三五 大国主神と女達 中編 須世理姫神

【大国主神の正妻 須世理姫神すせりびめのかみ

 オオクニヌシとヤカミヒメとの間を兎が繋ぎ、ほのぼのラブストーリーが続くかと思いきや、須世理姫神すせりびめのかみという女神が登場した事によって、メロドラマのようなドロドロした方向にいきます。


 さてスセリビメとは、どんな神様なのでしょうか?


 スセリビメはスサノオの娘です。

 つまり稲荷神であるウカノミタマや、宗形三女神むなかたさんじょしんの妹にあたる神様といえます。


 オオクニヌシとスセリビメと出会ったのは、彼が八十祖神から命を狙われ逃げている時なので、まだ名前がオオナムチの頃です。


 オオナムチはかくまってもらうために、スサノオの宮殿を訪ねるのですが、そこで出会ったのがスセリビメです。 


 オオナムチとスセリビメは強烈に引かれ合いました。

 そしてオオナムチはヤカミヒメがいるにも関わらず、スセリビメと出会って即合体します。

 

 大変なのはこの後でした。

 オオナムチはスサノオから様々な無理難題を押し付けられたのです。

 しかし、スサノオが見ていない所で、スセリビメがオオナムチをサポートしていたので、無理難題を解決する事が出来たのです。


 あまりにも無理難題を吹っ掛けてくるので、命の危険を感じたオオナムチは「一緒に逃げよう!」と、スセリビメにお願いします。

 愛の逃避行を提案したんですね。


 身も心も、オオナムチに奪われていたスセリビメは、父であるスサノオの宮殿から逃げ出したのです。

 この時、オオナムチは娘だけじゃなく、剣、弓、琴も一緒に盗んでいきました。ルパン三世もビックリの泥棒っぷりですw


 しかし、逃げ出したのがスサノオにバレてしまいました。


 オオナムチとスセリビメを追いかけるスサノオでしたが、彼はもう相当歳をとっており、若いオオナムチには勝てず、その差は距離はなかなか縮まりません。

 追いかけている内に気が変わったのか、スサノオは無理難題を吹っ掛けた事が申し訳なくなってきて、「俺が悪かったー!」と言って謝ります。


 そうして剣、弓、琴だけでなく、娘と『大国主神おおくにぬしのかみ』という名前を授けたのです。


 さて、以上の事からスセリビメの性質がわかってきます。

 ヤマタノオロチを倒した英雄、スサノオの娘で気が強く、愛の逃避行を実現させる情熱的な女神です。

 そしてオオクニヌシは、スセリビメの助力があったからこそ地上最初の支配者として、出世できたのです。


 オオクニヌシと苦楽を乗り越えたからこそ、いきなり現れたヤカミヒメの存在が気に入らず、いじめてしまったのかもしれません。


 

【夫婦和合の神】

 地上の支配者になった後、オオクニヌシは女神達たくさん浮気します。

 

 因みにオオクニヌシは、スサノオの娘で宗形三女神の田心姫神たごりひめのかみとも関係を持っています。

 なんと嫁の姉に手を出しているんですね。


 こんな感じで夫が浮気しまくってるので、スセリビメの嫉妬に狂うのもわかります。

 そんなオオクニヌシはスセリビメの嫉妬に困り出ていこうとした事もありましたが、しかしスセリビメに泣きながら引きとめられ、彼女の元に留まりました。


 そして、アマテラスが地上の明け渡しを要求し、オオクニヌシの地位が脅かされた事もありましたが、スセリビメはずっと寄り添い続けたのです。


 何度も離婚の危機に直面しながらも、オオクニヌシと別れる事がなかったので、スセリビメは夫婦和合のご利益があると言われています。

 結婚がゴールではなく、数々の試練を乗り越えてこそ夫婦は深い絆で結ばれるといいますが、オオクニヌシとスセリビメの物語はそれを表しているのかもしれません。 


 最終的に夫の元を去ったヤカミヒメとは違い、スセリビメは出雲大社だけでなく、オオクニヌシと共に祭られている場合が多いです。


 ちなみになんですが、不思議な事にスセリビメとの間には、子供はいません。

 オオクニヌシの子供の全てスセリビメ以外となっています。

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