初めのファン

私は放送中アニメ「あの日の夕暮れ」、通称「あの夕」のアランとビリーのカップリングにハマり、

他のジャンル者の見よう見真似でBL二次小説を細々と投稿サイトに上げていた。

いいねやコメントなどの反応は無かったが、閲覧数のカウントが増えているごとに一喜し、

全くカウントが上がらない日に一憂した。

「あの夕」の中で「アラビリ」はそんなに人気があるカップリングでもなかったので、私が作品を増やすことによって呼び水にならないかな?

とも思った。

ある日、通知が来ていた。

私は飛び上がる胸を抑えてそれを確認した。

「アランめちゃくちゃスパダリで好みです!」

ああ……。短いコメントが、こんなに尊いなんて。

スパダリ。スーパーダーリン。うん、いいよね。分かってくれるね、この人。

コメントをくれた彼女(テンション的に女性だと思う)は、私が新作を上げる度に、アランを誉めるコメントをくれた。

よほど私の書くアランを気に入ってくれたらしい。

彼女が拡散してくれたのか、いいねや評価も複数もらえるようになっていって、それが普通になった。

しかし、アニメのアランはビリーを裏切り、敵の配下となった。

「悪堕ちか……」

私は自作をどう展開させるか悩んだ。

敵同士は敵同士で美味しい。しかし、私が誉められてきたのはアランのスパダリっぷりなのだ。

ビリーが献身でアランを救う展開も考えた、しかしスパダリのアランは弱みを見せてはいけないとも思った。

結果、私はアランを敵組織の下っ端、チャーリーと絡ませることにした。

悪堕ち後のアランがチャーリーに向ける眼差しは、ビリーに向けるものによく似ている、と思ったからだ。

カップリング「アラチャリ」での初投稿、コメントも評価もいくら待っても来なかった。

私は自分の血の気が引くのを感じた。自分でも引くほど感じた。

何作「アラチャリ」を投稿しても来なかった。閲覧数も一桁が珍しくなくなった。

これじゃ駄目だ、と思って最初に頭に浮かんだのはいつもコメントをくれていたあの人。

いつもの人は「アラビリ」で検索してるから私の新作に気付かなかっただけだ。

だから、私は「アラチャリ」作品をすべて「アラビリ」の小説に書き換えてタグを付け替えた。

これで、気付いてくれる、これで……。

「アラビリ」で検索すると私の評価されなかった元アラチャリ小説がずらりと並んだ。

私は悦に入った。これで、評価が来るはず……。

更新を押し続けていると、早速通知が来た!いつもの人だ!

「幻滅しました。首すげ替えはやめてください」

……。

私は茫然とした。あなたのために書いて、あなたのために元のカプに戻したのに。

私の中に、彼女に対する恨みが渦巻いた。彼女のページに飛ぼうと名前をクリックしたところ、

「このユーザーにブロックされているため表示出来ません」という、ポップアップが開いた。

終わった……。

私は今まで書いた小説を全部削除して、投稿サイトを退会した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る