死ね

トリックが思い浮かばない。俺は腹立ち紛れにペンを回す。死体が不敵な笑みでにやりと笑う。死ねよ。もう死んでる。死体が見つかるシーンは何度も書いて、その度に悦に入っている。いや、トリックと結び付かなければこいつは死ねない。

犯人に恨まれるだけあってムカつく男だ。俺の手で殺してしまいたい。

雷が直撃してほしい、窓から落ちてほしい、不摂生で不治の病に冒されてほしい。

そう俺が願っても、死体は生き生きとしている。キャラクターが勝手に動く、といっても死ぬはずの被害者が生きていてどうする。

こいつは人の小説を盗作して、大作家先生と崇められ、巨額の富を築いたのだ。許せるはずがない。

死ね。死んでしまえ。本棚から文鎮が落ちて。パソコンが爆発して。書き物に没頭するあまり食うのを忘れた飢餓で。

あああ、それでも俺は腹が減るのだ。泣きながら萎れたパンを囓る。

……パンには毒が入っていてくれ。

けれども、パンすら食べない死体は死体にならず、俺は黒カビを口に入れ腹を下した。

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