第14話

 美園先輩と、先ほど私がオナニーをしようと訓練していたルームに入る。そこでいろいろ性的な奥義を伝えるんだと、美園先輩は張り切っていた。


「攻めか受けかってあまり百合だと決めないけど、とりあえず攻めで」


「受けをやったら、私はこの前拒絶してしまいましたもんね」


「そ」


 美園先輩はまず、お互いに裸になろうと指示した。美園先輩がシャワーで体を清めた後、私はオナニーのレクチャーを始めた。


「オナニーをいきなりしても上手くいかないわ、そりゃ」


「それは聞きました」


「処女っしょ、ヒカリちゃん」


「まぁ……あんま深堀りしないで恥ずかしい」


「とりあえず、はじめては男に捧げたいでしょ」


「そうですね……子どもを産む行為としか捉えていませんでした」


「それは………お嬢様だな」


 ベッドの中に美園先輩が入る。出るところは出て、締まるとこ締まっている、いい体だ。こっちこっち、と誘うので、私もベッドの中に入る。裸はお互い布団で温まっている。レクチャーはまた後で、とりあえず今は、


「仲良くなろ。まず、セフレはフレンドが出来ないとマジ無理」


「フレンドいない……」


「なら、フレンドになろっ」


 美園先輩はそれから私を質問攻めした。他にバイトやっているの? 食べ物は何が好き? 趣味とかある? あーその漫画面白いよね。オチがヤバヤバのヤバ。てか、ヒカリちゃん、漫画とかかいたら絶対楽しいっしょ。最初は緊張したけど、慣れてきて、私も質問し始める。


「美園先輩ってどうしてこのバイトを始めたんですか」


「うーん、そだね、主に金稼ぎ? あ、でも違うなセックス好きだから。それを肯定してくれるこの場に居たいってのがある。ここでは誰と何をやっても誰にも咎められない。ウチは自由が欲しいんねん」


「もしかして、意外と抑圧されるの? 先輩」


「抑圧されてるって~、アパレルとかで求められる女らしさっていうの、自分で売っててなんなんだけど、超意味わからんから。しかも最近、ギャルとかっていうギャップが認められなくて」


「あ、今売れ行き悪いの?」


「いや……そうです。悪いの! 清純派ばかりが注目されてさ、更にせまっ苦しい世界になっちゃったよ。AV女優もアイドルも、普通に清純派ばっかじゃん」

「美園先輩みたいな人、逆に今レアですよ」


「そう! だからよく誘われるの、ルームに」


「へー」


「それで言うと、ここもサービス業みたいなものだから、全部が全部、自分の快楽のためだけにやっているわけじゃないのさ」


「このおしゃべりもこみで、人を楽しませたいの?」


「そう。ヒカリちゃん、だんだんタメ口になってるけど。これも仲良くなるため、肌で愛を感じてもらえる、喜んで相手がセックスを楽しんでもらうためのコツ」


「サービス業ってこと?」


「そ。今はヒカリちゃんがすっきりするような営業をしているわーけー。じゃあ、そうだな、自分から私にぎゅーと抱きしめてくれる?」


「はい、やってみます」


 美園先輩をぎゅっと抱きしめる。どうやら自分からする分には、自分の中で準備する分には、嫌悪感はそこまで抱かないらしい。私も、美園先輩に営業したい。学ばなければ。乳首をぺろぺろ舐め始める。


「お、いいじゃーん、でも吸うように舐めてほしいな~どうせやるなら」


「こうですか?」


「正解、さすがは優等生、次も期待してる」


 驚きだったが、自分からなら大丈夫なようだ。首筋。耳。いろいろ舐めた。女性の恥部を眺めたときは壮観だったが、普通に何も気にせずに、べろべろ舐めることが出来た。


「ああ、ちょっとそれは、歯が、歯が」


「すいません!」


「でも、別にそこだけがサービスじゃなくて、おしゃべりしたり、肌のぬくもりを感じることが、大事なんだよ」


「分かりました!」


 美園先輩は無事に絶頂を迎えているようだった。私もすごく安心した。最近初めて成功体験。他人を手伝うことなら出来る。ミクリ所長は、絶頂出来ない人は採用しないと言っているわけではない。ここで役立たない人は要らないと言っている。居場所があった。私は、思いっきり、人の体を攻めることが、ここでの仕事かもしれない。


「お風呂、前戯、本番、ピロートーク、アフターケア、まず基本はここが出来ないと、相手を満足させることが発電に繋がるのだから。奥が深いだろ? 少なくとも、服売るよりは」


 ミクリ所長に報告する。攻め担当として、人のオナニーとセックスを補助する仕事を担当させていただきたいです。いずれかはしっかりと、セックスが出来るように慣れていくのでよろしくお願いします、と。


「男性でも同じことが出来たらおっけー。案外そういう需要はあるかも。いいとこついたね」


「ありがとうございます!」


「ただし、セックスできるようになるまでは、給料は4分の3ね。ごめん、ここは僕なりの規定。セックスのプロとして働くからには、それぐらい覚悟してほしい」


「大丈夫です。それはこれからおいおい慣れていきます」


「ま、ヒカリちゃんみたいな子でも、ちゃんといっぱしの稼ぎ役にさせるのも、研修の仕事なので、今回みたいに、美園に頼ったり、しなさいよ」


「わかりました」


「とりあえず、採用おめでとうございます!」


 克服すべき課題はあるけど、サービス業として、この仕事が出来る喜びを感じた。


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