六七 神社が一番多い 八幡神~中編~

【神託がスキャンダルに発展!?】

 八幡神は神託をよく行う事で有名です。


 有名なのは奈良の大仏を造っている時です。


奈良の大仏という、大きな仏像を作るのは国の一大事業でしたが、工事は難航しました。

 そこで聖武天皇が八幡神に完成を祈願すると……「上手くいくから大丈夫」と神託がありました。

 大仏が完成したものの、今度は表面に塗る金が足りなくなりました。


聖武天皇「どうしよー、八幡神。金がたりないよー」

八幡神「国内から金が出るから大丈夫だよ」


 すると言われたとおり、国内から金脈が発見されたのです。


 こうして八幡神は東大寺の、守護神となったのです。


 他にも反乱が起きた時に、天皇に対して八幡神は何度も助言を行います。 さらに、鎌倉時代にモンゴル帝国が攻めてきた時、神風と呼ばれる暴風雨が吹いて、モンゴル軍の船を沈めたのは有名なお話ですが、この神風を起こしたのは八幡神だといわれています。


まさに国の繁栄と平和を守る神様といえますが、八幡神の神託が政治的策略に使われ、天皇家の存続を揺るがす事件に発展した事があります。

 その中心人物になったのは、奈良時代のお坊さんでありながら、天皇の地位に近づくほど爆発的に出世した道教どうきょうという人物です。

 彼は八幡神の神託を利用し、一介のお坊さんでありながら、天皇を座を奪おうとしました。

 

 この道教が現れたのは、日本では珍しい女性の天皇である孝謙天皇こうけいてんのうの時です。


 道教自身、とても優秀なお坊さんだったので、宮殿内の仏殿に入る事が出来ました。

 そして、道教と女帝である孝謙天皇が出会う訳です。


 道教は女帝にとても気に入られました。

あまりの気に入られっぷりに、“夜がすごかったのでは? ムフフ”と、歴史に名を残すプレイボーイと脚色されるほどです。

 こうして道教は女帝から法王の位を授かり、日本のトップである天皇の地位に立つ一歩手前まで来たのです。


 そんな中、道教の弟である弓削浄人ゆげのきよひとが現れます。


浄人「女帝。私、宇佐八幡宮の神様からすげえ神託もらいましたよ!」

女帝「なになに? おしえて! おしえて!」

浄人「道教を天皇にすると、世の中が平和になるって言われたんですよ!」

女帝「マジで! じゃあ、道教を天皇にしなくちゃ!」


 そもそも道教の弟が、この話をもってきた時点で怪しいのですよね。


 こうして道教が天皇になる方向へ話が進んでいくのですが、「異議あり!!!」と逆転裁判のように待ったをかけたのが、和気清麻呂わけきよまろという人物です。

 和気清麻呂は宇佐八幡宮から別の神託を持ってきました。その内容というのが……


清麻呂「浄人の神託は嘘ですよー! 私は“皇位を継ぐのは、皇族に決まってるでしょ! 部外者はNG!”っていう神託を貰いました! はい道教ダウトー!」


 こんな感じで別の神託を持ってきて、道教の野望を打ち砕いたのです。

 この後、道教と女帝が抵抗して、他の皇族達と揉めに揉めます。

 しかし、道教にとって後ろ盾だった女帝が死亡したり、自身も島流しにあったりと地位は失墜してしまいます。


 こうして神武天皇から続いてきた天皇家の歴史に、亀裂を生じさせようとした道教は、平将門、足利尊氏にならぶ『日本三悪人』に数えられるようになり、この道教が起こした事件を『宇佐八幡宮事件』と呼ばれ

ています。


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