♥(愛)はどこから来たのか?
ネコ エレクトゥス
第1話
愛はいったいどこから来たのか?
と言ってもこれから書くのはトランプの♥の誕生の話である。
古代ギリシャ・ローマの文化をさかのぼっても、また古代中国の文化をさかのぼっても♥の図案は見たことがない(もちろん日本も)。この♥の図案がどのようにして生まれ、トランプの中に組み込まれ、「I ♥ NY」などの形で僕らの生活に一般化するようになったのか。
そのヒントを意外なところで見つけた。
それがなんとイランである。
イスラム芸術を紹介する本を読んでいたら、一枚の写真に目が留まった。約十世紀ころにイランで作られたとされる皿で、皿全体がイスラム文化の物に共通するように一面文様が施されている。その皿の一番外側にイチョウの葉っぱに似た文様が上下左右に組み合わされて描かれていた。ご存じの方もいらっしゃると思うが、イスラム圏では人物画を書くことは固く禁じられていた。その代わりに植物や動物の文様で生活を彩った。その数あるヴァリエーションの一つがこのイチョウのような葉っぱの文様だったと思われる。と言っても葉っぱはただの葉っぱ、♥にはまだ距離がある。
イスラム寺院の壁の写真などをご覧になった方は、壁が計算に基づいた幾何学模様になっているのをご存じと思う。イスラム文化が熟成し洗練化されていったあの時代、例の葉っぱもその一部として洗練された形になっていった。
一方でこの時代中世から近代にかけてというのは現代的な意味での医学の先駆けになった時代でもある。医学の名門ボローニャ大学などもこの時期生まれている。当然心臓なるものがどこにあってどういう形をしているか、どんな機能をしているかというのは彼らの関心の的だったに違いない。彼らは気づいた。心臓なるものは赤くて♥の形をしている。心臓と♥が一つのものとみなされるようになっていった。そして心臓の宿る場所は同時に愛の宿る場所。愛が♥で表されるようになった。
考えてみればクローバー、♧は当然植物文様が図案化され洗練されたものだし、ダイヤ、♦も元々は文様の一部をなしていたと考えることもできる。そして♠。これも元々は葉っぱの形だったのか、それとも木そのものの形だったのか。とにかく出所は同じようなものだと思う。
こうしてトランプのマークが徐々に出来上がっていった、のではないか?
明日から世間は四連休。僕は仕事。ただこのご時世仕事があることに文句を言ってはなるまい。ただ皆さんは楽しい連休をお過ごしください。
読んでくださった方に♥を込めて。
♥(愛)はどこから来たのか? ネコ エレクトゥス @katsumikun
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
訳あり物件/ネコ エレクトゥス
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます