02.

 戦々恐々として、自分の料理に固執していた参加者の方々。


 ひとり、またひとりと、トーストを少しだけ食べる。


 そして、びっくりした顔と、美味しそうな顔。


 あっという間に、場が和んだ。


 彼女。おくさまがたに囲まれて、トーストの美味しさと、さっきのこそこそ話や笑いの謝罪の嵐に巻き込まれている。


 これが欲しかった。このために、わざわざ、彼女をここに呼んだ。


 新婚の方向け料理教室は、その性質上おくさまがたの上下関係や派閥争いが起きやすく、紛糾しやすかった。


 彼女のトーストは、やはり世界を変える。飛び入りで、彼女に参加してもらってよかった。トースターも、家で彼女がいつも使っているものをここに持ってきた。彼女が最強のトースターを作成するために。


 美味しい料理は、全てを解決してしまう。


「みなさん。そろそろ料理のほうにお戻りください」


 これで、この料理教室は安泰だ。


 彼女。得意そうな顔。


「ありがとう。トースター以外の料理にも興味はありますか?」


「あります。ほんの少しだけ習っていこうかな?」


 彼女。家ではトースターしか焼かない。


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