五六 元々は天国の神様だった!? 閻魔大王~前編~

【恐ろしい閻魔大王は天国の神様】

 閻魔様はどちらかと言うと、如来の使者である明王みょうおうに属するので、神様なのか少し微妙なので言及するか迷いました。

 しかし広く知られているし、元々はヒンドゥー教の神様なのでお話しする事にしました。


 閻魔様といえば、地獄の王であり、死者が犯した罪を裁くと言われています。

「嘘を吐くと閻魔様に舌を抜かれる」というお話は有名ですね。

 嘘を100%見抜き、犯罪者には容赦なく地獄の責め苦を与えるといいます。


 さて、そんな恐ろしいイメージが強いですが、意外にも閻魔様は元々は天国の神様だったのです。

 

 それでは、閻魔様の本当の姿に迫りたいと思います!



【シェア争いで天国が地獄になった!?】

 古代インドの神話では、閻魔様の起源はヤマという人間でした。

 人間といっても親が凄くて、お父さんは太陽の神様ヴィヴァスヴァトで、お母さんは魔法を使う神の娘サラニューという女神です。


 この二神から生まれたヤマという男性と、ヤミーという女性の人間が生まれました。そしてこの二人が、ヒンズー教における最初の人間と言われています。

 旧約聖書でいうところのアダムとイブに近いですね。


 さて、親が神様だとしてもヤマは人間なので、寿命がつきて死んでしまいました。そして、死者が進む道を初めて通ったのです。

 こうして一番最初に死者の国に辿り着いたヤマは、他に誰もいなので、必然的に死者の国の王になります。

 

 死者の国と言っても、罪人に責め苦を与えるような恐ろしい場所ではなく、美しい自然で溢れ、素敵な音楽が流れる楽園だったのです。

 まさに天国ですね。

 このように閻魔大王の起源であるヤマは天国の主であり、昔のインドでは死後、ヤマが魂を迎えに来て、天国へと導いてくれると言われていたのです。


 さて、何故ヤマの天国は、死者に対し生前の犯した罪の責め苦を与える地獄になったのでしょうか? それは強豪他社ライバルが現れたからです。


 なんと海の王ヴァルナが経営する海中の天国と、武勇の神インドラが経営する天国が現れたのです。


ヴァルナ「家の天国は宝石や黄金で出来てますよー! イルミネーションみたいで綺麗ですよー!」


インドラ「こっちの天国は自然豊かですよー! しかも可愛い精霊がいっぱいいますよー!」


死者A「どこの天国行くか迷うなー」

死者B「私、ヴァルナの所にしようかな」

死者C「キャンプ好きだからインドラの所にしようかな」

 

 こんな感じで天国のシェア争いが発生するのです。なんだかプレ○テ swit○h、Xb○xのシェア争いに似ていますね。


 さて、ライバルに差を着けるには、個性を出さなければいけません。こうして、ヤマの天国はヴァルナやインドラがしていない事をします。


 巨大な釜や、鉄板を仕入れたり、川を汚物が流れるように改造したり、恐ろしい怪物を雇ってみたり……ヤマの天国は、段々と地獄のような風景に変わっていくのです。 


 あまりにもヤマの天国は尖ってしまいましたね。こうして突き抜けたからか、ヤマはどこの天国に行くのが相応しいか、判断のを任されるようになります。


ヤマ「あんたは優しいからヴァルナの所ね! 君は頑張ったからインドラの所ね! なにぃ!? お前は人を殺しただと! なら私の所にこい!」

 こんな感じで生前の行いから、死者を裁くようになったのです。イメージ通りの閻魔大王になってきましたね。

 こうしてヤマは地獄の王となっていくのです。

 

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