プティ・フール・サレ

 缶に入った焼き菓子は、なぜこうも魅力的なのか。

 缶に入ったお菓子の代表格はクッキーだと私は思う。バターがたっぷり使われたもの、ザラメでコーティングされたもの、アーモンドが乗せられたもの……。いずれも宝石のようで、甘くて、とろけそうで、もったいないから思わずちびちび食べちゃったりする。食べ終わった後の缶も、細かい裁縫道具をしまうのに重宝する。一缶で二度も三度も楽しめる、素敵なお菓子だ。


 先日自宅の茶請けにしようとお菓子のお取り寄せサイトを見ていたら、素敵なデザインの缶が目に留まった。

 白い縦長の缶で、ブラウンの英字がプリントされている。どことなくシャビーな印象があるデザインだった。とても素敵だったので詳細を見ると、とある鎌倉の洋菓子店で作られているプティ・フール・サレというものらしい。


 見た目がクッキーのようだったのでてっきり甘いものかと思ったら、チーズやドライトマト、ハーブを使用したしょっぱい系の味だという。ワインのおつまみとして食べる人もいるそうで、「へええ、そういうものがあるのか」と思わず声を上げてしまった。


 さて、たまたま近所の駅ビルに行ったところ、そのプティ・フール・サレが販売されていることに気が付いた。買うしかない。だって今日は大きな仕事を完遂した日だから(※これは本当の話で、突発的に発生した厄介事をぶった切った直後だった)。もうひとつある甘い系のお菓子詰め合わせも欲しかったが、一度お菓子を買うと食べきるのに時間がかかるので、こちらはまた後日ということにした。


 さて、肝心のお味である。

 一口齧ると、ふわりと口いっぱいに漂うドライトマトとハーブの香り。びっくりした。鼻を抜ける香りがあまりにフレッシュだったからだ。他にも、ゴーダチーズとレッドチェダーチーズ、それからバジル、全部で四種類の詰め合わせだ。順に一枚ずつ食べた。バジルはもともと好きなハーブだが、こういう料理にも合うのかと感心してしまった。チーズの味も濃厚で、ガツンとした重さが最高。


 ああ、お酒が欲しい。お酒ほとんど飲めないけど。疲れが吹き飛ぶような美味しさに、ものすごく満足してその日は就寝したのだった。 

 たった四枚の焼き菓子でここまで人を幸せにしてしまうだなんて、ほんと、素晴らしい……。お腹が満足しているので、非常によく眠れた。まさかの快眠効果である。

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