三六 大国主神と女達 後編 沼河姫神

【美しい翡翠の女神】

 地上の支配者となったオオクニヌシは、高志国こしのくに(現代の福井から新潟一帯)に、沼河姫神ぬまかわひめのかみという美しい女神がいるという事で、口説きに行く事にしました。


 オオクニヌシがヌマカワヒメの家の前で求愛のポエムを読むと「一晩待ってください」という答えが返ってきました。

 

 そして次の夜、二神は合体します。


 こうしてオオクニヌシとヌマカワヒメとの間に生まれたのが、建御名方神たけみなかたのかみです。

 そう、国譲りの際、地上の明け渡しを要求しにきたタケミカヅチに、最後まで抵抗した神様ですね。

 

 タケミナカタが祭られているのは、長野県諏訪市にある諏訪大社です。この神社は上社と下社に別れており、タケミナカタは上社に祭られています。

 そして、下社ではタケミナカタの妻である、八坂姫神やさかひめのかみと共にヌマカワヒメも祭られています。

 

 現代社会で例えると、嫁と姑が同居しているようなものでしょうか。



【悲劇のヒロイン ヌマカワヒメ】

 新潟県にあるJR糸魚川駅を降りると、子供の建御名方神と一緒にいるヌマカワヒメの像があます。そんな彼女の像は、左手に勾玉を持った姿をしています。

 

 糸魚川市は翡翠の産地です。

 翡翠は勾玉の材料の一つにもなっていますので、ヌマカワヒメの正体は翡翠の玉を身につけたこの地方の女王だったのでは? という説があります。


 古事記でのヌマカワヒメの記述は少なく、日本書紀にはそもそもヌマカワヒメの記述はありません。

 オオクニヌシと結ばれてからどうなったのか、というのは両書ではわかりません。

 

 しかし、糸魚川には、ヌマカワヒメの伝承がたくさん残されています。


 ヌマカワヒメはオオクニヌシと結ばれた後、出雲の宮殿に移住したのですが、不仲になって帰郷してしまいます(スセリビがいじめたのかもしれませんね)

 そして糸魚川市の稚児ヶ池の畔に身を隠したのですが、そこへオオクニヌシの軍がヌマカワヒメを連れ戻しにきました。

 それを嘆いた稚児ヶ池に入水自殺したという、悲しい伝説があります。


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