第6話 教科書 小中学校編
教科書についてもう少し細かく語ろう(愚痴ろう)と思う。
日本では義務教育として「小学校」「中学校」がある。
この小中学校への教科書の供給は、なかなかに手間がかかるのだ。
小中学校の教科書供給は、無償と有償にわかれる。
小学校は新年度の開始時と、夏休み明けの2回。
中学校は新年度開始時の1回
この時に供給されるのが無償教科書だ。
まず秋ごろ、書店等の取次供給所は、問屋である特約供給所からの指示で、受け持ちの各学校へ「在籍調査表」の提出を求める。
これは読んで字のごとく『その学校に生徒が何人在籍しているのか』を調査する書類だ。
これにより次年度の供給予定数がわかるため、前年度の支払い額や価格と合わせて計算し、出た金額が次年度の契約金額となる。
ちなみにウチでは、毎年2千万円程度が契約時の金額となっている。
ただし、これは少なく見積もっているので、実際はもう少し多くなるのが通例だ。
この時点でおおよその供給数は出ているので、契約締結後には、次第に印刷された次年度用の教科書が倉庫に入荷し始める。
年をまたぎ、翌年2月下旬ごろには、倉庫は山積みになった教科書でいっぱいの状態だ。
なにしろ数千人分の教科書が全教科届くのである。
国語、書写、算数、理科、社会、図工、音楽、生活、英語、道徳、地図帳。
小学校だけでもざっと書き出すだけでこれだけの教科数がある。
英語の様に5,6年生だけの教科もあるが、それでも数千人分ともなれば、かなりの量になるのは想像できると思う。
昔、倉庫番というゲームがあったが、リアルであんな感じになる。
運送会社さんが届けてくれる教科書は、基本的に倉庫の入り口付近にどさっと置かれるだけなので、その後で俺たちが各教科ごと、各学年ごとに仕分け、所定の場所に積み上げていく。
これがまた重労働なのだ。
教科書は他の本と比べても紙質がいいからか重い。
体感だけど、ひと箱20kgはあると思う。
先日など、一気にそれが300箱ほど届いて大変だった。
ウチの倉庫も古いので、最近は少し怖い。
自分たちは真っ直ぐ積んでいるはずなのに、次第に重さで倉庫の床が歪み、最終的にはピサの斜塔の様に斜めになっていたりする。
こうして倉庫に教科書が揃う頃。
学校とのやり取りも佳境に入り、それぞれの学校への供給数が決まってくる。
その際に使用されるのが「納入指示書」という書類だ。
これは学校が生徒数を調べて記入するもので、これをもとに取次供給所である書店が、学校へ教科書を納入する。
これは厳密に管理される書類で、これに書かれた数がそのまま生徒数を意味する。
最終的には教育委員会が集計し、国の経理へ回すようだが、その辺はこちらでは分からないので割愛する。
こうして納入数が決まったら、各学校へ納入するわけだが、ここでもう一つ面倒が起きる。
それは、学校の納入場所問題だ。
一応こちらからもお願いするのだが、納入場所の選定は基本的に学校がする。
普通の運送会社の様に、玄関で渡しておしまい。
という風にはいかないのが、教科書の納入なのだ。
こちらのお願いを聞いてくれて、比較的楽な場所を納入場所にしてくれる学校が多い中、重い箱を持って延々と歩かされたり、上階まで何往復もさせられる学校もあるのだ。
これは地域によるのかもしれないが、学校の職員室は2階にある事が多い。
そのせいか、先生がすぐ行ける2階を納入場所に指定する学校が多々あるように感じる。
酷い時は「各学年の階に振り分けて」とか「4階まで」とか言われる事もあった。
それは流石に時間的な制約もあって断ったが、正直「ふさけんな!」と思った。
なので、万が一これを読んでいる学校関係者の方がいたら、教科書の納入場所は1階で、出来ればすぐ側まで車で入れる様な場所を設定してください。
よろしくお願いします。
ちょっと話がそれてしまった。
納入後、数の確認などを経て、学校側から押印された「納入指示書」を受け取れば、その学校への納入は終わりだ。
これを、受け持ちの学校全てが終わるまで繰り返す。
そういえばすこし前に、「学校を9月開始にしよう!」なんて動きがあったが、教科書関係者としては「冗談じゃない!」と言いたい。
学校を9月始まりにするという事は、教科書の納入は真夏の8月にするわけで、炎天下にこんな重労働をした日には、熱中症不可避で最悪死んでしまう。
学校9月開始は断固反対です!
ちなみに、小学校は真夏に「後期教科書」といって、下巻を届ける業務がある。
下巻は教科が少ないので春とは段違いの労働量だけど、それでも炎天下では汗だくになる。
ほんと、マジで、9月はやめて。
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