発展する町

 マサムネたちがユーリ領地へ来て二年後。

 町は回復し、さらに発展していた。

 住居は完全に立て直り、居住者のために増やしている。流通も、街道が開通し他領土から人が来るまでになり、ユメが狩った魔獣の素材で作った武器防具、この辺りにしか自生しない希少な薬草や植物などがよく売れた。おかげで、ユリコーンの町は発展を続けている。


 さらに、亜人だけでなく人間も居住するようになった。

 最初こそ人との間に何とも言えない空気が流れたが……亜人と人間の子供が仲良く遊んでいる姿を見て、大人たちもすぐに打ち解けた。

 マサムネも、これには安心だった。

 執務室で、ユメとお茶を飲みながら話す。

 

「過去の戦争の軋轢はあるけど……それを乗り越えて仲良くしたいな」

「そうね。それとマサムネ、そろそろ式を挙げたいんだけど!」

「あー……そうか。もう二年かぁ」


 マサムネ、ユメ共に十九歳だ。

 貴族は大体が十代で結婚する。

 それに、こんな日が来るだろうと、建設関係の亜人たちに教会を建ててもらった。

 二年。そろそろ夫婦になるのもいい。


「……わかった。ユメ、式を挙げよう」

「うん!」

「それと……ちゃんと言ってなかったな」

「あ……」


 マサムネは立ち上がる。

 ユメも察したのか、日差しがよく当たる窓際に移動。

 マサムネは、日の光を浴びながらユメに言った。


「ユメ、ずっと俺に付いてきてくれてありがとう。これからも大変なことが起きるだろうし、ユメの手を借りなきゃならないこともある。それでも……俺は傍にいて欲しい」

「うん。あたしもマサムネにいっぱい迷惑かけると思う。でも……マサムネの傍にいたい」


 マサムネは、胸に手を当ててユメを見つめた。


「ユメ。愛しています……俺と結婚してください」

「はい。あたしも愛しています。あたし……ううん、私と結婚してください」

「喜んで……」

「マサムネ……」


 マサムネはユメの手を握り、そっと抱きしめる。

 二人は見つめあい、顔を近づけ……そっと重なった。

 日の光が、二人を優しく祝福してくれた。


 ◇◇◇◇◇◇


 半月後。マサムネとユメの挙式が執り行われた。

 住人に祝福され、二人は正式な夫婦となった。

 食事会は盛大に行われ、バランが二人の元へ来て言った。


「おめでとさん。へへ……二年前は食うとか言ったがよ、もうその必要はねぇな」

「バランさん……」

「認めてやる。おめーはヒトと亜人のかけ橋だ。お前がいなければ、オレたちはとうに滅んでた……礼を言うぜ、マサムネ」

「あ、俺の名前……」

「へ、これからも頼むぜ。領主様よぉ」

「……はい!」


 マサムネは、バランと強く握手した。

 そして、もっともっとユーリ領地を発展させることを誓う。

 税を収めるまで残り三年。タックマンを驚かせるくらい頑張らなければ。


「マサムネ、仕事を頑張るのもいいけど……あたしにもちゃんと構ってよね!」

「わ、わかってるよ」

「ならよし! ほら、ノゾミやトゥー、ゴロウやシロがあっちにいるわ。挨拶しに行きましょ!」

「ああ。行くか」


 マサムネは、ゴロウたちの元へ。

 ノゾミが涙を流しながらユメを祝福し、トゥーやゴロウも喜んでくれた。

 シロは「わたしも領主さまと結婚したいなー」と言っていた。ユメが「愛人枠でいいなら、あと三年後くらいに迎えてあげる!」と言っていた。

 マサムネは冗談だと思ったようだが……。


 そして、食事会が終わり、マサムネとユメは新居へ。

 今日から、二人だけの家だ。ノゾミはメイドとして仕えることが決まっているが、別宅に住んでいるのでここにはいない。

 これから始まるのは、新婚夫婦最初の儀式だ。


「さ、やるわよマサムネ」

「お前……緊張しないの?」

「覚悟はとっくに決まってるって。あんたの跡継ぎ、あたしが生むんだから」

「たく……そういう思い切りのよさ、さすがユメだな」

「ん……」


 新婚夫婦の夜は、まだ始まったばかりだ。

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