第二章黒霊集

霧裂魔都きりさきまと


黒霊名:口裂け狼

保有霊刻印:『嗅覚LV1』『瞬発LV1』『咆哮LV1』

 霧裂魔都を縄張りとする狼の黒霊。一見ただの狼のように見えるが、その名の通り口が裂けている。口を限界まで開いている姿を正面から目にすると、狼の体を持った全く異なるクリーチャーに見える。しかもその姿のまま全力疾走して来る為、何も知らない探索者は驚いてしまう事が多いようだ。数多くの霊刻印を持ち、その上集団で狩りを行う場合が殆ど。真っ当な強敵と言えるだろう。


黒霊名:亡国の白骨兵士

保有霊刻印:『剣術LV1』『耐性・死LV1』

 錆びた長剣を携えた白骨の兵士。見た目以上に俊敏で力があり、剣術まで心得ている為、骨だからと言って舐めてかかると痛い目に遭う。個体によって纏う装備品に多少の差異があるようだが、どれも粗悪品で探索者が使うにしては心許ない。装備品をドロップしたとしても、あまり長くは使用できないだろう。この種に限らず骨系黒霊の殆どは、どんなに強力な攻撃で倒しても、必ず一度は蘇生してしまう特徴がある。


黒霊名:亡国の屍兵士

保有霊刻印:『感染LV1』『剣術LV1』

 白骨兵士の中身がそのままゾンビとなったような力を持つ。基本的な性能がせる屍を上回っており、剣術まで扱うが、戦闘方法がその剣になってしまった事により、お得意の感染能力をいまいち活かし切れていない。但し正面から戦うにしても、人間の兵士と遜色のない動きをして来る為、油断は禁物である。


黒霊名:失楽の屍教団員

保有霊刻印:『感染LV1』『魔法・炎弾LV1』

 聖職者の衣服を纏ったゾンビ。この辺りのエリアでは魔法を初めて使って来る黒霊であり、派手な攻撃と相まって絶望する探索者も多い。但し、瞳を輝かせて心躍らす強者もそれなりに居るらしい。爆発する炎弾は非常に危険であり、直撃でもしたら致命傷は避けられない。逆にこの霊刻印を入手する事ができれば、探索の幅はぐっと広がるだろう。


黒霊名:彷徨う亡霊

保有霊刻印:『霊体LV1』『憑依LV1』

 ホラーテイストな幽霊。遠くから見る分には曖昧な姿をしているが、近くで見ると割とハッキリと見える。霊体である為、壁をすり抜けて来る事もあり、苦手な者はとことん駄目な系統な敵だ。憑依して対象を操作する能力も侮れない。が、霊刻印を手に入れ探索者が使う立場になると、トリッキー過ぎて扱えない事が多い。


黒霊名:稲光る紫霊

保有霊刻印:『霊体LV2』『憑依LV2』『魔法・紫電LV2』『吸収LV1』

 紫色のシーツを被った格好をしている大型の幽霊。見た目こそ彷徨う亡霊よりもチャーミングであるが、その力は比較にならないほどに強力である。ベクトとの戦いではイレーネの抵抗があり何も行動を起こさなかったが、本来は紫色の電撃魔法を扱い物理攻撃を無効化するなど、並の探索者であれば即逃走するであろう戦闘力を誇っていた。憑依した者から魔力を吸っているらしく、魔法の残弾数も豊富となっている。


黒霊名:口裂け巨狼

保有霊刻印:『嗅覚LV4』『瞬発LV4』『咆哮LV3』『穴掘LV3』『濃霧LV4』

 霧裂魔都きりさきまとを覆う霧の原因となる黒霊、そのうちの一体。口裂け狼をそのまま巨大化した姿をしている。サイズを抜かした姿こそ口裂け狼に似ているが、その戦闘力は全くの別物となっている。大黒霊レベルと言っても過言ではなく、それが巣の概念を無視して黒の空間を闊歩するのだから、探索者としては理不尽以外の何者でもない。ただ一つ救いなのは、黒霊としては比較的温厚な性格をしているところだろうか。探索者側からちょっかいを出さない限りは、向こうから襲って来る事は滅多にない。しかし空腹時はその限りではないので、運が悪いと出会い頭にパクリといかれる。



物病み溝渠ものやみこうきょ


黒霊名:死病の運搬者

保有霊刻印:『感染LV1』

 中型犬ほどの大きさもある大ネズミ。突出した攻撃手段がなく、さほど狂暴でもない為、倒すのに苦労する事は殆どないだろう。但し、その身に内包している未知の病原菌だけは注意しなくてはならない。一度感染すれば、屍化への症状は実力とは関係なく進行していくのだから。


黒霊名:死病毒の運搬者

保有霊刻印:『感染LV1』『猛毒LV1』

 見た目は死病の運搬者とそう変わらず、毛の色合いが少し異なるくらいの違いしかない。こちらのネズミが持つ病には猛毒も含まれており、ゾンビ化と同時に痛みの苦しみも味わう事になる。そのまま死んでしまった探索者は猛毒を持つ黒霊と化すとの噂もあるが、真偽は今のところ不明。


