第2話 聖女にされてしまった時の話
目の前では、砕け落ちる青い惑星が魔法陣に吸い込まれていく様子が再生されていた。
「私の管理していた君たちの星は、異世界からの召喚術の影響で崩壊してエネルギーとなってしまった。人も獣も植物も大地も水ももれなく。ただ、私も黙ってそのエネルギーを譲渡する気はない。私の持てるすべての力を使って崩壊の中から救い上げることのできた君たち四人に、この力をすべて託そう」
どこか懐かしさを覚えるような教室の一室。
少年が一人、少女が二人、そしてオッサンが一人、の四人だけが救われたのだという、光の玉。
「君たちは、この力をもって相手先の世界を滅ぼしてもいいし、異世界の住人として平凡に生きてもいい。すべてを君たちの意思にまかせよう」
色々と諦めて流されるまま生きてきた私と違って、少年少女はひどく悲しんだ。将来に夢も希望も抱いていただろう若者たちだ。その絶望は想像するのも難しい。
少女たちはお互いに抱き合ってワンワンと泣いていたが、少年は一人唇をかみしめて耐えていた。
「男だって、悲しいときは泣いていいんだよ。たった四人だけ残った仲間なんだ。はずかしがらなくていい」
どこかで聞いたようなセリフではあるが、ぽんと肩をたたいてやると、少年はみるみる涙をこぼしはじめ私にすがって泣き喚いた。同性であるのが残念ではあるが、そっと抱きしめてあやすように背中をたたいてやる。
申し訳ない。
このまま感情を持て余してゆがんでしまい、与えられた強大な力を使って異世界で大暴れされても困るという私情からの行為だ。
無くなってしまったものは仕方がない。どうせ異世界にいくしかないのならば、平凡に暮らしたいのだ。
号泣する少年に釣られて近寄ってきた少女たちもまとめて抱きしめるという役得にありつくことしばし、ようやく落ち着きを取り戻した少年少女たちをうながして、チートの分配にうつる。
「私は余ったやつでいいから、君たちでバランスよく取るといい」
もらえるチートは、ジョブの形で与えられるらしい。戦闘用のものと、日常生活で役に立つものをあわせて全部で八個。それぞれひとつづつでもいいし、全部を一人に集約してもいいらしい。
そして共通能力として全員がもらえる、言語習得、鑑定、無限収納だ。
少年少女たちは、それぞれひとつづつ、一人二個取ることにしたようだ。
金髪少年マサキが、剣と魔法のバランス型戦闘職である勇者と、革や金属、宝石などを使って指輪やネックレスなど装飾品や服などをつくれる服飾師。
黒髪ポニーの少女ツバキが、あらゆる戦闘術のエキスパートである武聖と、金属系統の武器や防具をつくれる鍛冶師。
茶髪の少女ミナが、あらゆる攻撃魔法のエキスパートである賢者と、薬品や魔法道具をつくれる錬金術師。
そして私が残りの、動物やら魔物やらあらゆるモノを手なずけられる調教師と……
「ちょっと、私のこれナニ?」
「「「聖女ですが、なにか?」」」
おいぃぃぃぃぃ!?
聖女ですが、なにか? たはら @Mtahara
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