十七 浦島太郎の元ネタ!? 山幸彦神と海幸彦神

【初代天皇のおじいちゃん】

 前回お話したニニギとコノハノサクヤの間に生まれた、兄の火照命ほおでりのみことが海の幸を司る海幸彦神うみさちびこのかみとなりました。

 そして三男の火遠理命ほおりのみことが、山の幸を司る山幸彦神やまさちびこのかみとなります。

 ちなみに次男は記述が残っていないため、どうなったのかわかりません。


 さて、三男であるヤマサチビコが豊玉姫神とよたまひめかみという女神と結婚して、その子供が建鵜葺草葺不合命うがやふきあえずのみことです。

 名前がややこしいくて覚えにくいですが、ウガヤフキアエズが初代天皇である神武天皇の父親にあたる神様です。

 つまり、ヤマサチビコとトヨタマヒメは神武天皇のおじいちゃん、おばあちゃんという訳ですね。


 また、ヤマサチビコはあの有名なおとぎ話『浦島太郎』の元ネタだと言われています。


 ではヤマサチビコがどんな神様なのか、お話していきたいと思います。



【浦島太郎伝説の元ネタ!?】

 ウミサチビコは漁が得意で、釣り竿を持って海に行き、魚を釣っていました。

 そして弟のヤマサチビコは狩りが得意で、弓を持って山に行き、動物の狩猟をしていました。

 

 毎日同じ事の繰り返しに飽きたヤマサチビコは、兄に「お互いの道具を交換しようじゃないか!」と提案します。

 ウミサチビコは乗り気じゃありませんでしたが、ヤマサチビコがしつこくせがむので、仕方なく道具を交換します。


 いつも大剣を使っているハンターが、たまにガンランスを使っても上手くモンスターを倒せないのと同じように、慣れない道具では獲物を捕まえる事は出来ませんでした。

 しかも、ヤマサチビコは兄の釣り針をなくしてしまいます。ただの釣り針ならともかく、ウミサチビコの釣り針は霊力を持つ、特殊な物だったのです。


 ウミサチビコは激怒し「釣り針をさがしてこい ( `Д´)/コラー」と言います。

 

 ヤマサチビコは取り合えず探しに来てみたものの、海は広くて大きいので、釣り針を見付ける事はできず、途方に暮れていると、

「どうしたんじゃ?」

 おじいさんの神様がヤマサチビコに声をかけてきました。おじいさんは塩椎神しおつちのかみという、海流を司る神様です。

 ヤマサチビコが事情を話すと「海の神様である綿津見神わたつみのかみならわかるかもしれないのぉ」と言われ、すぐにヤマサチビコはワタツミの所にいきます。


 そしてヤマサチビコは海の宮殿で、ワタツミの娘であるトヨタマヒメと出会い、二神は恋に落ちました。

 さらにヤマサチビコはワタツミから、熱烈な歓迎を受けました。

 こうしてトヨタマヒメと結婚したヤマサチビコは、毎日おせ○くすに精を出し、ワタツミはもてなしてくれるので、釣り針の事を忘れてずっと宮殿で暮らしていたのです。


 三年経ったある日、ヤマサチビコは兄の釣り針の事を急に思いだしました。ワタツミに相談すると、海中の魚を集めてくれました。

 そして魚達を調べていくと、鯛の口にウミサチビコの釣り針があるのを見つけました。


 地上に帰ろうとするヤマサチビコにワタツミは「釣り針を返す時、兄に背を向けて“ふさぎ針、せっかち針、貧乏針、愚か針”と言いなさい。そして兄から離れた所に田んぼを作りなさい」とアドバイスします。

 そして「兄が襲ってきたら、これでこらしめてやりなさい」と言って、水を操る事の出来る潮満珠しおみつたまと、潮干珠しおふるたまをもらいました。


 亀を助けた訳じゃありませんが、浦島太郎の物語とヤマサチビコの神話は、『海の宮殿へいく』、『美しい美女と出会う』、『もてなされて、楽しい日々を過ごす』、『帰りに物を持たされる』といった似ているところが多いですね。

 この事から、浦島太郎のお話は、ヤマサチビコをモデルにしたのではないかと言われています。

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