黒霊名:死病不随の運搬者

保有霊刻印:『感染LV1』『麻痺LV1』

 上記ネズミ達と同様に、見た目はそう変わらず。だが、このネズミが持つ病は考え得る中で最悪の効力を発揮する。麻痺で体が動かなくなった最中にもゾンビ化は進行する為、黒の空間から脱出して治療するという選択肢が取れなくなってしまうのだ。周囲に仲間と呼べる存在が居ない限り、麻痺の状態異常が消失した頃には、その探索者は黒霊の仲間入りを果たしている事だろう。



血塗監獄ちぬりかんごく


黒霊名:血染めの屍兵士

保有霊刻印:『感染LV2』『剣術LV2』

 血に塗れた屍兵士。能力全体が向上しており、人間で言えば熟練の兵士並みの強さを誇る。が、やはり基本戦術は剣によるものなので、感染能力は活かせていない。何気に装備の質が僅かにグレードアップしている。が、それでも標準の質から一歩劣る出来なので、ドロップして使えるかどうかは微妙なところ。そんな微妙な残念要素の多い黒霊。


黒霊名:血染めの屍教団員

保有霊刻印:『感染LV2』『魔法・炎弾LV2』

 血に塗れた聖職者のゾンビ。こちらも全ての能力が向上、それに伴い魔法の威力と規模も強力になっている。魔法だけの黒霊だと勘違いされがちだが、本気を出せば血染めの屍並みにダッシュする、所謂走る系のゾンビになる事も可能なので、魔法を使い果たした後も油断はしない方が良いだろう。


黒霊名:血染めの運搬者

保有霊刻印:『感染LV2』『猛毒LV2』

 血に塗れた大ネズミ。霊刻印の構成からすれば、死病毒の運搬者の強化版に当たる。こちらも例に漏れず、能力の全てが向上。更には狂暴性も増している為、探索者を発見すると非常に攻撃的になる。血塗監獄ちぬりかんごくから物病み溝渠ものやみこうきょに向かう抜け道を知っているらしく、そちらでも希少種として稀に出現するようだ。


黒霊名:這いずる血液

保有霊刻印:『耐性・打撃LV2』『強酸LV2』『吸収LV1』

 血のような色で染まったスライム。別世界では弱いスライムが存在するらしいが、黒檻のスライムは基本的に残忍かつ強敵である。環境に紛れて獲物を奇襲し、体から分泌される強酸で無力化、その後ゆっくりと死体を吸収するといった、ある種戦法が完成されている。拘束中に獲物が暴れたとしても、打撃耐性を備えた体がある為、大抵の場合それで事が済むのだ。ちなみに感染能力はないが、アンデッドではあるらしい。


黒霊名:欲望食らう箱

保有霊刻印:『収納LV2』

 宝箱に扮する特殊な黒霊。自身を宝箱と誤認した探索者を喰らい、口の中に犠牲者の骨を貯め込んでいる。稀にではあるが、倒す事でそれら遺品がドロップする事も。蓋の隙間から舌をはみ出したまま化けるなど、見かけによらず結構なドジっ子。その為、大抵の場合変装を見抜かれてしまうようだ。


黒霊名:魔毒の運搬者

保有霊刻印:『感染LV2』『爆毒LV3』

 杖を口に銜えた大ネズミのゾンビ。大黒霊の能力によって、血染めの運搬者と血染めの屍教団員が融合して出来上がった異質の黒霊でもある。猛毒を含んだヘドロの塊を爆発させるという、魔毒の運搬者しか持ち得ない固有の魔法を持つ。基礎となる能力も、元となる二体よりも高め。


大黒霊名:混沌招く融合体(LV2)

保有霊刻印:『強酸LV4』『吸収LV4』『招集LV3』『融合LV4』

 血塗監獄ちぬりかんごくに巣を構えるスライム型の大黒霊。秘密裏に行われていた実験の根幹を担い、突然の暴走によりとある国を壊滅させたとされるが、実際のところは不明。形状はスライムそのものなのだが、肉体を形成しているのが文字通り肉である為、非常にグロテスクな印象を受ける。ベクト曰くマジもんの肉塊。肉体から放出される強酸は骨をも溶かし、吸収能力は少しの時間で獲物の全てを取り込んでしまうほどに強力。自由自在に動かす事ができる触手も、当然のようにそれら能力を有している。更には戦況が悪化すると周囲から黒霊の大群を呼び出し、それを材料に凶悪な黒霊を作り出す、耐久値回復の為に自身の餌にする、そのまま探索者を襲わせる等々、あの手この手で探索者を追い詰めていく。ちなみに大黒霊としてのレベルが上がると、招集される黒霊がそのエリアよりもランクが上のものになり、融合で出来上がる黒霊もより凶悪になるようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る