迷宮城で朝食を
「いや……スゲエ広いっすけど……、この城にメイドさん的な人って居ましたっけ」
大盾君の質問は尤もだと思う。
誰がどう考えたって、これだけ広い施設を誰も雇いもせずに運営している事は考え辛いよな。
しかしだな、
「あぁ、実はこの城に来てから日も浅くてな、まだ誰も雇って無いんだよ」
嘘だけど。
「なるほど……。そうしたら俺、街まで行って誰か見繕って来ましょうか?」
いやいや、まるで人攫いみたいだな。君ぃ。しかし……まぁ、それもアリなのか?
予想でしかないけど、何だかどうでも良い奴らが増える気がするしなぁ。
そういや、「子供ってのはな、飯さえ腹いっぱいに食わせて置けば悪さはしねえもんだ」って、ばあちゃんが良く言ってたっけな。
飯ぐらいはどうにかするか。
そうなると、大盾君は子供か?いやいや、どちらかと言えば……ペット?
……要らんな。
「ふむ。まぁ、その内に頼むかもしれないが……。その時は頼むよ」
「うっす!任せて下さい!」
大盾君は頼られた事が嬉しかったのか、自分の胸をドンと叩き胸を張っている。
いや、そんなに期待とかしてないから。
つーか、むしろ大盾君に任せたら心配しかない。
「とりあえず適当に座ってろ」
「え、まさか魔王様が作ってくれるんすか?」
なんか、段々と部活の後輩みたいなノリになって来たな。大盾君。
「ああ、今日だけはな。分かったら大人しく待ってろ」
俺は大盾君を適当に座らせて、一人厨房に向かった。着いて来られると面倒だからな。
ダミーの厨房とはいえ、一応、無駄に設備は整っている。
だが、実際には作らないよ?だって、材料ないしね。
「うーん、とりあえず肉でも焼いておけば怪しまれないか……って面倒だな」
結局のところ、どうして俺が作らなくてはならんのだ。って結論に居たり――。
暫くして、食堂の方が少しだけ賑やかになっていた。
どうやら、全員揃った様だ。
「さて、手伝いが必要だな」
そう、一人で運ぶ量ではなかった。まぁ、サザンスターに運ぶのを手伝ってもらえばいいか。
俺は食堂に顔を出した。
お、ちゃんと
何だかんだで、上手く打ち解けてくれた様でお兄さんは安心したよ。
だが見事に、大盾君とは別の
「いや、流石にそれは可哀そうな……」
女子の中に男子が一人だと、本来ならこうなるよな。うん。
少しだけ、ほんの少しだけ大盾君に同情するよ。
「めんどっ」
仮に、二人が初対面だったらこうはならなかったとは思うが、まぁ少なからず自分の欲を見せてしまったのだから、色々と警戒もされるだろうし距離があるのは当然のことではあるが……。
はぁ、果てしなく面倒な匂いしかしないぞ、これは……。
「サザンスター、悪いんだが運ぶの手伝ってくれや」
そんな気まずい雰囲気を眺めてる暇はないからな。とりあえず飯だ飯。
「りょーかいニャンっ」
サザンスターが席から立ち上がり、俺の方へと駆け寄って来る。
栗色のショートカットから覗く猫耳をピコピコと動かして、尻尾を左右に振っている。
150cmと小柄な彼女は、何でか事あるごとに俺に絡みついてくる。物理的に。
まぁ、猫だしな。
デニムっぽいショートパンツから延びる脚が、何とも眩しいのは心に留めておこう。
七分袖の白いブラウスの上に、薄いグレーの袖なしベストを着ている。
胸の膨らみから、その大きさを想像してしまうのは仕方無いだろう。だって、男の子だもん。
「あ、私も手伝います!」
そう言って僧侶ちゃんもこっちへと向かってくる。
フリフリとした白いワンピースだ。うん、良いね!って、何の話だっけ。
俺は二人を連れて厨房へと入る。二人は料理の数に驚いていた。
そう、本日のテーマは……「ホテルビュッフェ」をイメージしてみた。
台車を使い、手分けして食堂の中央にある大きいテーブルに運ぶ事に。
テーブルに皆を集めて、とりあえず座らせた。
左からリルリー、アマンダ、サザンスター、僧侶ちゃんの順番に座り、そして向かいに大盾君と……俺。
いや、まぁ良いんだけどね。
「それじゃ、とりあえず色々用意したから適当に食べてくれ」
俺がそう言うと、空気を読んだのかリルリーが近くにあった唐揚げを自分の皿に取り分けた。
それを見た面々は、それぞれ食べたいものを取り分けていった。
「おい、大盾君も好きなものを食うと良い。毒なんかは入ってないから、安心しろ」
動こうとしない大盾君にそう促す。
すると、大盾君は……涙を流していた。
その光景を見た女性陣は何事かと大盾君の様子を注視している。まぁ、誰も声を掛けないんだけどな。
「どうした、腹でも痛いか」
もっと気の利いた事を言えれば良かったのだろうが、なにぶん咄嗟だったからそんな言葉しか出て来なかった。
「い、いえ……。その、こんな飯が食えるとは……思っていなかったのでっ」
大盾君は、腕で流れる涙を必死に拭っていた。
「あ、あれ?可笑しいな、何でこんなに涙が……」
自分でもどうして泣いているのか理解が出来ていなかった様だが、俺には何となく分かった。
というか、正直自分の目の届く範囲の事以外には興味が無かった訳だが、この城の外の生活を想像すれば、自ずと答えが出て来た。
「俺にはお前がどんな生活をしてきたかは分からないが、今は安心して好きなだけ食うと良い」
我ながら
「すみません、有難う御座いますっ……。あ、あと……」
大盾君が俺の方を向いて、
「そろそろ、大盾君ての止めてもらいたいっす」
た、確かに!
それを聞いた女性陣も、うんうんと頷きながら笑っていた。
少しだけ場の雰囲気が和んだ様な気がした。
「あ、ああ。そうだな。大盾……いや、名前を聞いてなかったな」
気を抜くと大盾君って呼んでしまうよね。俺、悪くないよね?
「はい、俺、【
え、名前カッコいいな!
「そ、そうか。
「こっちに来てから?多分1年も経ってないと思うんで……多分まだ15歳っすね」
その言葉に全員の動きが止まった。
え、年下?!と。
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