第3話

 クラウンのハンドルを握る陽平は、これは偶然だと頭の中で何度も反芻した。


 一睡もせず、一日の仕事を終えた時には久々の疲れにぐっすり眠れることを期待して高揚感すらあった。そう、高揚感があったのだ。ベッドに寝転がって電気を消し、二夜連続の電話が鳴り響くまでは。


 また病院、また娘が、不安を抑えて電話を取って見るとそれは会社からの電話だった。ほっとしたのは一瞬。そう、急遽入ったプレゼン資料作成の為至急会社へ来てほしいと言われるまでの一瞬。


 今このクラウンが二晩目の徹夜へ連れて行っているのだと考えれば考えるほど、昨夜の老婆の言葉が頭に蘇って来る。



 その言葉を消す様に偶然だと考えるようにした。


 そう全ては偶然。反芻を繰り返していると今夜の宿となる会社が見えた。



つづく


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