カレー
以前カレーにまつわる短編小説を書いたことがあるが(『カレーの王子様! 俺とお前とキーマカレー』参照)、思わずそういう文章をしたためてしまうくらいには、カレーが好きである。
上記短編小説を書いたとき、たまたまキーマカレー作りにハマっていたこともあり、「そうだカレーの話を書こう」と思うのはごく自然のことだったような気がする。凝り性なのだ。一度ハマってしまったら、見るのが嫌になるくらい追及しないと気が済まない性質なのだ。
とはいえ、どれだけ追及しても嫌にならないのがカレーのすごいところである。
思い起こせば、初めて自分のお小遣いで購入したラノベも「主人公の女の子がカレーの材料を集める話」だったし、初めて料理した時のメニューもカレーだったし、実家を離れ一人暮らしした時の初日のメニューもカレーだった。人生のターニングポイントの中にカレーが根付いている時点で、嫌いにはならないだろうなと思う。たとえ飽きたとしても、それは一瞬のこと。少し間を置けばまた食べたくなる。そういう意味では、カレーという存在はどこまでも憎めないやつなのだ。
カレーといえば、忘れられない出来事がある。
東日本大震災が発生したとき、私は仙台市内に住んでいた。自宅の壁に穴は開いたが、ほかの地域に比べたら被害はそれほど大きくなく、三日くらいで電気が復活したので非常にありがたかったことを覚えている。正直、涙が出た。
電気も復活したわけだし、さて、とそこでようやくテレビをつけるわけだが、正直驚いた。震災の報道と某コマーシャルしか放送されていないのである。ライフラインに関する情報を得る必要があったので、消すわけにもいかない。だが、つらい内容の報道を連日目の当たりにするということは、思いのほか消耗するのである。食べ物も飲み物もいつでも手に入るわけではない。普通に生活ができることは決してあたりまえのことではないのだ。そう思わざるを得ない状況だった。
そんなとき、とあるテレビ番組が数日ぶりにバラエティ番組を放送した。その内容が、カレーだった。有名店の紹介などではなく、シンプルにおうちカレーの話を一時間。いつも通りの明るい雰囲気で始まり、そのままの雰囲気で終わった。
その一時間が、どんなに楽しかっただろう。張り詰めていた心がふっとほぐれていくようで、沈んだ気持ちが少し明るくなったような気がしたのだ。
あのときの気持ちは忘れられない。
やっぱり好きだなぁ、カレー。
見ているだけでも、うれしい気持ちになる素敵な食べ物だと思う。
さて、最近私はまたカレー作りにハマっている。ブーム再来というやつである。
今回はキーマカレーではなく、無水カレー。サバの缶詰とトマトソースで作る、包丁すら使わない簡単レシピだが、これがまた元気の出る味で心がうきうきするのだ。
今後もことあるごとにカレーを作るだろう。数々の思い出に寄り添い、ひとつひとつを思い出しながら、お腹を満たすに違いない。
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