三年後

 マサムネが領地を出て三年後。

 タックマンは、父から全てを引き継ぎサーサ公爵家の当主となった。

 妻ドリームとタックマン。仲睦まじい夫婦だが……はっきり言って、領主としてはあまり有能とは言えない。仕事は執事に任せ、未だに剣を振ってばかりなのである。

 執事のタェックは、初老の身体に鞭打って執務をこなしていた。


「……はぁ」

「タェック様。少しお休みになられては……」

「そうも言ってられん。早急に判を押さねばならぬ書類が山ほどある。はぁ……こんな時、マサムネ様がいらっしゃれば」


 メイドに愚痴をこぼす執事タェック。

 愚痴をこぼしても手は止まらない。今日届いた手紙を一つずつチェックする。

 その中に、一通の封筒があった。


「……これは」


 それは、見覚えのある字だった。

 そして、タェックは慌てて開封する。

 その手紙は───マサムネからの手紙だ。しかも、タックマンではなくタェック宛て。


「おお、マサムネ様……!! 私のことを覚えておられるとは」


 タェックは歓喜する。

 執務の疲れが一気に飛んでいった。

 手紙には、マサムネの近況や領地の状況が書かれていた……タックマンが執務をタェックに任せることをマサムネは予想していたようだ。

 領土の収穫物や流通状況、住人数、主な産業などが別紙に細かく記されていた。

 それを見て、タェックは唸る。


「まさか、これほどとは……!! わずか三年足らずで、ずいぶんと立派な町にしたものだ……いや、マサムネ様のスキル《閃き》なら可能か。戦う力はなくとも、閃きにより町を作る妙案をいくつも思いついたのだろうな……」


 タェックはしみじみとつぶやき、マサムネからの書類を確認。

 そして、数枚の羊皮紙と一緒になっていた別の手紙を見つけた。


「……なるほど。さすがマサムネ様だ」


 その手紙には、マサムネの策が記されていた。


 ◇◇◇◇◇◇


 タェックは、数枚の書類を持ってタックマンの元へ向かう。

 タックマンは、自室でドリームと一緒にお茶を飲んでいるらしい。

 部屋のドアをノックすると、タックマンがドア越しに言った。


「なんだ。何か用か?」

「いえ。至急、確認していただきたい書類が」

「んっ……ああ、お前に任せる。っおぉ……くだらんことで邪魔するな」

「申し訳ございません。ですが……」

「くどい!! いいか、執務関係は全てお前に任せる!! オレは剣を振うのが仕事だ!! 書類関係はタェック、お前に任せた!!」

「……かしこまりました。では、私の方で処理いたします」


 タェックはドア越しに一礼し、執務室に戻った。

 執務室内で、タェックはさっそく書類の記入をする。


「全く……跡継ぎは必要だが、時間を考えてくれ……まだ昼間だぞ」


 タックマンとドリームが、真っ昼間から愛しあっていたようだ。

 タェックは言われた通り、書類仕事を続けた。

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