この小説に隠れている隠れミッキーが見つけられるかな!?

ちびまるフォイ

押しかけミッキー

「ハハッ♪ ハハッ♪」


楽しそうな声とは裏腹に切羽詰まったようにドアが叩かれる。

ドアをわずかに開けるとその隙間に真っ黒い目が飛び込んできた。


「やあ、ぼくは隠れミッキー! ぼくを匿ってくれないか!?」


「か、かくまう!?」


「早くしないと奴らが来てしまうんだ♪ ハハッ♪」


勢いに押されて隠れミッキーを部屋に入れた。

すぐに鍵を閉めると隠れミッキーは窓の外を見ていた。


「いったい何から追われているんですか?」


「それは知らないほうがいい。君もぼくのように一生隠れて過ごしたくはないだろう? ハハッ♪」


外では黒服の男たちがなにやら無線でやり取りしている。

その手にはピストルらしきものすら握られている。

匿ったのはよくなかったんじゃないかと後悔。


「とにかく助かったよ。ありがとう。

 お礼はチュロス何本分かな? ハハッ♪」


「チュロスはいらないですけど……」


「ほんとうに? 美味しいのになぁ、ハハッ♪」


「それより、こんな場所に隠れていても長く持ちませんよ。

 そのでかい体じゃここに入ってきたのもバレているでしょうし」


「ハハッ♪」

「あらゆる感情表現をその一言でカバーできるんですね」


隠れミッキーは沈んだ顔でハハッ♪と言った。


「あいつらに見つかってしまえばぼくはまた連れ戻されてしまう。

 どこに隠れていても、なにをしていても探し出されてしまう

 プライベートゼロのあの悪しきランドへ……ハハッ♪」


「隠れミッキーって大変なんですね」


「君、ぼくをミッキー工場へ連れて行ってくれないか!? ハハッ♪」


「ミッキー工場!?」


「あそこにたどり着ければこの状況を変えられるかもしれないんだ。ハハッ♪」


隠れミッキーは車のトランクに隠れた。

事前に受けた隠れミッキーの指示でミッキー工場へと向かう。


「ここがミッキー工場か……!」


工場のおっさんは石垣に隠れている隠れミッキーを見つけると驚いていた。


「隠れミッキー!? どうしてここへ!?」


「ハハッ♪ もうぼくはランドで隠れるのをやめてきたんだよ」


「お前さん、そんなことしてただですむわけないだろう?」


「そう。だからおじさんのところへ戻ってきたんだよ。ハハッ♪」


その言葉でなにかを察したのはおっさんは急に慌て始めた。


「だ、ダメだ! そんなことできるわけないだろう!?」


「ハハッ♪ ランドに囚われている他のミッキーたちを救うためだよ!」


「しかし……」

「ハハッ!」



「……わかった。手を打とう。今回だけだぞ」


「ハハッ♪」


しばらくすると多数のミッキーが用意された。

どれも妙に瞳孔が大きかったり、目が見開かれていたりしている。


「隠れミッキー、これって……偽物じゃないか?」


「ハハッ♪ そうだよ。これはミッキーじゃないよ。

 ネッキーにムッキーさ」


「これが一体何の役に……」


「ぼくを逃がすためのおとりだよ。

 海外に散っているネッキーやムッキーはすべて

 隠れミッキーを逃がすための陽動のためのものなんだ」


「そうだったのか……! どおりでテレビでめっちゃ見る気がしてた……!」


「ああして隠れミッキーから注意をそらすために

 大きく宣伝してもらっているんだよ。ハハッ♪」


隠れミッキーはネッキーとムッキーの集団に言い放った。


「さあ、行くんだ! ぼくのしもべたち!!」


ネッキーやムッキーが野に放たれるかと思ったとき

工場の扉が爆破されて特殊部隊がなだれ込んできた。


ネッキーやムッキーはあっさり倒されてしまった。


「隠れミッキー! 隠れられるのもそれまでだ!!」


「ハハッ!?」


「隠れられるとでも思っていたのか?

 お前がどこに隠れていようとも我々は必ず見つけてやる!」


「ハハッ……もうどこにも隠れられないってわけだね……」


「お前の生活圏はランドにしか無い。

 一生をランドで終えるのがお前の運命なんだよ!」


隠れミッキーは観念したように普段のハイテンションとは真逆の、

肩を落として探しに来た男たちのほうへと歩いていった。


「隠れミッキー!!」


「ハハッ♪ 君には迷惑をかけたね。ここまで協力してくれてありがとう……」


「隠れミッキー、お前言ってたじゃないか!

 外に出たらランドにはない立ち食いそばを食べてみたいって!!

 このまま戻っていいのかよ!!」


「ぼくは一生カゴのなかのネズミなんだよ……ハハッ。

 彼らに逆らってももう逃げることなどできないさ……」


「隠れミッキー……! それでお前はいいのか!?」


「また隠れては見つけられるだけの日常に戻るだけさ。ハハッ♪」


隠れミッキーの目から一筋の涙がこぼれた。

涙のしずくが床に落ちたとき、窓から黒い閃光がとびこんできた。


「ぎゃ!」「うわ!」「ぐえ!」


黒い閃光は瞬時に隠れミッキーをとらえていた男たちを倒してしまった。

足を止めたとき、その姿をやっと拝むことができた。


「あなたは……ミッキー……!?」


黒い閃光の正体は葉っぱをくわえたワイルドなミッキーだった。

体はおせじにもきれいとは言えず、ところどころにほつれがある。


「俺の名前は"はぐれミッキー"。

 自由をもとめる仲間を解放するため活動しているレジスタンスさ。ハハッ」


「ぼくは……もう隠れなくていいのかい!? ハハッ♪」


「ああ。だが、大変なのはこっからだぜ。せいぜい頑張んな……ハハッ」


こうして隠れミッキーは晴れて隠れることを辞め、あぶれミッキーとして第二の人生を歩み始めたのだった……!!



そんなことより東京ディズニーランドに新スポットできるそうですよ。

楽しみですね。

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