八、マルチな神様と戦うヒロイン!? 住吉三神

【航海と武運を司るマルチな神様!?】

 底筒男命そこつつのおのみこと中筒男命なかつつのおのみこと表筒男命うわつつのおのみことの三神の総称して住吉三神すみよしさんしんといいます。

 そのご利益は海上の交通安全ですが、武運を司る軍神でもあります。


 大阪にある住吉三神を祭る住吉大社では、この三神と共に第十四第天皇、中哀天皇ちゅうあいてんのうの妻である神功皇后じんぐうこうごうを祭っています。


 何故、住吉三神と共に、神功皇后も祭られているのか見ていきましょう。


 まずは、住吉三神の誕生からお話します。

 住吉三神はアマテラスが誕生する直前、イザナギから生まれたので、アマテラスの兄に当たる神様といえます。

 

 イザナギは死んでしまった最愛の妻である伊邪那美神いざなみのかみを死者の世界である、黄泉の国へと迎に行きます。

 しかし黄泉の国にいたイザナミはゾンビのように醜い姿をしていました。

 それに驚いたイザナギは、最愛の妻を置いて逃げ帰ります。


 そして死者の国で受けてしまった汚れを清める為、海へと入り御祓みそぎの儀式を行う事にしました。

 さてこの時、イザナギが顔を洗うとアマテラス、ツキヨミ、スサノオが生まれたという神話は有名です。

 

 しかしアマテラス達が生まれる直前、海の底で体を洗った時に底筒男神が、海の中間で体を洗った時に中筒男神が、そして海の水面で体を洗った時に表筒男神が、それぞれ生まれたとされています。


 このように海で生まれた神様なので、航海の安全を司る神様なのはわかりますが、何故武運を司る軍神なのかでしょうか?



【戦うヒロイン神功皇后と住吉三神】

 住吉三神と最も縁が深いのは、神功皇后といえます。先にも述べた通り、住吉大社では住吉三神と共に神功皇后も祭られているくらい縁があります。

  

 それでは神功皇后と住吉三神の関係を見ていきましょう!


 草薙の剣を使用した事で有名な日本武命やまとたけるのみことの息子が、中哀天皇となり、その奥さんが神功皇后です。

 

 さて当時の日本では九州を支配していた熊襲一族くまそいちぞくが、大和朝廷に歯向かっていました。


 そこで中哀天皇と神功皇后は夫婦で熊襲討伐の為、九州へと向かいました。

 その途中、神功皇后は「熊襲じゃなくて、海を渡った朝鮮半島に新羅って言う金銀財宝が眠る国があるから、そっちに行きなさい」という神の言葉を聞きました。


 勿論、神功皇后は中哀天皇に神の言葉を報告するのですが……

「高い所から眺めてみても、陸地なんて見えないよ。海を渡っても何もないでしょ。それよりも、今は熊襲を倒すのが優先だよ」と言って、神の言葉をシカトしました。

 すると、神の怒りに触れたのか中哀天皇はあっさり死亡してしまいました。


 こうして神功皇后は、亡き天皇の代わりに表舞台に立つ事になり、元祖戦うヒロインになったのです。


 神功皇后は再度神の言葉を受けます。

「言うの忘れてたけど、新羅は貴女のお腹の中にいる子供が治める事になってるから。これは天照大御神が決めた事だから絶対だよ。因みにこのメッセージを送ってる僕達の名前は住吉三神ね」


 こうして神功皇后は住吉三神の言葉に従い、熊襲討伐を中断します。

 そして妊娠しているのにも関わらず海を渡り、朝鮮半島へ進軍する事にしました。


 彼女の航海は順風満帆そのものでした。

 魚達が船を背負い、追い風にも恵まれ難なく新羅へ辿り着きます。

 航海の神様の力を十分に発揮していますね!


 神功皇后が新羅の国に攻め込むと、国王はビビってしまい、あっさり屈服してしまいます。

 また新羅の周辺国だった高句麗と百済も、神功皇后にビビってしまい大和朝廷に従うようになりました。

 これが有名な『三韓討伐』です。


 神功皇后は月延石、鎮懐石という石をお腹に巻いて、出産をコントロールしました(出産をコントロールするなんて、神話の時代ってすごいですね)。

 こうして、日本に戻ってから後の応神天皇となる子供を産んだとされています。


 このように住吉三神は神功皇后の旅路とお産、そして三韓討伐を助けた事から、航海安全、武運、子宝、安産といったマルチなご利益があると言われています。


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