冒険者ギルド
「そろそろいい時間だ、冒険者ギルドへ行こう」
ゲインが言うので、冒険者ギルドへ向かうと、ギルド内は閑散としており2つある受付カウンターに受付がいるのは1つの窓口だけだった。
周囲を見渡すと、待合席のようなところに数人の冒険者がいて、さらにその奥は酒場へとつながっているようだ。そして入り口の近くにある紙が貼ってある板が依頼だろうか。
「な、昼のギルドなんてこんなもんよ」
ゲインと共に受付へ向かう。受付はやっぱり若い綺麗なお姉さんだった。
「冒険者ギルドへようこそ。どういったご用件ですか?」
「コイツの冒険者登録を頼む」
「1人だけですね? かしこまりました。過去ギルドへ登録されたことはありますか?」
多分、年齢がおっさんなので聞かれたのだろう。
「いや、初登録だ」
「虚偽の申告だと後ほどの魔力登録で判明しますが大丈夫ですね?」
お、ここで便利魔道具登場か。確認されたのでうなずく。
「ギルドの規約は確認されますか?」
予想はつくが、ここは聞いておこう。
「ええ、お願いします」
「ではこちらに規約が記載されております。ご不明な点があればご質問ください」
自分で読むのか! それは予想外だな。
えーと、 なになに……
『当ギルドでは登録いただいた冒険者さまへ依頼を斡旋しています。依頼はランクによりS/A/B/C/D/E/F/Gに分かれており、冒険者ランクも同様にS~Gに分かれています。昇格/降格についてはギルド規定の基準及び評価に順じます。Gランク冒険者が降格した場合除名となります』
『また、個人のランクの他にもパーティ毎にもランクがSS/S/A/B/C/D/E/Fに分かれており、単独では達成困難な依頼の斡旋を同様に行なっています。登録時のパーティランクはメンバーの平均ランクを基準とします。昇格/降格についてはギルド規定の基準及び評価に順じます』
『Eランク以上の冒険者は所在するギルドの緊急依頼に参加する義務があります。参加できない冒険者はギルドに報告しなければならず、事情により罰則が発生します』
『依頼料には税金とギルド手数料が含まれており、報酬は減額後の金額となります。依頼失敗時には違約金が発生しますので、依頼の選択にはご注意ください』
長いな、ふぅ
『依頼失敗の内容もしくは失敗の隠蔽、逃走、報告をしなかった場合はギルドより罰金・降格・除名・警告・注意などの処分をする事があります。』
『犯罪を犯した場合、ギルドより降格・除名・警告・注意などの処分をする事があります』
『罰金の支払いが不足した場合、借金奴隷にて返済していただく場合があります』
『ギルドの依頼により発生した死亡/怪我/破損/遺失など冒険者の損害について冒険者ギルドは保証いたしません』
『冒険者同士の争いにギルドは関与しませんが、冒険者の犯罪行為については各国に基づく処分をいたします』
「すいません、質問いいですか?」
「はい、どうぞ」
「ランクの昇格基準ってどんなものですか?」
「各ランク毎に依頼の達成数/達成内容と指定項目の試験が設定されています。Gランクなら依頼達成数:100件/指定達成内容:なし/試験:なしですね」
「100ですか! 多いですね!」
「Gランクは見習い冒険者と言えます。100件の依頼はまじめにやれば半年、ゆっくりでも1年あれば達成できます。その間が見習い期間と考えてください。なお、各ランク毎に定められた期間に依頼を達成しないと降格になり降格期間と呼んでいますが、Gランクは降格期間は1ヶ月となり、その間依頼を達成しないと除名となります」
「自分のランク以外の依頼は受けられないのですか?」
「自分のランクより下の依頼は受注可能です。ただし、その場合依頼達成回数にはカウントされません。パーティで通常依頼を受注する場合、パーティランクの1つ上のランクまで受注可能です」
「こう…強かったらランクを上げてスタートみたいな制度はないのですか?」
受付嬢はこちらの装備をちらっと見て。
「よく勘違いするかたがいますが、それは傭兵ギルドの制度ですね。冒険者ランクは依頼達成能力のランクです。強さは基準の一部にしかすぎませんので、自信があるのであればそちらに行かれてはどうでしょう?」
ぶん投げやがった。歓迎されてないなぁ。しかし、見誤ったな! 戦闘力に自信なんて全くない!
「強くなくてもランクをあげられると?」
「魔獣退治を含めて依頼を達成するための “力”があれば、ですが。あ、昇級試験には戦闘試験もありますよ」
「なるほど……冒険者登録で大丈夫です。あと、この各国に基づく処分ってのはどんな場合ですか?」
傭兵は戦争に駆り出されるのが怖い。
「冒険者同士の争いに干渉しないのと、犯罪を見逃すのは違うってことです。例えば街中での戦闘は禁止されてます。喧嘩程度であれば見逃しますが、武器、魔法を街中で争いに使われればギルドとしても取り締まります。スキルもですよ」
「決闘はどうですか?」
「両者合意による決闘には、求められればギルド職員が立ち会ったりもします。決闘禁止の国では取り締まりですね」
「わかりました、登録をお願いします」
「登録料は銀貨3枚になります」
言われた通り銀貨を手渡した。
「では、こちらの項目を確認、記入してサインしてください。所属するパーティがあればパーティ名をなければ空欄で。これから結成するなら別途手続きが必要ですが?」
「いえ、パーティには所属しません」
ふむふむ、パーティの他には性別に、本拠地も記入するのか 。
「村の家を引き払って、家のない故郷へ向かうのですが、本拠地はどうしたらいいですか?」
「もし死亡した場合に通知をしたい場所を選んでください。無ければ空欄でもいいですよ」
ほほぅ空欄でもいいと…あとは、死んでも文句は言いません、ギルドの規定に従います、か。アジフ、とサインして、所属パーティは空欄で。書いているあいだに受付嬢が道具の準備をしている。書き終わった紙を提出する。
なにやら模様の入った石板(?)の上に書いた紙が置かれ、紙の上に金属が置かれた。
「鉄プレートの上に血を一滴たらして、石板の両端に両手を置いてください」
ナイフの先で指先をちくっと刺し、金属の上に血をたらす。指先を出された布で拭い、石板の両端に手を置くと石板の模様が光りはじめた。
「おお…!」
紙がじりじりと燃えていき、それと合わせるように金属板に焼き付けられるように文字が走る。
どれどれ?
アジフ Rank:G
性別:男
パーティ:
本拠地: 所属:ポワルソ
「魔力パターンが登録されましたので、本人以外の使用はできません。街を移動する際はギルドにて更新しますので、出発ギルドと到着ギルドに報告してください。最低でも到着ギルドには報告しないと依頼が受理されません。Gランクの再発行には銀貨10枚が必要ですので、紛失にはご注意ください」
「わかりました。ありがとうございます」
「これで今日からあなたは冒険者となります。あなたに良い冒険がありますように」
プレートを受け取ると定型のあいさつなのだろう、受付嬢が頭を下げた。
すると、登録が終わるのを待っていたように、いや、実際待っていたのだろう。背後にザッと気配がした。
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