それぞれの能力

 その後、一度謁見の間に全員集合してもらう事にした。


 司ちゃんを紹介しないといけないからな。とはいえ、この場合女の子って事で良いのかな?まぁ、本人が女だって言ってるんだから良いのか。


 そうそう。司ちゃんが何故スカートじゃなったのか。それは、アレが気になって動き辛かったからだそうな。


 スカートが捲れたらどうしよう。そう考えると、外に出たくなかったのだそうだ。


 しかし、元の世界に帰るには魔王が――って話だったから、仕方なくズボンをもらったと。


 何か可哀そう過ぎるな。


 とまぁ、とりあえず。そのままって訳にもいかないから服を用意してあげた訳だ。


 ゆったりとしたデニムのオーバーオールと大きめシャツ。


 これなら、体形を気にしなくて済むだろ。




「何度も行き来させてすまんな。皆に紹介しておく。新しくこの城に住むことになった司ちゃんだ」


 そう言って皆に司ちゃんの事を紹介する。


「あ、白鳥 司と言います。宜しくお願いします」


 司ちゃんがしっかりお辞儀をする。


 うんうん。ちゃんと挨拶が出来る子ってやっぱり良いよね。


「リルリーは……もう知ってるから良いか。こっちはマチルダ。それで、そっちの猫耳はサザンスターだ。で、その子がさおりちゃん。そしてアキラだ。まぁ、仲良くやってくれ」


「うふふ、宜しくね」「司ね、宜しく」「さおりちゃん……?つかさちゃん……?」


「お、俺っ、アキラって言います!宜しくお願いします!」


 そう言って頭を下げ右手を出しているアキラ。


 これって、「ちょっと待ったー!」とか言った方が良い奴?ん?伝わらない?そうか。忘れてくれ。


「アキラ、司ちゃんが困ってるだろ。普通に挨拶してやれ」


「そうだにゃ。それじゃまるで、告白タイムにゃ」


 お、なんだ。同類がここにも居たじゃ無いか。猫耳をピコピコ動かしてご機嫌じゃ無いか。サザンスター。


「あ、そうですよね。すみません」


 アキラは頭を上げ、ポリポリと頬をかいて誤魔化している。


 きっと、タイプなんだろうな。司ちゃんみたいな子が。だが、今は男だ。それはそれで新しい何かに目覚め――いや、止めよう。アキラの性癖がねじ曲がっても責任は取れん。

 

 


 さてと、部屋は後で案内するとしてだ。


 とりあえず司ちゃんが出来る事を知る必要があるか。


「司ちゃんは特別なスキルとか魔法とかあるのか?」


 ここは単刀直入に効いた方が早いだろう。


「特別な――ですか?良く分からないですけど物を仕舞ったり出したりは出来ます」


 司ちゃんは制服を出したり仕舞ったりして見せる。


「収納か。他は?」


 収納は多分勇者君パーティー全員持ってたな。アキラも使ってたしな。


 そう言えば、あの勇者君今頃何してんのかな。


 まぁ、何となく分かるけども。


 きっと宿屋とかで、魔法使いちゃんと合体ごっこ・・・・・とか電車ごっこ・・・・・とかしてるよな。


 うん。考えるの止めよう。


「他は……わかんないです。特に何も教えて貰って無いですし」


 うーん、勇者君パーティーとは違って何も教えずに放り出したの?


 ますます意味分からんな。


 ……いや、逆か。何も出来ないからさっさと放り出した、の方が正しいのかも知れないな。


 それか、司ちゃん本人も気付かない様な何か魔法が掛けられていて、天然スパイとして使っているのか。


 だがそれなら、この中の誰かが魔力の動きに気付くか。


 はぁ……。分からん。


 というか、考えるだけ無駄か。


 敵が来るなら来れば良いしな。


「そうか。じゃあ、司ちゃんの能力については追々調べるとして――」


 そして、ここにいるメンバーの能力についてある程度共有する事になった。


 リルリー、マチルダ、サザンスターに関してはほぼ何でも出来るというざっくりした説明で、重要なのは他のメンバーの事だ。


 まずアキラ。


 アキラは大盾使いという事もあって、耐久力と前線での破壊力は中々のものだ。あくまで一般的には。


 装備さえ揃えてやれば、この世界の魔物には早々にやられはしないだろう。


 とはいえ、魔法が全くと言っていいほど使えないので、せめて回復魔法位は習得させようという事になった。

 マチルダにでも教えさせるとしよう。ついでに実践訓練とかもして、アキラ自身の戦闘力も上げるか。


 まぁ……死にはしないだろうさ。


 さおりちゃんは、所謂中級クラスの回復魔法が使える。多分、ここで鍛えれば上級は直ぐに習得できるだろう。まぁ、かなりのスパルタだけども。リルリーが良いか。

 他の魔法も使える様になってくれれば、いざという時に役立つはずだ。


 きっと大変だと思うけど、大丈夫痛くないから、直ぐに良くなるよ。


 司ちゃんは……料理が得意って事が判明した。いや、それ以外全くの村人仕様。


 というか、司ちゃんに関しては、本当に一般人と同じ能力というか。


 唯一の特殊能力は「収納」だ。


 まぁ、それだけでもこの世界の住人からしたら羨ましい能力ではあるのだけど。


 少しずつ魔法を教えてみて、それから考えようか。


 と、そんな感じで今後については、修行させる事になった。


 



 関係無いけど、そろそろアキラも本城に移した方が良いのかも知れないな。


 いつ侵入者が現れるか分からないからな。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る