依頼とお祈り
「え!? 何が? なんで? どの神様?」
神と言われて心当たりは1つしかない。昼間の教会だ。でもたった一回お祈りしただけなのに? それに能力神って誰?
能力…スキル? アビリティ? いや! ひょっとしてステータスか!?
メムリキア様がステータス担当の神様で、お祈りしたから祝福してくれたのだろうか? それとも一度でもお祈りすれば祝福してくれるのだろうか?? そんな話は聞いたことがないが。
それにしても…
「“能力神”はセンスないと思うけどなぁ」
もっとこう……『魔法神』とか『鍛冶神』とかみたいなそれっぽさがあってもいいんじゃなかろうか。
いや、神様のすることに文句付けるべきじゃないな。
しかし、祝福か、なにかご利益があるのだろうか? これまで具体的な効果を持った称号はなかった。説明とかないのだろうか…ステータスの称号を意識してみると…お! 説明が出た!
能力神の祝福
能力神イビッドレイムの祝福
あれー!? メムリキア様じゃなかったー?
ステータスを管理しているのはイビッドレイム様というのかな。もしかしてお祈りする時にわからなかったから、親切に教えてくれたとか? まさかね。
称号に特別な効果がある訳でもなさそうだが……
しかし、神父様でも知らない神様って事になるのだろうか。うかつにしゃべらない方がいい気がする。唯一神教の教義にケチつけてもろくな事にならないだろう。
最悪、教団上層部だけが知っている秘密だったり……そこまではしないと思うが、はっきりするまではだまっておこう。
とりあえず
仮説①
能力神=ステータス神だとすれば、主神がメムリキア様で能力神がイビッドレイム様
仮説②
能力神≠ステータス神で、ステータス神がメムリキア様、イビッドレイム様が野良神様
仮説③
能力神=主神=イビッドレイム様で、ステータス神がメムリキア様。
まぁ、根拠はないけど正直①の可能性が高いと思う。②は全然関係ないところで神様の祝福をもらってくるなんてまず無いだろうから。③は能力神=主神ってのが収まりが悪いけど、全能神って言い方もあるからなぁ。
今度の光曜日にでも神父様に祝福について聞いてみるかな。
なお。この世界、少なくとも人間世界では、光曜日は休日ではない。休日は祭りか祝い事か祭事だけだ。ただし、闇曜日の神殿の参拝と、光曜日の教会の礼拝はたとえ奴隷であろうとも権利として許されている。両方はダメみたいだ。
考え事で悶々としてなかなか寝付けなかったが、翌日からギルドの依頼に取り掛かることにした。
まずはギルドの掲示板で依頼を確認する。ターゲットはコボルトとアンデッドだ。
常設依頼はこうだ。
コボルト討伐 Rank: F・E 常設
コボルト5匹:銀貨2枚
討伐証明:右手首
下級アンデッド討伐 Rank: F・E 常設
ゾンビ・スケルトン・グール・ゴーストの討伐
下級アンデッド5匹:銀貨4枚
討伐証明:魔石
一見アンデッドの方が報酬が高いが、討伐証明が魔石なので実入りはコボルトの方がいい。
村の依頼もある。
下級アンデッド討伐 Rank: F
ゾンビ・スケルトン・グール・ゴーストの討伐
下級アンデッド5匹:銀貨5枚
魔石は買取り。
15匹で依頼達成。30匹を上限とする
マッス村 村長 エイヒキ
15匹駆除すれば銀貨15枚の収入になって、常設依頼より割がいい。ただし、依頼件数としては1件だ。
Fランク依頼になっているのは、そのほうが依頼料が安いからだろう。
正直かなり微妙な依頼だ。
コボルトの依頼が常設しかないのは、朝一で誰かが持っていったからだと思う。
マッス村の依頼を剥がして受付に向かった。
「すいません、ちょっと聞きたいのだけど」
「はい、なんでしょう?」
「マッス村というのはここからどれくらいの距離だろう?」
依頼票と冒険者プレートを差し出した。
「馬車で丸一日、歩きなら2日見たほうがいいですね。ただ、この依頼は討伐数が多いのでパーティ推奨となってまして」
うわっそりゃ誰も受けないわ。
「馬車の便はありそう?」
