第18話
気分転換のデートを終え、私は東新宿発電所に向かった。
カードキーで通過し、女子更衣室に入る。
あ、美園先輩だ。
ゆったりとベンチでコカコーラを飲んでいる。コーラを飲むなんて意外だ。見た目は金髪ギャルだが、中身は結構オトナの女性だ。何より何も分からない私に親切にしてくれる。
「美園さん、こんばんは」
「あら、ヒカリちゃん。いつも一緒ね」
「時間割の関係ですね」
「まぁ……」
ワタル君は童貞をちゃんと卒業し、元の彼女とセフレの関係になってから、罪悪感からこの仕事を選んでいるらしい。美園さんも、ここの前に、誰か恋人のようなものとセックスしたのかなと考える。
「美園先輩。美園さんはここに来る前、セックスとかしたことあるんですか?」
「うん。懐かしいな、あれは高校生の時だ………」
うわー。やっぱり美園さんもモテモテだったのか。今のトレンドである清楚系ではないものの、お付き合いの一つや二つ、軽くこなしていたのか。人間力の違いとはこのことなのか……。
というか、この発電所にいるせいで、セックスという言葉が口からすらすら出てくるようになってしまった。セックスは未だにしたことがないのに。というか、触れられることすらまだ結構拒絶してしまうのに。言動に行動を置いてけぼりにされている。辛い。
「え、私がセックスを知る前から知っているじゃないですか」
「あははは、ヒカリちゃんは知るのが遅すぎだよぉ、セックスのない人生は虚しいねぇ」
セックス出来ない大多数を今、敵に回しましたね。美園先輩。
「恋ですよね。やっぱり」
「当たり前じゃない。でも、セックスをしたのは違う理由かも」
「どうしてです?」
「やっぱり、生きるため、じゃないのかな。家出している時だったし、電力がまかなえる良い時代じゃない。好きだし、やっぱりずっと一緒にいたいし、やる他ないのねって感じ」
「なるほどです」
「どうしてそんな質問をするの?」
「いや、単純に気になって………」
「ごまかさないで」
美園先輩はロッカーにもたれかかる私に向かって、片手をつき、顔をものすごく近くに寄せてきた。いわゆる壁ドンというやつ。あの、すごい、近いんですけど。ええ、離れてください。
「あなたは、まだ処女を捨てることに恐怖感を覚えている、違う?」
美園先輩の言っていることは確かにあたっていた。
「男は普通、セックスが出来ない、最大の愛情表現が出来ない彼女を軽視するわ」
美園先輩はさらに顔を近づける。真正面を向いていたら、今にも唇が重なりそうなぐらい。なので横を向く。そして耳元で、美園さんはささやく。
「覚悟を決めたほうがいいって、そろそろ」
ささやいた口はさらに開き、舌が耳のうずまきを襲う。耳と背筋に寒気が走る。舌って温かいな。本当にぞわっとする。
美園先輩はしばらく私の耳を舐め、そして、
「大丈夫、サービス業だと思ってやってみな」
そこから美園先輩は唇を奪った。
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