第3話:書店の経費について1

 前回、ウチのひと月の利益は60万円と言ったが、アレは正確ではない。

 何故なら、会社を経営する上で無視できないもの――『経費』が計算に入っていないからだ。

 経理上では色々と難しい用語があるみたいだけど、僕はその辺には全く詳しくないし、話の趣旨はそこじゃないので省く。

 ここでは単純に『利益=売上-経費』という感じで考えてくれればいい。


 ざっと思いつく経費を書いてみよう。

「仕入」「人件費」「光熱費」「雑費」……こんなところか。

 簡単に考えてもこの4つは経費として常に掛かってくる。


「仕入」は単純だ。

 書店は販売業なので、売るためには商品を仕入れなければならない。

 その為の費用だ。

 本は再販制度によって、全ての商品ではないにしろ返品ができるので、気を抜くと過剰に仕入れがちになるので注意が必要だ。


「人件費」は一旦飛ばして、次は「光熱費」。

 これは店内で使用している「電気料金」「水道料金」の事だ。

 夏や冬にはエアコンを使用して電気代がかさみ、従業員やお客さんがトイレを使えば水道料金がかかる。

 そのため、季節によって結構差が出るのが特徴かも。


「雑費」はいわばその他の経費だ。

 店内掲示物を貼るためのテープやペンなどの消耗品、ウチは外商もやっているので、車検などの車の維持費や、ガソリン代なんてのもある。

 金額の大小は様々で、一つずつ挙げていたらきりがない程多岐にわたる。


 最後は「人件費」だ。

 まぁ読んで字の如く、人に掛かる経費であり、「従業員の給料」と同義だ。

 ちなみに我が県では「最低賃金」は「時給1000円」と定められている。

 つまり、ある人が1時間働いたら、その仕事の内容の如何に関わらず、


 最低賃金はお役所が決めるので、こちらではどうにもできない。

 どんなに業績が悪く利益が低くとも、勝手に決められた最低賃金は支払う義務がある。

 もし君が最低賃金以下しか給料を貰っていいないなら、会社に申し出よう。

 それでも改善されないならば、そこはブラック企業だ。

 労基署など、出るところに出た方がいい。


 閑話休題。


 ウチでは常に従業員は最低2人以上確保している。

 ウチは教科書を扱っている関係もあり、意外と電話が多い。

 レジで並ぶお客さんに対応しながら、電話も同時に対応するというのは、正直無理だからだ。


 ちなみに営業時間は朝10時から夜8時まで。

(以前はもっと遅くまで営業していたが、来客が7時を過ぎるとガクッと減る為、営業時間を短縮した)

 それを僕を含め5人で回している。


 ここでまた計算してみよう。

 僕ともう一人は社員なので、1000円×8時間×2人×25日=40万円。

 残りの3人はパート・アルバイトなので時間は僕らよりも少なくて、1000円×4時間×3人×25日=30万円。

 合わせると合計70万円。


 お気づきだろうか?

 ウチの利益……60万円じゃなかったっけ?

 最低賃金でこれって……やばくない?



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