四九 川のせせらぎが神様になった 弁才天

【七福神の女神】

 弁才天は七福神唯一の女性で、よく琵琶びわを演奏している姿をしています。たまに全裸で琵琶を持っているロックな姿をしている弁財天の像がありますが、露出狂というわけではありません。

 弁財天の像は、服が着脱可能なものがあります。元祖着せ替え人形みたいなものですね。

 この服が古くなったか、汚れたかして脱がされて、そのままになっているんです(可哀想なので、新しい服を着せてあげて! と思うのは私だけでしょうか?)


 弁財天は楽器を持っているので、ご利益は音楽や芸術、芸能です。これ以外にも学業成就、財福も司っています。

 また『弁』という文字が入っているので、「弁舌」や「弁解」という意味もあるので、演説が上手くなるというご利益もあります。

 このように受験生や、主に人前に立つ人にはありがたい神様ですね。

 それでは、弁財天がどのような神様なのかお話していきます!



【川を神格化させた神様】

 弁財天の出身も大黒天と同じくインドで、元々ヒンドゥー教の神様でした。

 本名はサラスヴァティと言い、日本にやってくると神仏習合によって、宗像三女神の長女、市杵島姫神いちきしまひめのかみと同一視されました。


 サラヴァスティはインドを流れる川、サラヴァスティー川を神格化した神様と言われています。川のサラサラと流れるせせらぎのリズムが、弁舌や、音楽に繋がり、学問や芸能を司る神様になったと言われています。


 サラヴァスティは宇宙を創造した神ブラフマーが、自分の身体を材料にして造ったと言われています。

 サラヴァスティはとても美しい少女でした。自らの身体からできているにも関わらずブラフマーは恋におちてしまい、うっとりとした表情でサラヴァスティを見つめました。


 一方、サラヴァスティは……

「なにこの男、きもい! (|||´Д`)」

 ブラフマーの凝視を気持ち悪がり逃げてしまいました。

 

 しかし、目の前にブラフマーの顔が現れ、またじっと見つめてきます。

 恐ろしくなって左に逃げようとしますが、また新たな首が現れたのです。右に逃げても、後ろに逃げてもブラフマーの首が現れ、サラヴァスティを見つめてくるのです。神話というよりホラーですね……怖いお話です。

 サラヴァスティは空を飛んで逃げようとしたのですが、新たな首が現れて、結局逃げる事はできませんでした。


 こうしてサラヴァスティは観念して、ブラフマーの妻になりました。

 ブラフマーは逃げるサラスヴァティを通さないために、首を増やしたので、頭が5個になったと言われています。



【弁財天と市杵島姫神】

 弁財天(サラヴァスティ)は川の神様であり、市杵島姫神は島を神格化させた神様です。どちらも水属性の女神なので同一視されたのかもしれませんね。


 さて、日本には三大弁才天と呼ばれる神社があります。

・神奈川県の江ノ島神社

・広島県の厳島神社いつくしまじんじゃ

・滋賀県の竹生島神社ちくぶしまじんじゃ



 江ノ島神社と竹生島神社は、元々弁財天を祭るためにできた神社です。

 一方、世界遺産として有名な厳島神社は、祭神が宗像三女神でした。しかし神様と仏様が合体していく神仏習合によって、一時期主祭神が弁財天になっていた事もあります。


 しかし明治時代になると、明治政府が『神仏分離令』という法律を出します。これはどのような法律かと言うと……

「くっついている神様と仏様は分けましょうね」というものでした。

 つまり神道と仏教を、別の宗教とし離したのです。

 

 神仏分離令が出る前は仏教と神道がゴチャゴチャになっていて、仏教寺院に鳥居があったり、神社でお経を唱えたりするような状態だったのです。

 ちなみに第四章以降、この『神仏分離令』は何度も出てくる重要なキーワードになっています。


 明治政府によって行われた神仏分離によって、弁財天が祭られていた神社の多くが、宗像三女神に変更、もしくは戻されてしまいました。

 

 三大弁財天と呼ばれる神社も例外ではありませんでした。

 厳島神社は主祭神が宗像三女神に戻されます。

 竹生島神社は主祭神が市杵島姫神に変更されてしまいます。

 そしてもともと弁財天の神社だった江ノ島神社も、主祭神が宗像三女神になってしまいました。一応、江ノ島神社には弁財天お社があるのですが、メインは宗像三女神になっています。


 三大弁財天と言いつつも、主祭神が違うのは、このような経緯があるからなんですね。


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