第2話:書店の利益について1

「今月も支払いが厳しいなぁ……」


 自販機で買ったコーヒーを飲みながら、送られてきた請求書に目を通す。

 先程銀行で記帳してきた預金通帳の残高も、今後を考えると頭痛のタネだ。

 ぶっちゃけカネが無い。


「やっぱり売り上げが上がらないのが厳しいよなぁ」


 書店の利益の第一は、当然『仕入れた本の売上』に他ならない。

 しかし、我が店舗ではここがまずネックなのだ。

 それはなぜか。

 第一に『本は利益が非常に少ない』というのがある。


 書店では、仕入に際して『掛率』という言葉をよく使うのだけど、皆さんは知っているだろうか?

 簡単に言えば『商品の売価に対して仕入れ値は何パーセントか』を表す数値だ。


 ウチが扱っている本以外の商品――例えば文房具なんかは、比較的掛率がいい。

 メーカー希望小売価格の約50%くらいで仕入れることが出来る。

 つまり『50円で仕入れて100円で売る』みたいな感じだ。

 当然掛率は商品によって違うので、もっと高いのもあれば安いものもあるけど。


 それに対して本は、往々にして掛率が悪い(高い)。

 その掛率は僕の体感で約80%!

(ざっと見た伝票上では掛率の欄に「773」とか「800」とか書かれている。その意味は「7割7分3厘」「8割0分0厘」という事だ)


 つまり『定価1000円の本を800円で仕入れている』という意味だ。

 単純計算で『1000円の本が1冊売れれば、お店の儲けが200円』となるわけだ。

 ここで1日100冊、本が売れたとしよう。

(ウチじゃまずないが……)

 1日の売り上げが、1000円×100冊で10万円。

 ひと月30日として、毎月の売り上げが300万円。

 仕入れ値は定価の80%なので、利益は売上の20%……つまり60万円となる。


 これだけ見ると、そこそこ利益があるように見えるかもしれない。

 だけど、これは良く見積もった計算だ。

 ウチみたいな地方小都市のさらに郊外にある小型店舗じゃあ1日に10万円も売れない……。

 言ってて悲しくなってきた……はぁ(ため息)。

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