Family ぼくら

 「お、母さん・・・?」

 「さぁ、おいで、愛しい子」

 ぼくは飛び込むようにその胸に抱きついた。ぼくが腕を伸ばしても手が届かないくらい大きな背中が、体が、腕がぼくのことをきつく抱きしめる。そこにいつものような柔らかさや温かみはなかった。それでも、ぼくはそんなハグが好きだと思った。押し付けられるように胸に顔を近づけると、お母さんの鼓動を感じるから。お母さんの熱い感情を感じるから。どんな暗闇からも守ってくれる、そんな安心感があるから。

 ぼくはお母さんの胸で静かに泣いた。

 そして、ありがとうって小さく口にした。

 ぼくのお母さんでいてくれて、ありがとう。


 

 それからぼくとお母さんは追いついたお父さんと一緒に、ジョーンズの両親に謝りにいった。

 ジョーンズは自分の言った冗談が過ぎたといって、あまり気にした様子ではなかった。ジョーンズの両親はそれを軽く咎めるだけだったけど、ぼくにはそれがジョーンズの噓だってことが分かっていた。でもそれを正そうなんて思いはしなかった。

 それはいくらつぶしても生まれてくるハエを相手にするようなものだって、よくお父さんとお母さんから教えられていたから。ぼくもついカッとなって取り乱してごめん、と謝ってそれまでにした。

 ジョーンズの両親と別れてから急に、これからのことを考えて不安になった。

 もしかしたらジョーンズに目をつけられてまたあんな目を向けられるかもしれない。お母さんのことを馬鹿にされたとき、ぼくはどんな反応を示すんだろう。

 ぼくはそんな不安を紛らわせるようにお母さんとお父さんの手を握った。

 それを握り返す手は、どちらも大きくて温かかった。

 ぼくはもう一度その両手を握り直し、引っ張っていった。

 そこにはぼくら、三人の長いかげがひとつの塊のように伸びていた。

 


 

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