四三 大国主神の子供達 下照姫神と阿遅志貴高日子根神

【お葬式で暴れた阿遅志貴高日子根神】

 夫を亡くしたシタテル姫は未亡人になっていましました。

 しかし、いつまでも泣いているわけにはいきません。夫のアメワカヒコのお葬式をしました。

 参列者の中には兄の阿遅志貴高日子根神あぢすきたかひこねのかみもいました。妹の夫がなくなったので、お葬式に出席したのでしょう。


 滞りなく進んでいたお葬式にトラブルが起こるのはこの後です。


 アメワカヒコの父である天津国玉神あまつくにたまのかみも、最後のお別れをする為に地上に降りてきたのですが、タカヒコネとアメワカヒコはそっくりだったので「アメワカヒコが生き返った! やったー!」と喜びました。


 アメワカヒコが生きていたなら、タカヒコネと一緒に「幽体離脱ー」というギャグで、皆を笑わせる事が出来るかもしれませんねw


 しかし、ここは葬式会場。しかも死んだアメワカヒコに間違われたタカヒコネは不機嫌になっていき、「死人と間違えるんじゃない! 縁起が悪いだろ! このバカチンがー!!」と言って、ぶちぎれてしまいます。


 そして天津国玉神を蹴り飛ばし、葬儀場を壊してしまったのです。

 義弟の父を殴るなんてすごいですね。


 こうして、葬式会場をメチャクチャにしてタカヒコネは飛び出していきました。


 唖然とする参列者達の前に、シタテル姫が出てます。


そして……

『天なるや 弟たなばたの

 うながせる 玉のみすまる

 みすまるに 穴玉はや

 三谷 二渡らす

阿遅志貴 高日子根の神』


 という歌を読みました。


 歌の内容をざっくり解説すると、兄の事を紹介しつつ、彼はすごい神様なんだよという内容です。

シタテル姫はタカヒコネをフォローしようとしたんですね。


【和歌と不動産の神様】

 夫のお葬式をメチャクチャにしたのにも関わらず、タカヒコネの歌を読んだ下照姫神は、兄の事を慕っていたのかもしれません。


 さて、この兄をフォローする為に読んだ歌が、和歌の始まりと言われています。


 あの万葉集などに代表される和歌の始まりが、「葬式をメチャクチャにした兄をフォローするため」というのは、少々驚きですが、この事からシタテル姫の神格は和歌の祖神とされています。


 一方、タカヒコネですが、お葬式をメチャクチャにしたので、荒々しい雷神といわれています。

 そして、不動産業の守護神にもなっていますが、なぜ不動産の神様なのか、よくわかりません。現職の神主さんと話す機会があったので質問したんですが、わかりませんでした。 


 シタテル姫とタカヒコネは、それぞれ全国の神社で祭られていますが、今回は二神同時祭られている奈良県の高鴨神社のお話をします。


 高鴨神社は全国に300社ほどある賀茂神社かもじんじゃの総本宮です。

 この神社のすごいところはなんといっても、歴史が古い事です。なんと紀元前には祭祀が行われていて、縄文時代の終わりかた弥生時代には、すでに神殿が造られていたそうなので、前回お話した大神神社と同じく最古の神社なのではないか? と言われています。


 また、高鴨神社は桜の名所なので、訪れるなら春に行きたいですね。


 ちなみに大神神社と高鴨神社、どっちが最古の神社なのか、はっきりさせる事は出来ません。なぜなら、古代の日本には文字が存在せず、ちゃんとした記録が残っていないからです。

 あの邪馬台国ですら、中国の歴史書に記録があって、存在が判明したくらいですから。

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