四四 設定に矛盾だらけ!? よくわからない神様 事代主神

【タケミカヅチにあっさり屈服】 

 事代主神ことしろぬしのかみはオオクニヌシと神屋楯姫神かむやてひめのかみとの間に生まれた男神です。


 最初にお母さんのカムヤテ姫から、お話させていただきますが、「大国主神と女神達」の回で、この神様が登場しませんでした。

 なぜなら古事記では名前しか出てこず、コトシロヌシの母である事以外、詳細が一切不明だからです。



 さてコトシロヌシが登場するのは、オオクニヌシの所にタケミカヅチが攻めてきた時です。


 タケミカヅチが「アマテラス様に国を明け渡せ!」と、オオクニヌシに攻め寄ると……


「私はもう、おじいちゃんだから、息子のコトシロヌシに決めさせたいのですが、あいにく船で漁に出ていまして……」

 そう言って、オオクニヌシは判断を引き伸ばします。


 しかしタケミカヅチと一緒にやってきた、風よりも早く空を飛ぶ事が出来る船の神様、天鳥船神あめのとりふねのかみが颯爽と飛び立ち、漁をしているコトシロヌシを連れてきました。

 コトシロヌシが抵抗してくれると期待していたオオクニヌシですが、「僕もアマテラス様に国を譲ったほうがいいと思いますよ」と言います。

 

 その後、コトシロヌシは天の逆手という柏手を打ちます(魔法みたいなものだとおもってください)

 すると乗っていた船が柴垣に代わり、コトシロヌシはその中に引き込もってしまい、出てくる事はありませんでした。



【コトシロヌシは、親子丼が食べれない!?】

 タケミカヅチに攻められた重要な局面で、真っ先にコトシロヌシの名前が出てきたという事は、オオクニヌシから信頼されていた事がわかります。

 日本神話上でも海で漁をしていたから、そのご利益は大漁祈願と海上安全ですので、漁師さんにはとてもありがたい神様ですね。

 さて、オオクニヌシからも一目置かれていたコトシロヌシですが、意外な事にニワトリが苦手と言われています。


 なぜコトシロヌシはニワトリが苦手なのでしょうか? それではコトシロヌシ伝説が残る島根県美保関町の伝承をお話します。

 コトシロヌシは夜になると、船で海を渡り、美保津姫神みほつめひめのかみという女神の家に通っていました。


 要するに夜這いをして、ズッコンバッコンしていたんですね。


 しかしある夜、朝を告げるニワトリが間違えて夜中に鳴いてしまいました。

 ズッコンバッコンした後の賢者タイムで頭がボーっとしていたのか、ニワトリの声を聞いたコトシロヌシは朝がきたと勘違いしました。

 そして、ピロートークもままならぬまま、慌ててミホツ姫の家を出ていきます。しかし、焦っていたのでかいを岸に置き忘れたのです。

 しかたなく、手で船を漕いでいたら、サメに手を噛まれてしまいました。


 なんとか岸に辿り着く事ができたコトシロヌシの耳に、今度はちゃんと朝を告げるニワトリの鳴き声が聞こえたのです。


 慌てて帰る事になるわ、船を手で漕ぐはめになるわ、サメに手を噛まれるわ、散々な目にあったコトシロヌシはニワトリに怒り、それ以来ニワトリは忌み嫌うべき鳥としたのです。


 それ以来、美保関町の人は鶏肉や玉子を食べる事をやめ、ニワトリを飼う事もしなくなったと言われています。



【設定がグチャグチャなコトシロヌシ】

 さて、コトシロヌシが神武天皇の妻になる、伊須気余理姫神いすけよりひめのかみの父と言われています。つまり神武天皇の義父という事になります。


 さて、このお話を聞いて「あれれー、おかしいぞー」と某名探偵のコ○ン君みたいな事を思った人もいると思います。


 イスケヨリ姫が産まれたきっかけは、オオモノヌシが矢に変身して、う○こしている セヤダタラ姫のアソコに突き刺さったからと、以前お話しました。

 神武天皇の義父はオオモノヌシなんじゃないの? とツッコミをいれる人もいるかもしれません。


 ところがどっこい日本神話において、セヤダタラ姫のアソコにINして子供つくったのはオオモノヌシでありコトシロヌシでもある! という事になっています。


 じゃあ、どっちが本当のお父さんなの!? はっきりしてください! と思うかもしれませんが、何が正しいのか白黒はっきりさせるのは、神話において無理なので、断言する事はできません。


 また、白黒はっきりしない神様として恵比寿様もあげられます。

 

 恵比寿様といえば七福神の一員であり、商売繁盛の神様として現代でも人気のある神様です。

 実はこの恵比寿様の正体はコトシロヌシとされていますが、ややこしい事にイザナミが産んだ最初の子供である蛭子神ひるこしんが、恵比寿様の正体であるという説もあります。


 このようにコトシロヌシは色々な神様と混同しいるので、お話する側としても非常に困る神様と言えます。

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