等を受けた場合は仕事が深夜に及ぶ事もあるでしょう。その為です。


 また授業は基本的に午前中のみです。午後は勉強をするなり依頼を受けるなり自由です。依頼についてははC級以下で日帰り可能な依頼に限りギルドと同じ物が学校の事務所にて受付可能です。掲示板もそれらの依頼については同様に貼付してあります。任務達成時の受付と支払いも事務所にて行っています。


 なお現在説明した事及びその他詳細事項についてはこれからお渡しする書類に記載してあります。最低1回は読んでおくことをお勧めします。


 なお今回の入寮者は2人、D級昇格の実力を認めた者がいます。これから渡す書類入り封筒の中に昇級証明書が入っていますので、事務所でギルドの登録証とともに提出して下さい。新しい級に書き換えられます。


 今回昇級出来なかった人も実力次第でいつでも昇級できるので諦めないで下さい。なおD級昇格の目安はゴブリン3体と遭遇して問題なく処理できる程度です。


 書類を受け取った方はこれで解散です。寮へ行くなり事務所で依頼を見るなり自由にどうぞ。


 今のうちに生活用品を買いだしに行くのもいいでしょう。この街に不案内な人用に近くのお勧めの店を一覧表にしています。わからない場合は寮でこれを読んで参考にして下さい」


 なかなか親切な学校だなと再び思う。

 それにしても昇級者は2名か。

 この中で2人というとやはり俺とミリアだろうなと思う。

 少なくとも実技は俺達がずば抜けていた筈だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る