五七 元々は天国の神様だった!? 閻魔大王~後編~

【地獄の王は一度死んでいる!?】

 実は閻魔様であるヤマは、一度シヴァに殺されているんです。


 昔インドに熱心にシヴァを信仰している男がいました。ちなみにシヴァはリンガ(おち○ち○)の形で信仰されています。

 とにかく熱心に信仰していたので、明けても暮れても、おち○ち○の像に向かって拝んでいたら、寿命が切れてしまいました。

 ヤマは使者を送って連れてこようとするのですが、おち○ち○にしがみついて離れないので、一旦帰ります。


使者「あいつ、おち○ち○から離れないっすよー!」

ヤマ「ならば私が行こう」


 こうして、ヤマが直々に出向く事になりました。

 

男「やだやだ! 地獄には行きたくない!」

 男はやっぱりおち○ち○から離れようとしないので、ヤマは怒って、男をおち○ち○に縄で縛りつけて無理矢理連れて行こうとしましたが、そこへシヴァが現れます。


シヴァ「俺の信者をいじめるんじゃない! あと、俺のち○こになにしてるんだー!」

 シヴァの怒りを買ったヤマは殺されてしまったのです。


 地獄の王であるヤマが死んだら大変な事が起こりました。なんと、人間が全員、不死になったのです。


「やべえ! このままだと人間が増えすぎて、世界が大変な事になっちゃうよ!」と神々は焦ります。

 こうして、神々は殺されたヤマを生き返らせたのです。


 また、ヤマは意外と優しくお人良しな所があり、夫に先立たれた妻に熱心にお願いされ、夫を生き返らせたというお話もあります。

 死者を裁く反面、ヤマは慈愛に満ちた一面もあるんですね。


 ヤマが仏教と一緒に大陸を渡って、日本へとやって来くる頃には、私たちがよく知っている地獄の王、閻魔大王となりました。


 さて日本では、閻魔大王が生きる者の世界である現世に来る時には、姿を変えると言われています。


 その姿こそが、あの有名なお地蔵さんだと言われています。



【閻魔大王の正体はお地蔵さん!?】

 お地蔵さんと言えばお寺だけでなく、道端でも祭られています。また「傘地蔵」などのおとぎ話にも登場する、とても親しまれている仏様です。

 事実、日本で一番多い仏像はお地蔵さんだと言われています。


 お地蔵さんは元々、インドのバラモン教の大地の神「クシティガルバ」でした。

 バラモン教が仏教に取り込まれ地蔵菩薩となるわけです。


 仏教では、お釈迦様が亡くなってから約56億年後に弥勒菩薩が地上に降りてくるので、その間人々を救う役割を、お地蔵さんは担っています。


 56億年ってすごいですね! 地球が出来て46億年と言われているので、星の歴史よりも長く待たないとスケジュールが空かないようです。弥勒菩薩はそうとう多忙なようですね。


 さて、お釈迦様や阿弥陀如来、観音菩薩といった有力な仏様が天から人々を救うのに対し、お地蔵さんは地上で人々を救済しています。

 また守備範囲は生者の世界である現世だけでなく、地獄に堕ちた人も救ってくれると言われています。


 つまり、管理本部で見ているタイプの上司ではなく、実際現地におもむいて活動する現場主義の監督といったところでしょうか。

 日本で一番仏像が多いのも、現場主義が故に人々から支持を得ているのかもしれません。


 閻魔大王はヤマで、お地蔵さんはクシティガルバだというのがわかりました。では、閻魔大王とお地蔵さんが、どこで繋がってくるのでしょうか。


 それは鎌倉時代の日本に遡ります。

 

 この時代に「地蔵十王経じぞうじゅうおうきょう」という経典が作られました。

 また、地蔵十王経には、三途の川や奪衣婆だつえばなどが登場し、私達現代人でも、よーく知っている死後の世界を、初めて書いた書物と言われています。

  

 閻魔大王=お地蔵さんというのは、この地蔵十王経にて言及されていて、閻魔大王は人間の死後、正しく裁くためにお地蔵さんに姿を変え、現世で人々の行いをじっと見つめていると言われています。

 

 しかし、閻魔大王は決して人に制裁を加えたい訳ではありません。

 人々に正しい道に進んでほしいからこそ、現世に出て、人々を見守っているのかもしれません。


 先程書いたように、お地蔵さんは地獄に堕ちた罪人も救おうとしています。つまり、地獄におとした閻魔大王自ら、罪人に悔い改めて、心を入れ換えて欲しいと望んでいるからこそ、お地蔵さんの姿で地獄に現れるのかもしれませんね。


 閻魔大王もお地蔵さんも、現場主義なんですね。

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