とある書店員の憂鬱

片瀬京一

第一章:書店業務の基礎知識

第1話:とある書店員の独白

 僕の職場は、とある地方都市にある小さな書店だ。

 学生時代にアルバイトとして入り、卒業後そのまま就職させて貰った。

 色々面倒な事も多いけど、仕事としては気に入っている。


 ただ問題がないわけじゃあない。

 うちのお店は繁華街からは外れているので、一日を通してもあまりお客さんは来ない。

 だから一日の売上も大したことはないし、正直なところ、人件費や光熱費を考えれば赤字経営だ。


 そんな状態でもどうにかやっていけているのは、資金援助をしてくれる親会社の存在と、市内に存在する大部分の小学校、中学校、高等学校に教科書を収めているからだ。

 そして何より、社長の鶴の一声によるところが大きい。


 社長曰く。

「教科書取扱店というのはある種のステータスであり、社会貢献的な意味合いもあるから続けて行きたい」

 という事らしい。


 僕としては職を失わずに済んでいるので、とてもありがたい話ではあるんだけど、そこで働く社員としては赤字を看過できるはずも無く、事あるごとに社長や上司に発破をかけられながら日々を過ごしている。


 だけど、どうにもこうにも、そこには厳しい現実が待っていた。


 この物語は、日々を書店員として過ごす僕の、半ば愚痴の様なものだけれど、業界の裏話みたいなものとして、軽い気持ちで読んで貰えたら嬉しいと思う次第です。

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