「マッス村の人が今日の朝市に店を出してるはずなので、明日の朝なら便乗できると思いますよ」
う~ん、屍でも拾いに行きますか。
「受けます、ソロですが」
「そうですか、止めはしませんが、入念な準備をお願いしますね。ポーション、聖水を多めに持っていくのはもちろん麻痺ポーションも持って行ってください」
受付嬢はこちらの装備を確認して、依頼書にハンコを押した。
「今の時間なら市場でマッス村のジフトンさんがいるはずです」
「忠告感謝します」
むむ!Fランクの依頼までそこまで詳細に記憶してるとは! この受付嬢…できる
受付嬢には滅多に関心を向けないが、こういう人は覚えておかないと。なるべく目を付けられないように。
水色の長い髪の胸の大きな美人さんを観察しておく。この人の列には並ばないようにしよう。
「あの…まだ何か?」
「いえ、充分です。ありがとうございました」
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依頼受付を済ませて冒険者を見送ると、隣の席のリーシャが小声で話しかけてくる。
「あれは惚れたね、間違いない」
もうっ無駄話が好きなんだから。
「そんなことないわよ、確かに私の村の依頼だから詳しく説明したけど、それぐらいで惚れるわけないじゃないの」
「い~や、あの目つきは間違いない! 次もキレットの列に並ぶね、ポックルを賭けたっていいよ」
リーシャが大好きなポックルを賭けるなんて本気かしら?
「低ランクのおじさんとは言え、それだけもてるのはうらやましいわよ。どうしてキレットなの? この胸? 悪いのはこの胸なの? えい! えいっ!」
リーシャが胸をつっついてきた。
「あ、ちょっと、やめてよ、やめてったら!」
実際、重いし、男の人にやらしい目で見られるし、いいこと無いのよね。っていうかなんで誰も止めないの! あ、みんなやらしい目してる、これだめなヤツだ。
「この悪い胸を懲らしめてやろうじゃないの。グフフフ」
「キャー! ここにもおじさんがー! やめてー!」
「君たちうるさいぞ!!」
ほら、ギルドマスターに怒られちゃったじゃないの。
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ギルドを出ると、予定を変更して教会へ向かった。聖水を追加するためだ。後で薬屋にも寄らないと。
「神父様、今日も聖水をいただきに参りました」
「それは…熱心な事ですね。お祈りは覚えていますか?」
「すいません、今日も先唱をお願いしたいのですが、その前に一つだけ神様について聞いてもいいですか?」
「なんでしょう? 答えられることなら」
「メムリキア様の祝福をいただくにはどうしたらいいのでしょうか?」
「そうですね…祝福はメムリキア様に信仰を認めていただいた証です。あなたの信仰と敬虔な行いがメムリキア様に認められれば、その時はあなたのステータスに“創造神の祝福”が表示されるでしょう。今はまだ及ばない多くの祈りと、メムリキア様を支える行いが必要となりますが、その時がくれば私たちはあなたに“洗礼”を授けるでしょう」
創造神の祝福か、確定だな。そして祝福は洗礼の条件と。
「ありがたいお言葉、心に刻み精進いたします」
「まずは今日の祈りからです。メムリキア様への感謝を忘れないように」
「「大いなるメムリキア様の与えて下さる日と大地と月、森と海と大地の恵みと糧とステータス。日々の祈りに御世の恒久たれとの願いと恩恵への感謝を捧げます」」
(メムリキア様、ハーレムも無双もできませんが、おかげさまでなんとかやっています。イビッドレイム様にも恩恵を与るステータスを管理していただいている感謝と、先日いただいた祝福のお礼を申し上げます。あと、初対面の時に名乗ってほしかったです)
自分なりの感謝を込めた。伝わるといいのだが。
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