六八 神社が一番多い 八幡神~後編~

【サムライから大人気だった八幡神】

 八幡神社はとても数が多いです。その理由は、貴族の時代だった平安時代が終わり、武家が中心となる鎌倉時代になると、八幡神は戦いの神様として信仰を集めました。

 そしてサムライ達は八幡神を八幡大菩薩として、各地に神宮寺を建てて戦勝祈願しました(この時代は、神仏習合の時代なので、八幡大菩薩と呼ばれていました)


 さて、いままで毘沙門天びしゃもんてん、勝軍地蔵、飯綱権現など多くの神仏が、戦いの神様として祭られていきますが、八幡神はその中でも群を抜いて多いです。


日本にも多くのYouTuberがいますが、ダントツ登録者数の多いヒカ○ンさんのようですねw


 では、なぜ八幡神は現代のヒカキンさんのように、こんなにもサムライから支持をえていたのでしょうか?

 人気の秘密に迫りたいと思います。


【八幡神と征夷大将軍】


 八幡神がサムライから信仰を集めた理由として、あの源家みなもとけがかかわっています。

 みなもとと言っても、しずかちゃんではないですよw


 源家といえば、平安時代に登場した武士の家系でも、平家との戦いに勝ち、後の最初の幕府である鎌倉幕府を作った家です。つまり武家社会を作ったので、サムライのヒーローと言えます。

 源氏と八幡神の繋がりは、鎌倉幕府を作った源頼朝みなもとのよりとものひいひいお祖父さんにあたる、源義家みなもとよしいえです。

 頼朝と義家は、セワシ君とのび太君の関係みたいなものですねw


 義家おじいちゃんがまだ若い頃、京都の石清水八幡宮で元服(成人式みたいなものです)した時に、『八幡太郎義家』と名乗りました。

 その繋がりから、源頼朝が幕府を作る際、鎌倉の地に守り神として鶴岡八幡宮を作りました。

 鶴岡八幡宮は西岸良平さんの漫画、『かまくら物語』にも登場するので、現地に行った事がなくても、知っている人もいるのではないでしょうか?


 さて、サムライの時代を作ったヒーロー源家の守り神なので、他の武士達がその神徳にあやからない筈がありません。

 こうしてサムライの間で八幡神は人気となり、武士の時代である鎌倉以降、八幡大菩薩を祭る神宮寺があちこち建てられていきますが、戦国時代になると事情が少し変わりました。


 ここで征夷大将軍せいいたいしょうぐんが関わってきます。この征夷大将軍は元々、東北地方を征服する為に朝廷が作った軍事指揮官だったのですが、鎌倉時代から江戸時代まで日本の最高権力者となっていました。


 多くの武将が征夷大将軍を目指し、戦を繰り返したのが戦国時代なのですが実は…… 


『戦で勝てば征夷大将軍に成れる!』

 という単純な話ではなく、実は源家の血筋じゃないと征夷大将軍には成れなかったのです。

 何故なら、源家は天皇家の家系だったからなんです。

 

 つまり戦国時代は『力の時代』という単純なものではなく、『力+家柄の時代』だったんですね。

 因みに天下統一を果たした豊臣秀吉は農民出身なので、家柄は良いとはいえません。

 つまり、源家のしずかちゃんは征夷大将軍になれても、豊臣秀吉はなれなかったのですw(じゃあ豊臣秀吉はどやって、最高権力者になれたのかというお話は後程……)


 さて天下を狙う武将達は……

「ほら、ここ! ひいひいひいひいお祖父さんの妹の娘が源家に嫁いでますよ! 源家の親戚と繋がってます! だから私は源家です!」

 このように源家である事を主張し、また源家に繋がる系図をさがしていました。

 とくに家柄がよくない秀吉は、源氏に繋がる系図を探すために、躍起になっていたそうです。


 このため多くの武将が、源家の守り神である八幡神を強く信仰したのは、言うまでもありませんね。


【現代の八幡信仰】

 武将達が八幡大菩薩を祭る神宮寺を各地に作ると、サムライだけでなく庶民からも信仰を集めていく事になります。

 そして、そのご利益も庶民に合わせていき、戦勝祈願だでなく、病気治癒、治水、安産などご利益の幅が広がっていきました。


 そして明治時代の神仏分離令の影響を受けます。


明治政府「これからの時代は神道と仏教を分けるし、神宮寺とかグレーなのは認めないから。社殿を残したかったら、日本の神様である八幡神を祭ってね。」

 こんな感じで、八幡大菩薩を祭る多くの神宮寺が八幡神である応神天皇を祭る神社となりました。

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